第一八話「ソ連軍対新生日本軍」
ソ連対日・英・独・フィンランド連合軍です。
-対ソ戦は開始された。日本・ドイツ・イギリスの3国は極秘事項であった同盟関係を公表。ソ連に対しての宣戦布告を行い、フィンランド防衛を行なっていた。
-銃撃と砲撃が入り混じる。航空支援の爆撃の爆音も響く。この頃になるとT-34も配備され始めたもの、史実より開戦が遅かったせいもあってか、生産はソ連にしては進んでおらず、まだ旧式化した前世代の戦車が主力を担っていた。それに対し、日本の機甲部隊はノモンハン事件の教訓と前史の大東亜戦の戦訓を元に作り出された、T-34に引けを取らない性能を備えた当時最新鋭の戦車群。特にこの時期の最新兵器「三式中戦車」(史実での四式に近い)の主砲は最初からT-34の90 mmの装甲を撃破する為に開発された五式75mm戦車砲(ドイツの援助とインフラ整備により搭載可能となった最新砲)を搭載しており、その火力は旧式化した戦車はもちろん、T-34にも効果を発揮した。
「T-34は脅威だ。優先して撃破せよ!」
「了解」
戦車部隊の指揮官は最新兵器たるT-34を優先して破壊するように命じた。旧型戦車は一式中戦車の二型及び三型で十分掃討可能であり、三式中戦車は四号戦車らと共にT-34を破壊する任務を果たす事が先決だ。T-34は純粋にソ連の機械で作られた場合、工作精度の関係もあり、砲弾が命中すれば装甲を貫通しなくとも内壁が破壊される危険性を持っている。そこに漬け込めば戦果は拡大できるだろう。
「下手に動くな、待ち伏せ攻撃に徹する。地の利はこっちにあるから落ち着いていけ」
日本機甲部隊は前年より少しづつフィンランドに派遣され、フィンランドの地に馴染むように訓練を受けていた。厳しい訓練と予め慣れることによる寒冷地への適応性の向上を努力した。幸い日本には八甲田山などの教訓があるので、その方面の装備の充実を急いだ。
38年より進められた軍の近代化は意外なところにも恩恵をもたらしたのである。
『師団長より全車へ。航空支援がこれより行われる。注意されたし』
基地から飛び立った空軍の航空部隊が到着したのだろう。無線で航空部隊に目標を通達して伝え、航空部隊の武運を祈る。
-航空部隊は爆撃・攻撃機は試作機で固められていた。正式採用の暁には`彗星`、`天山`と呼ばれるであろう機体群である。それらの内、彗星は史実での水冷でなく、空冷エンジン搭載であった。空技廠も史実の水冷型の稼働率の数値を見せられ、グウの音も出ないほどに打ちのめされ、空冷エンジン型へ転換した。金星への最適化が行われたため、搭載量も増大し、800kg爆弾が搭載可能となっている。中には爆弾の代わりにロケット弾装備した型、ガンシップの要領で機銃を20ミリに強化した型なども混じっている。これは天山も同様だ。防御力もあるので、そうそう落とされるものではない。
「来たぞ~Yak-1だ」
「露助の誇る`最も偉大な戦闘機`か。今のところは旧式機のほうが数多いって所だが、直線速度は二式単戦二型より15キロだけ遅いが、零戦より5キロは早いんだよな」
「零戦は低高度での巴戦に徹しろ。一撃離脱戦法は二式が引き受ける」
「了解。各機、サッチウィーブ、シュヴァルム戦法は忘れるな」
この時期、空軍や海軍空母制空航空隊は機体剛性と性能が向上した機体、同盟国のおかげで`まともに`なった無線機を有効活用して、シュヴァルム戦法やサッチウィーブなどを取り入れるようになっていた。ノモンハン事件の戦訓や遥がもたらした航空戦の解説本の効果である。無論、実際にドイツ軍のパイロット達が模擬戦闘で打ち負かせた事への対抗心や航空戦の進歩から遅れる事への危惧も大いにある。役割分担としては巴戦=零戦、一撃離脱=二式である。
「1、2、3で突撃をかける。鍾馗隊、続け!!」
`赤ダルマ隊長`の呼称で有名な若松幸禧大尉は無線機を活用して、鍾馗隊を縦横無尽に動かす。そしてタイミングを合わせて、突撃を敢行する。彼は無線で二式二型の`ホ5`二式二十粍固定機関砲(威力を増すために弾薬の改良と長砲身化されている)を放つタイミングを全機に知らせる。
「1……、2……の3ッ!!」
絶好の位置についたと判断した彼は機銃を撃った。新規格で作られた20ミリ徹甲弾はYak-1に吸い込まれていき……数発で火を吹く。ソ連のパイロットたちは支那事変で鳴らした熟練の日本と比べると技量は低い。二式の奇襲への対応が遅れている。三機ほど落とされたところでようやく散開し始める。
「上出来だ。巴戦は零戦に任せる」
彼らは一撃離脱という二式の機体特性を理解していた。闇雲に追うことはせず、零戦が待ち構えている場所に`誘導する`事に徹する。ソ連機は禿鷹のごとく待ち構える零戦の網にかかろうとしていた。