予想外
それから暫くしてカイズ達も捕まった。
二人組の裏切りによって少女達を人質となってしまったためだ。
カイズ達は全員、縄で縛られひとまとめに集められた。
全員は悔しさと恐怖でいっぱいになっていた。
「よくやった。お前ら」
男達を掻き分けて一人の男が現れた。
筋肉質の体、それに見合う巨大な斧が特徴的な男だった。
「お前がこの盗賊団の」
「ああ、ここのリーダーのダートだ。へへ」
カイズの問いに男は答える。
ダートと名乗った男は捕まったカイズ達とその持ち物も見始めた。
「へ、今回も大量だな」
満足げに頷く。
「それに、なかなかの上玉もいるじゃあねえか」
ダートは少女を見てにやついた。
少女はその笑みに恐怖し、悲鳴をあげる事さえできなかった。
「おい、馬車にいたのはこれだけか」
ダートは彼らに与した二人組に聞いた。
二人組は自分達を含め、数えた。そして、足りない事に気づく。
「一人足りやせん」
「何」
「へい。一人」
「そいつは、誰だ」
「へ、めくらのガキです」
「めくらだぁ」
「へい」
「そいつは」
「へい、多分、馬車の中での垂れ死んでいると思います」
男は、横転している馬車を指差した。
「まあ、いい。おい、死んでいると思うから身ぐるみ剥いでこい」
ダートの指示に部下の三人が馬車にむかっていった。
それを見届けるとダートは捕らえた人達にむかっていった。
そして、少女に近づいた。
「へへ、なかなかじゃねえか。売る前に俺がいただいておくか」
「・・・い・・いや・・・」
「そう言うな。可愛がってやるからよ」
少女は恐怖で目に涙を溜めていた。
こんな所で終わるのか
少女は思った。
ダートはそれを見て余計にやついた。そして、少女の口に自分の口を近づけた。
後、数センチ。
少女は、もうダメだ、と思い、目をギュッと瞑った。
「ギャァァァーーーッ!」
「ガッ!」
突然、二人の男の叫び声が空気を破らん限りに響き渡った。
その場にいる者全員が叫び声のする方向を向いた。
そこには横転した馬車で血を流して死んでいる二人の男がいた。さらに後一人も糸が切れた人形のように地面に崩れ動かなくなった。
そして、横転した馬車の所で立っている顔が見えない程にフードを被り、杖を右手に持った少年がいるのであった。
予想外な光景にダートはおろか、そこにいる全員が唖然として見ていた。
『やれやれ。めくらには厳しいご時世だよな』
誰にも聞こえない声で愚痴りながら少年は馬車から出て、地面へと降り立った。