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蒼空の連合艦隊  作者: 909
第二次世界大戦~第一幕 対ソ戦~
51/64

第四七話「急げ三菱よ、戦車を作れ!!」

四式中戦車「チト」の開発にスポットを当てます。

-戦線で日本陸軍主力、「三式中戦車」隊の苦戦が報じられることも特に珍しい事では無くなった1944年。状況打破のため、陸軍新兵器の開発は急がれた。ソ連戦車が予想を超えて強力であったので、実用化に成功した五式砲戦車で場を凌ぐ一方で、新中戦車の開発を急いだ。1944年当時の日本の技術力は戦前より飛躍的なインフラの発達で欧米列強に負けない戦車を開発・運用できる余地は出来上がりつつあったが、ソ連戦車の重装甲に対抗できる90ミリ砲の開発は成功したが、その他の各種関連技術の熟成が遅れていた。`旧史`では「取り敢えず作れるから何が何でも数を揃える」という方針で兵器を作ったら「カタログスペックが出ない」品質のものが大量に出回ったというお涙頂戴としかいいようのない状況を生んだ。それを避けるべく、新史では品質管理の概念を下々まで根付かせて、兵器を造らせていた。


-三菱重工業 


九七式以来、何代かに渡り独占的に帝国陸軍主力戦車を輩出した三菱重工業であるが、戦時量産型の域をでない三式から戦後第一世代MBTへの飛躍は苦労の要る作業であった。溶接の熟成による車体強度の強化は叶ったが、1944年当時、戦車用に多用されていたディーゼルエンジンでは最強のものでも一式三型・三式に採用された統制型百式発動機二型(260馬力。史実のモノにマイナーチェンジを行なって多少の性能向上を実現させた)であり、要求仕様の「重装甲と機動性を両立させられる」の項目を実現させるには程遠い。アメリカが完成・配備を開始した「M4 シャーマン」の性能は砲の性能こそ若干(三式中戦車の砲は改良を重ねたため、一応ソ連戦車にも一定の打撃を与えられる)三式が勝るが、その他の諸元においては完全に負けている。無論、カタログスペックが全てを決するわけではないが、心理的に余裕が無いのは間違いなかった。


「エンジンはどうすんだよ」

「液冷しかないだろう。寒冷地に耐えるように改良して……」

「空冷のほうがいいと思うが……」

「ん!?」

「部品が凍る可能性があるんだぜ?」

「馬鹿野郎、今の帝国のモーターリゼーションで大馬力の空冷ディーゼル機関が作れるのか?それに部品が凍る可能性は共通だろうが」

「う……」

「陸軍の原乙未生中将もその点をよくわかっておられる。寒冷地・南方の暑さに耐え、なおかつ大馬力を安定して出せるエンジンを選定しなくては到底、要求仕様の達成は覚束ないのだ」


三菱重工業の技術者達はこうした火の出るようなやり取りを連日にわたり、繰り返した。そして白羽の矢が立ったのが、川崎が本来航空機用に開発した「ハ40」であった。努力とドイツの数年に渡る工業技術援助で液冷エンジンの整備体制に一定の目処をつけた日本はエンジンの生産ラインの一部を戦車用に転用し、「戦車用にデチューンと構造強化を行なった上で試製四式中戦車用に登載してみる」という判断が下された。1944年の2月初旬の事である。インフラの充実は京浜工業地帯の整備を急いでいるもの、まだ先のこと。陸戦兵器の整備は対ソ戦で予算配分が三軍それぞれ均等になったので順調に行われてはいるが、計画開始から数年がたっても肝心要の次期主力戦車が完成しないという有様。砲戦車が火消し役を担っているが、砲戦車は本来中戦車の支援・重戦車の駆逐を目的に造られているので、正面切っての戦車戦は全体的に中戦車が担う事に変わりは無い。新中戦車の開発は急務であり、欧米列強に比肩しうる機甲部隊の保有は帝国陸軍の悲願でもある。三菱重工業は焦っていた。完全国産は実現できるのか。国内でのトーションバーの研究も行われているが、まだ試作品の域をでない。一刻も早い実用化を焦る陸軍上層部は「トーションバーを実用化している国から実物を輸入させてライセンス生産させる」とまで言い切る。その外交準備を始めた国から三菱重工業にトーションバーの開発期限を申し付けられる。それまでに実用化させなければ三菱重工業の悲願である「すべての技術が完全な国産のMTB」は泡となって消えることになる。それだけ軍が焦るのも、現有主力の三式が戦線で苦戦している事の表れでもあった。



「何としても四式を完成させよ!!これは`前世`(F情報は開戦時に軍需産業の各事業部長レベルまでにそれぞれ通達され、二年後の1944年の段階では暗黙の了解として周知され、一般社員にも通達された)で成し遂げられなかった我らの悲願なのだ!!」


三菱重工業の総指揮者であり、三菱財閥の四代総帥「岩崎小弥太」自ら戦車開発の現場に乗り込んで、技術者に訓示するという、気合の入れようで三菱は戦車開発を急ぐ。期限までに技術を成熟させられるのか。





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