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麗しの姫君、今宵は貴方を攫いに参上いたしました

作者: マヨ
掲載日:2026/06/29

今宵はセレスティア王国のお城で舞踏会が開催されている。

シャンデリアがキラキラと揺れる会場で参加者たちは

タキシードとドレスを着飾ってパーティーを楽しんでいた。


「レオンハルト国王陛下。今日はわざわざ遠いところから来ていただきありがとうございます」


ドレスの裾を持ち上げアリシアは丁寧にお辞儀をする。

ふんわりと輝くクリーム色の髪、宝石のように透き通った翡翠色の瞳。

赤いバラが施されたピンクのドレスもまた見る者を魅了させる。


「こちらこそ招いていただき感謝するぞ。アリシア姫」


レオンハルトは隣国のブロディア王国の王でアリシアの父ルドルフと酒を酌み交わす仲だった。

しかし一年前に流行り病で他界、今は娘である彼女が中心となって国や民を見守っている。


「そうだ、良ければ息子にも会ってやってくれ」


レオンハルトはよく通る声で「シリウス」と呼んだ。


「お呼びでしょうか、父上」


端正な顔立ちに明るい金色の髪とに輝く瞳。

目を惹きつける王族服を身に纏う姿はまさにブロディア王国の王子。


「シリウス、こちらはアリシア姫だ」

「お初にお目にかかりますシリウス王子殿下。私はセレスティアの姫アリシアと申します」

「ブロディアの王子シリウスです。父から貴方の話を聞いてましたがこんなに美しいお方だなんて」

「そ、そんな‥‥美しいだなんて。シリウス王子殿下は口がお上手ですね」


少し戸惑いながら頬を赤くするアリシア。隣でレオンハルトが気をきかせ、二人で踊ってこいと声をかける。そしてシリウスも返事をしてアリシアにそっと手を差し伸べた。


「では行きましょうか、アリシア姫」

「は、はい」





シリウスにエスコートしてもらいながらアリシアは華麗に踊る。

楽しい時間はあっという間に過ぎこれにて舞踏会は幕を閉じた。


「シリウス王子殿下。今日は楽しかったです」

「私もだよアリシア姫。貴方のおかげで素敵な一日が過ごせた」


互いに笑顔を見せて微笑み二人は他愛のないやりとりをする。

そしてシリウスはじっとアリシアを見つめ優しく手に触れた。


「アリシア姫。どうやら私は貴方のことが好きになってしまったようだ」


突然の彼の告白に思わず目をパチパチさせるアリシア。


「どうか、私の伴侶になってはくれないだろうか?」


今度は結婚前提でアプローチをされてしまう。

まだそういう関係になるのは早いような気がする。


「シリウス王子殿下。私たちは今日会ったばかりまだそういうの関係には早いと思います」


シリウスの目を見てアリシアは誘いを断った。


「‥‥まさか、このアプローチを本気で受けるとは‥‥」


すると突然、目の前にいたシリウスが見知らぬ男に早変わりする。


「お初にお目にかかります姫君。今宵は貴方を攫いに参上いたしました」


男は”怪盗紳士”と名乗りただ目的を告げてスマートな体形からは思いもよらない強い力で軽々とアリシアを抱きかかえた。


「あ、あの。あなたは‥‥?それにシリウス王子殿下は‥‥」


状況が分からないままアリシアは驚きを隠せないでいる。


「安心してください、シリウス王子殿下は無事ですので」


男はやんわりと笑みを浮かべた。


「おいおい、そう硬くなるな。せっかくの美人が台無しじゃねえか」


さっきとは打って変わって荒っぽい口調で男は甘いセリフでアリシアを抱きかかえながらエントランスを歩く。


「大丈夫、そのまま力を抜いて俺に全部任せろ」


言われるままアリシアは彼に身を委ねた。


「何も怖がることはねえよ」


仮面越しからキラリと輝く蜂蜜色の瞳と透明感ある黒い髪。

整ったその顔立ちにアリシアは思わず見惚れそうになった。






それにしてもシリウスはいったい、どこに行ってしまったのか。

そんなことを考えているうちにバルコニーへ到着する。


「では姫君、これから夜の散歩と参りましょう」



すると、その時だった。



「そこの不審な男、アリシア様から離れろ!」



二人の前に立ちふさがったのは騎士の服を着た男でアリシアの護衛騎士でもあるラインハルトだった。


「ラインハルト!」

「アリシア様、今助けに参ります!」


ラインハルトを中心に複数の兵士たちが男を取り囲むが、彼はこの場を楽しむかのように笑みを浮かべていた。


「このアルセーヌ・ルパンを捕えようとは‥‥」


まるで手品のようにルパンは手元からステッキを取り出す。

同時にステッキから白い煙が舞い上がり、この場にいる全員の視界が霞む。


「では、今度こそ素敵な夜の散歩と参りましょう」




ルパンは再びアリシアを抱きかかえそのまま華麗にバルコニーから飛び降り慣れた手つきでワイヤーを操る。




「麗しの姫君はこのアルセーヌ・ルパンが頂いた!」


どんどん小さくなっていくセレスティア城。

シリウスが悔しそうにする姿がぼんやりと見える。



「おのれ、アルセーヌ・ルパン‥‥貴様はなんとしてもこの私が捕らえてやるからな!」




こうして、お姫様は舞踏会の夜に怪盗紳士・アルセーヌ・ルパンに盗み攫われるのでした──。



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