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蒼空の連合艦隊  作者: 909
大戦準備~1941年から1945年~
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第一二話「日本軍、機械化を進める」

今回は陸軍の兵器開発に伴う改革と、遥の成長について書きます。

‐零戦は1940年の東京五輪にて初期生産機が上空で五輪のマークを描き、日本の新鋭機として強く知られるようになった。だが、それから1年後には格段に性能を向上させた金星六三型搭載型が試作されていた。日本は41年に入る頃には初期型である一一型とその艦載機タイプの二一型からその大規模改良型たる`零戦二二型`(史実での五四型相当)へ転換が始まろうとしていた。(だが、それは零戦のモデル寿命をできるだけ延ばす為の施策に過ぎない)一方、米国は国力にものを言わして、F4F「ワイルドキャット」をほぼ全部隊に配備。これをもって零戦に対抗しようとしていた。


一方、日本陸軍は1940年12月末を持って、U.S.M1カービンを正式採用。三八式歩兵銃、九九式小銃に変わる主力銃として、ウィンチェスター・リピーティングアームズ社の日本工場で大量生産が開始された。7.62mm口径(三八式は6.5mm)なため、旧来の火器との互換性が無いとの批判もあったが、大戦での弾薬の現地調達が可能であるとの利点と史実での鹵獲銃の活躍が評価されて無事、41年初頭には最初の生産ロットが部隊に配備された。日本国内の工場ではまだ完全には生産できるほどの設備も能力もないので、日本の各関係者達は進出したばかりのウィンチェスター・リピーティングアームズ社の工場(設備は本国から輸入)をこぞって見学に訪れていた。そして三九年より進められている日本国内の自動車産業の育成(ジープの大量生産などが主)及びオリンピックのおかげで進んだインフラ整備の成果で4式中戦車の開発にも目処は立ち、史実での後期設計を元にする事が決定。しかしその完全な開発には後二年は要する公算である。その支援戦車として開発されている3式中戦車の完成までは当面は一式中戦車のマイナーチェンジ(チハは早くも2線級に格下げされ、余剰車は満州国に、和平した中華民国政府やソ連侵略の可能性が大きいフィンランドなどの第三国へレンドリースされていた)型で凌ぐしか無い。41年時点での陸軍の機械化率はノモンハン事件時よりは大分マシにはなったが、ドイツに比べると遙かに低い水準に留まっていた。計画開始から僅か数年では、機甲師団の地位を向上させるのに成功しても、まだ十分に数を揃えられずにいる。(これは海軍がドイツに伝えた`装甲兵員輸送車`の概念も合わせて実現させようとした陸軍の野心が大きい。正面装備ばかり重視する傾向のあった日本軍にしては改善が見られる)後方装備の充実に関しては`戦後米軍`を始めとする後世の成果を參考に、

遥の所有する、未来の某社出版の「徹底解説!!世界の陸軍」なる本が重要参考本として、兵器開発陣と参謀本部人員の必読本になったとか。








 ‐此頃、遥は赤城乗組で一年が経過していた。彼女の関与した計画は順調に進められ、女性搭乗員に関する規律が整った40年10月をもって、各空母への女性搭乗員の配属が認可された。第一陣は当時の最新鋭艦「飛龍」に配属され、戦闘機隊の一翼を担った。彼女らは模擬戦で男性陣の鼻を明かす結果を出し、さらに喧嘩でも対等に渡り合える豪胆さをもった兵士が武勇伝を轟かせた事から、次第に女性を見る目も未来に近くなっていった。



自室で彼女は自身の策略が概ね上手く行った事を喜び、ある人物へ手紙を書いていた。


「ええと……拝啓、渚様……」


最近、彼女自身にも人生の一つの契機となる出会いがあった。夏のある日の事、訓練を見学に訪れた先で統合航空隊の候補生「渚真」(なぎさしん)と言う人物と出会った。彼は端正な顔立ちと誠実さ、優しさを持つ好青年で、遥より2歳ほど年上(この当時の遥は14歳なので、彼は16歳になる)だった。遥はそんな彼に惹かれていった。訓練の間を縫うように面会し、月に一定の回数会うようにしている。


彼との事は中佐も知っており、中佐は「あいつらはいずれ結婚させてやらんとなぁ」と同僚に零し、山本五十六や小沢治三郎もその事をどこからか耳にし、その仲を暖かく見守っていた。


その時の中佐と山本五十六との会話はこうである。


「中佐、キミの娘さんのことだが、例の噂は本当なのかね?」

「ハッ。閣下のお耳にも入っているのですか?恥ずかしながら……」

「遥くんはよくやってくれている。女性としての幸福を得られるのならそれも構わん。人間として当然の権利だ」

「それは分かっていますが……」

「君だって同じことをやってきたはずだろう?」

「ですが……」

「……気持ちは分かる。だが、我々は旧史で神風特別攻撃隊を始めとして、多くの悲劇を産んでしまった。米国と戦争となれば、今回も多くの人間が死ぬだろう……だからこそ`幸福`は大事にしたいのだ」


山本五十六は史実で軍がどれほど多くの悲劇を産み出してしまったのかを悔やんでいた。特に特攻隊は、軍の高級士官たちに測りしれぬほどの罪悪感を与えていた。山本五十六の言葉は、嫁を送り出す父親の例に漏れず、心の葛藤に揺れていた中佐の決意を固めさせるのに十分な効果を発揮し、彼も真との関係を認め、`いずれ、適齢になったら結婚させるから安心しろ`と遥にあったときに言ったそうな。

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