始まりの物語
「その時はいつか来る。その日に備えて待っていろ!」
ある男は死に際にそう言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ある日のこと、一人の少年はグリーンタウンという街にいた。
そこは武器・食材・衣服・宿・日用雑貨、様々な物が売っているごく普通の街である。
少年はいつものようにある店へ向かう。
それはほかの店と外見は同じ一般的な店であった。そこにいるのは60歳くらいの男である。
「おじちゃん!いつものある?」
「ああ、あるとも!またあの森に行くのかい?」
そう言いながら少年に渡したものは使い物にならない壊れたギーライトである。ギーライトとは刀や銃・斧・鎌、様々な武器に変化する兵士たちが持っている武器である。今の形態はソードである。
「いつものあれをやりに行くのかい?」
「うん!じゃあ行ってくるね!」
「ちょっとま…」
言いかけた所ですぐに行ってしまった。
「しまったな…まああの子の事だからいらん心配か。」
そう言って男は食べかけのパンを隣にいたバヌという四足歩行の犬のような動物に上げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少年はグリーンタウンの東にあるキザの森という所にいた。森の中を歩いて数分後、少年はある大木がある所に着いた。
「よし!いつものやるか!」と、言ったその瞬間。
少年は勢いよく大木のそばにあるバスケットボールくらいの大きさの岩にギーライトを叩きつけた。すると、大木が地面に吸い込まれるようにどんどん下に降りていき、その穴には幅1mくらいの階段があった。少年はその階段を下りていった。奥まで行くとそこには、木製の傷ついた人形がたくさん倒れていた。
少年はその人形を避けながら奥にある古い機械へ向かった。そこにはたくさんのスイッチがあり、少年はその緑色のスイッチを押した。すると今まで倒れていた人形が、いきなり立ち上がった。すると少年は人形の群れに飛び込んでいった。
ゾンビのように襲いかかってくる人形を交わしつつギーライトで叩きつける。ここは昔戦争のあった時代に出来た古い兵士育成基地であった。
ある程度倒したところで育成プログラムは終了し、人形達は倒れていく。少年は店にいた男の孫で10歳の時にここを教えてもらって以来毎日通い続けている。
「さてと、今日は早めに切り上げてこの森の奥へ行ってみるか。」
少年は階段を上りバスケットボールくらいの岩を叩きつけ、元の大木を戻した。
しばらく森を進んでいくと、何やら赤く光るものが見えた。
少年はその赤く光るものに近づいて行った。すると、そこには赤色の勾玉があり強い光を放っていた。
「なんだこれ?熱っ!!」
少年が落とした勾玉を再び掴もうとした瞬間、少年の視界に突然勾玉とは違う何かが写り込んできた。
ドスッ!と矢が少年の隣の木に刺さったのである。
矢が飛んできた方向を見るとそこには馬にまたがった4人の男たちがいた。
「そこの小僧…ここで何をしている。」
そう言いながら男たちはどんどん少年に近づいて行く。
少年と男たちの距離が20mくらいになった瞬間、少年は光る勾玉を持ち、ポケットにしまい込み、その場から勢いよく逃げ出した。「待て小僧!」男たちはすぐさま少年を追いかけた。
「何で盗賊がここに?」少年は走った。がむしゃらにひたすらに走った。しかし、男たちは馬に乗っているため少年に追い付くことなど容易い事である。
(このままじゃ…追い付かれ…)
少年の視界がいきなり真っ暗になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(…こ、ここはどこだ?さっきの森じゃない?)少年が目を覚ましたとき写ったのは薄汚れた建物の天井だった。
「あっ!目を覚ましたね!おはよ!」
少年に話しかけてきたのは、少年と同じくらいの16歳くらいで茶髪で青い瞳の少女だった。
「言葉が通じねぇのか?おーい!」
「うわっ!だ、誰だお前!?なに者だ!?何で俺こんな所に居るんだ!?あれっ?おじちゃんに貰ったギーライトもねぇぞ!?」
「喋りすぎだぞ!落ち着けって!!」
そう言って少女は少年の背中を叩いた。
「私はクィアルよろしく!で、ここは牢獄の中!私たちは捕まったの!盗賊に!」
「俺はエンゴウ、よろ…」ガタン!
この建物の出入り口とされる扉が開かれた。
そこからは紫色のスーツを着た金髪の30歳くらいの男とそのボディーガードと思われる男たちが、盗賊と共に現れた。
「おい!今日の品はどうなっている?」
スーツを着た男は言った。
「男奴隷6人と、女奴隷4人が入りました、ガヌル様。」
盗賊は言った。
すると、ガヌルと呼ばれる男はボディーガードと共にこちらの牢にやってきた。
「おい!この娘はどうだ?」
「調査によりますと家事は、どの者たちに比べてもずば抜けています。」
「ふっ!ならこの娘を貰おうか、」
ガヌルがそう言うと、盗賊は鍵を使いこちらの牢を開けた。
クィアルが捕まれ、牢から出されて行く。
「やめて!放して!やめ…」
ジャカ!盗賊がいきなり銃をクィアルに向けた。ズガン!盗賊は撃った。何の迷いもなく無感情で無表情で、彼女を殺した。
「おまえらぁぁ!」
俺はいきなりの光景に冷静に考えることが出来ず、いつの間にか盗賊を殴り飛ばしていた。
かなり勢いよく殴ったのか、盗賊は4〜5メートルくらい飛んだ。
「てめぇ!」
もう一人の盗賊が銃を向けてきた。
殺される、死んじゃう、俺の人生こんなんで終わるのか、嫌だ、…ズガン!
エンゴウの意識が遠のいていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グリーンタウンのとある店、そこには60歳の男がいた。
「エンゴウはまだ帰ってきてないのか、遅いな…盗賊が最近森に佇んでいると聞いていたが…ちょっと探しに行ってくるか。バヌ、ちょっとあいつを呼んできてくれないか、」
バヌは犬に武装などを取り付けたみたいな動物だ。軍の犬であり嗅覚や聴力、視力も優れている。バヌは男にそう言われると、すぐさまかけていった。
「わしも準備をしとくか、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うっ…」
エンゴウはめを開いた。そこは先程見た建物の天井だった。
(あれ!?なぜ生きている?確か銃で打たれて死んだはずじゃ…)
ズキッ!首に針で刺されたような痛みが走った。「なんだこれは、」
エンゴウの首に刺さっていたのは、透明のカプセル状の物に針が付いてるような物だった。
「これは見たことあるぞ、確かじっちゃんが鹿狩るときに使ってたな…麻酔薬がカプセルに入ってるんじゃなかったっけ、眠らされていたのか、」
エンゴウにいる牢には何か足りない気がした、
(クィアルは!?そういえば捕まったんだっけ、助けなきゃ、)
幸いにもエンゴウの手首には手錠や足枷などがなく、動きやすい状態であった。
(どうやってここから出ようか、)
建物の中には3人の盗賊がいた。そのとき、盗賊のトランシーバーが建物内に鳴り響いた。
ビーッビーッ!
「どうした?」
[し、侵入者です、2人の男が今こ…グアッ!]
「どうした?何があった?」
[ザー…]
トランシーバーからは砂嵐の音がする。
「そこの2人!おまえら応援に急げ!」
「「はっ!」」
「くそっ!どうなっているん…だー…」
ズサッ!
そんなような音をたてて盗賊は倒れた。
そこにいたのは、見覚えのある顔だった。
「久しぶりだな、元気そうじゃねぇか!ハハッ!」
そいつはいつもエンゴウと遊んでいるホォブという奴だった。
「うるさい!早く出せ!」「鍵持ってねぇから無理な話だ!これやるから自分で出ろ。」
そう言って、ホォブは去って行った。
エンゴウはホォブが投げた物を見た。そこには1本の刀があった、おそらくじっちゃんが持っている刀だと思われるそれは、鞘に入っていない日本刀だった。
エンゴウはその日本刀を持った。初めて持つそれは思っていたよりも重たかった。
「これでどうしろってんだ!」
外からは盗賊の声や叫び声が聞こえてくる。エンゴウのいる部屋は鉄格子の牢になっていて、鍵がなければ出ることさえ難しそうな物だった。
後ろはレンガでできた壁があり出るとしたらここくらいしか無かった。
「レンガを削って出ろってか?ふざけんなよ!一刻も早く出たいんだよ!」
刀をレンガの壁に投げつけた。するとその刀はきれいに壁に突き刺さった。
「はっ?どんな冗談だよ!こんなに簡単に脱獄成功していいのかよ!甘すぎるぞここ!」
そう言ってエンゴウは刀でレンガの壁を削りだした。やっと1つレンガを壊すことに成功した。そこから外を見ると、倒れている盗賊が4人ほどいた。
「今のうちだな、」
エンゴウは削りだした。ひたすら、クィアルのことを思いながら、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「おい!まずいんじゃないのか?このままだとやられるぜ、」
ホォブはナイフを使って盗賊を倒していく、じっちゃんはハンマーを使い盗賊をなぎ倒していく、「ホォブ!ここは一旦退くぞ!」
「じっちゃん!さきに行っててくれ、後で追いつく、」
「絶対に戻ってくるんじゃぞ!」
「それ死亡フラグたってんじゃん!絶対生きて帰るから待ってろ!」
ホォブはそう言ってじっちゃんの前から消えた。じっちゃんは一旦退くことにした。
エンゴウが居るであろう建物にも行かずにバヌと一緒に、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガギン!
エンゴウは刀で壁を削る手を止めた。
「ダメだ最初は削りやすかったけどやっぱりダメか。そうだよな、こんなんで脱出できたら相当な強運の持ち主だよな、」
(そういえば、さっきよりは大分静かになったな。外はどうなっているんだ?)
すると、建物の扉がいきなり開かれた。
「さっさと入れ!このクソガキが!」
ダン!そこから出てきたのはホォブだった。
「いってぇなぁ!」
「黙れ!牢に入ってろ!」ガタン!ガチャッ!
「静かにしてるんだな!」
バン!
盗賊はホォブを牢に入れるとさっさと出て行った。
「いやぁ!捕まっちゃったわ!すまん!」
「ホォブ!助けに来たんじゃなかったの?なに捕まってんだよ!」
「あんなん使われたら逃げられないって!どうすることも出来ないって!ハハッ!」
「ハハッ!じゃねぇよ!ふざけんなよ!じっちゃんは?」
「先に逃げたよ!」
「なに逃げてんだよ!二人とも助けに来たんじゃねぇのかよ!」
ガチャッ!ギィ、
いきなりホォブの居る牢が開いた。
「大丈夫だよ!待ってろって!」
するとホォブは口の中から鍵を出した。出す様が異様だが助けてくれたからにはあえて言わないでおこう。
ガチャッ!ギィ!
「どうやってその鍵手に入れたんだよ!」
「変な奴の腰に付いてたから奪い取った。ハハッ!」
「とにかく!さっさと出るぞ!行きたいところがあるんだ。」
「良いぜ、ついて行くぜ、感謝しろよ!ハハッ!」
二人は盗賊に見つからずにある場所へ向かった。「そこにはなにがあんだよ!エンゴウ!」
エンゴウはホォブの声が届かないくらい心配をしていた。それはクィアルの事である。
(早く助けたい。あの時みたいにもう失いたくないんだ。だから!)
エンゴウは盗賊を拷問して聞き出したクィアルの居るであろう屋敷へ向かった。