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初めての小説投稿です。
楽しんでいただけるよう頑張ります!
10歳の誕生日前日、頭を打った。
もうそれはしっかりゴッチンと頭を打った。お父様とお兄様たちが私の誕生日のご馳走のために狩りに行くのについて行きたかったのに、お母様とお留守番を言い渡されて私はすごく怒っていた。
それで気分転換になればいいなと木登りをした。我ながらなかなかの行動力だと思うけどあの時は木に登ったらお父様たちが見えると思ったんだもの。引き止める侍女を振り切って木に登ったら見事に足を滑らして頭を打った。幸い怪我はなく、できたのは大きなタンコブだけだった。
私の前世の記憶が甦ったのはそのタンコブに触れた時だった。
前世の私は現代日本でかわいいもの大好きなハンドメイド作家をしていた。
自分がかわいいと思うものを作り、それをお客様と共有する…なんて素敵なお仕事でしょう!
アクセサリー、キャンドル、革製品にお洋服と多岐に渡って取り扱っていた私。作りたいものが多すぎて寝る時間、食事の時間も惜しかったのでそれらを疎かにしてやらかしました。死因過労死。もっと自分を大切にしていたらまだまだ作れたのに…。
さて、そんな前世の記憶を取り戻した私はリディア・クローディア。ここマディアナラス領の辺境伯の一人娘である。お父様とお母様、歳の離れた二人のお兄様がいて家族からは末娘としてとても可愛がってもらえてると思う。
転生したこの世界は魔法やスキルもあるし、妖精や聖獣、魔物もいるまさにファンタジーな世界だ。
そんな世界の辺境伯ともなればやはり魔獣と戦う。お父様とお兄様たちも日々魔獣と戦うために身体や魔術を鍛えているし、お母様が魔法の訓練をしているのを見たことがある。
武闘派な家族だけど私もスキルがわかったら戦えるようになるのかな…?
この世界では10歳になると神殿に行ってスキル発現のための儀式を行う。スキルは戦闘系や魔術系、生産系と種類も多岐に渡ってあり、日々の生活で取得する事もできる。
このスキル発現の儀式を行うとスキルが可視化できるだけじゃなくて、今後取得しやすいスキルがわかるので子どものうちに受けて将来の道筋にする人が多いみたい。
と、前世の記憶と今世の世界について考えていたらすっかり夜になりました。お医者様からも大きなタンコブだけと診断してもらい、そのまま就寝。なんて言ったって明日は私の誕生日ですから。主役の私が寝坊するわけにはいかないよね。
「リディアお嬢様、朝ですよ。昨日のタンコブは大丈夫ですか?もし痛みがあるならすぐにお医者様をお呼びしますよ?」
「おはよう、カリナ。もうちっとも痛くないわ。それに今日は神殿に行くでしょう?早く準備しなくちゃ。」
カーテンの隙間から朝日が差している。その厚いカーテンを開けて侍女のカリナが朝の挨拶をしてきた。
カリナは私が木登りをした時も一緒にいた私付きの侍女だ。いつも一緒にいてくれる、私のお姉ちゃんみたいな人である。昨日頭を打った時も顔を真っ青にしてすぐに対応してくれて悪い事したな…と前世の記憶が甦った今は思う。
でもそれまでは普通の9歳だったので少しお転婆だったのは許して欲しい。
「リディアお嬢様はスキル発現の儀式をずっと楽しみにしておられましたもんね。」
クスクス笑いながらもドレスの準備をしていくカリナ。その手には黄緑色を基調としたフリルとレースが施された可愛らしいドレスがある。
「このドレス、奥様から本日ぜひ着てほしいそうです。リディアお嬢様の甘栗色の髪色とアメジスト色の瞳にピッタリですね。」
「わぁ、かわいい!それに素敵なレースがついてる!」
「奥様がリディアお嬢様をイメージされてデザイナーと決められたそうですよ。レースは今王都で流行りのものだとか。」
「そうなの?この辺では見ないデザインだったけど王都ではこんなに素敵なレースがあるのね。お母様とデザイナーの方に感謝しなくちゃ。」
私はドレスに施されているレースが気になった。繊細に編み込まれ、所々お花のモチーフも見受けられる。銀糸も組み込まれており華やかさもある、とっても素敵なレースだった。
「早くこのドレス着てみんなに会いにいきたい!カリナ、着替えるのを手伝ってくれる?」
「もちろんです、リディアお嬢様。早くみなさまに可愛いリディアお嬢様をお見せいたしましょう。」
そう言うとカリナはさっとドレスをハンガーにかけて他の装飾品を取りに行った。私も準備しなきゃ!
「おはようございます。お父様、お母様、お兄様たち。」
着替えを終え、家族が揃っているであろう食堂に向かうと私以外みんな集まっていた。
「おはよう、リディア。いつも可愛いが今日は一段と可愛らしいじゃないか。」
一番はじめに私に挨拶を返してくれたのはお父様であるハルバディ・クローディア。光り輝く黄金の髪色に優しいアメジスト色の瞳をしたナイスガイだ。
「まぁ、本当に!リディアは何を着ても可愛らしいけれど、黄緑色のドレスもよく似合っているわ。これを選んでよかった。」
そう言ってニッコリ微笑むのはアン・クローディア。甘栗色の髪に輝くエメラルドグリーンの瞳をしたお母様だ。もう3人も子どもがいるのに20代にも見えると言う、摩訶不思議な美貌をしている。
「うわぁ、リディア。春の妖精が我が家に舞い込んできたのかと思ったよ。」
「…とても可愛いよ。」
大袈裟に褒めてくれるのは長兄のアラクセル・クローディア。ここの領地を継ぐためにお父様の補佐をしている。戦闘系のスキルを沢山持っていて、魔獣退治もしている。甘い顔立ちでお父様譲りの髪色と瞳。さらにこの甘い台詞。絶対にモテるに違いない。
最後に褒めてくれたのは次兄のゼイン・クローディア。お母様譲りの髪色と瞳。魔法系のスキルを沢山持っていて、薬の研究などもしている。寡黙なところもあるけれどゼインお兄様も絶対モテる。
「ありがとう!私も素敵なレディになったから!」
その場で一回くるっと回って全身を見せる。スカートがふわりと広がり、カリナにセットしてもらった髪の毛も一緒にふわりと広がった。今日はハーフアップにしてもらっている。
「そうだね、リディアももう10歳だからな。立派なレディだ。さぁ、朝食を食べたら神殿に行こう。楽しみにしていたスキル発現の儀式だ。」
「やったー!早く食べましょう。」
お父様が言うとみんな席に座っていく。家族全員で食卓を囲み、談笑しながらゆっくり朝食を食べた。昨日の木登りの事についてはお母様に叱られた…。お母様怒るとこわいんだから…。もちろん、心配もさせてしまったからしっかり反省しております。
我が家のコックが作る料理は本当に美味しい。
ふわふわオムレツにカリカリベーコン。この世界の食事はかなり進んでいる。
しかし、味付けが塩や砂糖のみで醤油や味噌なんてものはない。前世でもちゃんとご飯食べておけばよかったな…。
ちょっと後悔しながら、目の前にある美味しい朝食を食べ進めた。
「それではアラクセルお兄様、ゼインお兄様、行ってきます!」
朝食も食べ終わり、馬車に乗って神殿に向かう。両親も一緒だ。我が家から領内の神殿までは少し距離があるため、スキル発現の儀式について両親に聞いてみる。
「お父様、お母様。儀式の時は神官長の言う通りにすればいいんですよね?」
「そうだな、神官長が″祝福の言葉″を歌われるからそれを静かに聞いていればいい。」
「″祝福の言葉″?」
「神官長のスキルだ。これを歌えば子どもたちに祝福という名のスキルを授ける。だからスキル発現の儀式なんだ。」
なるほど。神官長のスキルで私たちはスキルが見られるようになるということか。神官長ってすごいなぁ…
「″祝福の言葉″は神官長になりうる方が沢山練習して習得するスキルなんだ。誰だって出来ることではない。今の神官長はこの領でもう30年以上儀式をしておられる、立派な方なんだぞ。お父様も今の神官長にスキル発現の儀式をしていただいた。」
「神官長、すごい…。」
お父様のお話を聞いて、さらにすごいと思った。きっととても威厳あるお方なんだろう。
「旦那様、そろそろ神殿に着きます。」
馬車の中で話に夢中になっていたら神殿の近くまで来ていたらしい。少し緊張してきた…。
「ありがとう。アン、リディア、行こうか。」
お父様がお母様をエスコートして、その後私もエスコートしてくれた。
神殿はキラキラと太陽の光を浴び、全体的に白を基調とした厳かで立派な建物だった。神聖な雰囲気を感じる。
「本日儀式の方はこちらに。神官長がお待ちです。」
「お父様、お母様、こちらですって。早くいきましょう!」
「リディア、そんなに急がなくても神官長は消えたりしない。」
お父様に苦笑いされた。お母様もニコニコ笑っている。ちょっとはしゃぎすぎたかしら…。でも、早くスキルが知りたい!
足早に神殿の中に入ると、そこは太陽の光が差し込み明るく、開放感があった。どうやら儀式は同じくらいの誕生日の子が集められて一斉に行うらしい。中にはすでに何組かの親子がいた。
「それではこれより、スキル発現の儀式を行います。儀式を受ける方は前に出てきてください。」
白い神官服を着た男性が声をかけると子ども達だけ前に出ていく。私も他の子と一緒に前に出る。
「今から神官長が″祝福の言葉″を歌います。みなさんは目を閉じて、その歌を聞きながら女神・アマリサラサ様にスキルを授けていただけるようお祈りしてください。
アマリサラサ様がこれにお応えしてみなさんにスキルを授けてくださります。」
神官の男性の説明は短く、私たちがやる事は少ないらしい。これなら手順を間違えちゃう事もないから安心。
「ほっほっほっ、神殿に集いし新緑の蕾たちよ。よくぞ来てくれた。
わしが神官長のモーリスじゃ。これから君たちにはわしの″祝福の言葉″を聞いてもらう。
緊張せず、心静かに聞いておくれ。」
男性神官の説明が終わると入れ替わるように神官長がやってきた。
モーリス神官長は髪も口髭も真っ白でまるで前世でいうサンタさんのよう。威厳ある厳しい方かと思っていたけど、私たちを見つめる目はとても優しさに溢れている。
「みな早くスキルが知りたいよの。それでは始まるとしよう。みな、祈りを。」
モーリス神官長の言葉で私たちは女神・アマリサラサ様にお祈りを始める。
モーリス神官長も歌い始め、部屋の中は神聖な空気に変わった。
(アマリサラサ様、どうかスキルを授けてください。できれば戦うより生産がしたいと思っています。もちろん、家族のために戦闘系のスキルがあった方がいいのはわかっているのですが、でも生産系スキルもやはり捨て切れないと言いますか…)
私は煩悩丸出しで女神様にお祈りした。前世の記憶を思い出した今、魔獣と戦うよりもやはりアクセサリー作ったり、お洋服作ったりしたい。
とういか、現代日本人だった私がスキルを授けてもらったからって魔獣と戦えるとは思えなかった。
だったらせめて、家族のためにアクセサリー作ったりした方がいいんじゃないかなって考えたのよね。
モーリス神官長が最後の節を歌い終わった。
「みな、祈りを終えてよいぞ。それではステータスと唱えてごらん。目の前に自分のスキルステータスが出てくるはずじゃ。
それが君たちの今持っているスキル、そして適性じゃ。もちろん、今後の努力次第でここにはないスキルを取得する事だって出来るからの。
君たちにはまだ無限の可能性が秘められておるからのぅ。切磋琢磨し、これから立派な大樹へと成長しておくれ。」
(無限の可能性…)
そうよね、これで生産系のスキルがなくても私には前世の知識もある。
きっと家族のために色々作ることは可能だろう。
スキルはその補助的なものだと思えばいい。
「それではこれにてスキル発現の儀式を終了いたします。みなさんはご両親のもとへとお戻りください。」
今後の生活について考えているといつのまにか最初に案内をしてくれた男性神官がやってきて儀式の終わりを告げた。
私は後方でずっと待っていてくれた両親のもとに急いで戻った。
「おかえり、リディア。
さぁ、ステータスと唱えてごらん。自分のステータスが見えるはずだ。」
「わかったわ!ステータス!!」
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