盗賊
「盗賊だぁーーーッ!!」
馬車の外から男の叫び声が響いた。
その叫びは馬車の中に直ぐ様届いた。
「盗賊だと!」
「まさか、そんな!」
「う、嘘でしょ!」
馬車の中はすぐに不安と恐怖が広がり始めた。
「静かにしろ!」
その時、馬車のドアが開いて一人の男性が現れた。
「俺はこの馬車の護衛を任された冒険者パーティーのカイズだ。いきなりで悪いがお前達は街に引き返してほしい」
「引き返してほしいって、どういうことだ!」
「襲ってきた盗賊が不味かった」
「どういうことですか」
「相手は盗賊団〝馬車狩り〟の一味だ」
カイズの言葉に馬車の中は静まった。
あの二人組の冒険者までもが顔が恐怖にひきつっていた。
馬車狩り。それは馬車の中で男達が話していた盗賊の名称だ。馬車を中心に襲う事から名がきている。この近辺で最も恐れられている盗賊だ。
「急いで、引き返してくれ。俺達も馬車を守りながらいく」
「カイズさん!もう来ています!」
メンバーと思われる一人がカイズに声を掛ける。
「くそ、いいか。絶対に出るんじゃないぞ」
カイズはそう言うとドアを閉めた。
それから数秒後。
馬車は急に向きを変え、速度を上げて走り出した。
馬車の中では人達が掴める所に掴まって何とか体勢を保っていた。
「あ!街が」
少女は窓を覗き、街が見えてきた事に歓喜した。
しかし、次の瞬間。馬車は止まった。そして、勢いが止まらず、横倒しになった。
「きゃぁぁぁーーーっ!!」
「うわぁぁぁぁーーっ!!」
馬車の中にいた人達は急いで馬車から出た。
しかし、その回りには男達がすでに取り囲んでいるのであった。
「そ、そんな」
少女は絶句した。
そして、辺りを見回した。すると男達の先でカイズ達が戦闘しているのが見えた。
カイズ達は善戦はしていたが盗賊団は数で少しずつであったが優勢になっていた。
馬車を取り囲んだ男達は少女を見ると嫌らしい目で上から下へと眺め始めた。
少女は背筋がゾッとした。
男達は少女達に近づく、しかし男達は途中で近づけなくなった。
「来ないで下さい!」
両手をつきだすようにして放った少女の炎の球で吹き飛ばされたからだ。
男達は少女を警戒するようにした。
私が今できる事。
少女は自分を叱咤するように言い聞かせ、集中する。そして、炎の球を男達に放っていく。
私は、ここで倒れるわけには、いかないのよ。
少女は、内心で声に出せない叫びを叫ぶ。
しかし、少女の必死の行動は長くは続かなかった。突然背後から少女は羽交い締めにされて地面に押し付けられたからだ。
少女が上を向けると一緒に馬車に乗っていた冒険者の二人組の一人が少女を押さえていた。そして、もう一人の方は商人の襲ってカイズ達に剣を向けて脅していた。
少女を押さえていた男は笑みを浮かべた。
「勝ち組に与すればいいんだよ!」
こうして攻防は裏切りによって盗賊達の勝利で幕を閉じた。