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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第93話:全国模試

 夏休みの前日、通知表を受け取る。期末と中間と結果が良かったこともあり、評価は軒並み5。前まで3か4を行き来していた俺の成績とは大違いだ。流石に体育の成績は5とはいかなかったが、体育で5を取るには力加減が難しい。加減に加減を重ねた結果、体育はそれでも4というところ。まあ、内申点には入らないだろうからいいか。こっちは一般入試で入るのだからテストの点数だけで押していくことが大事だろう。


 さて、通知表をもらって夏休みに入り、早速ダンジョンに行きたい……というところだが、学校との約束があるのでダンジョンには潜れない。仕方がないのでアカネと彩花を伴ってオーク肉の回収だけは行うことにしている。丸二日ほどオークをひたすら狩ったことで、俺はレベル11に、彩花はレベル7になった。どうやらレベル差によって経験値が入らない、ということはないらしい。


 一つ懸念事項が払しょくできたのと、食事のあてが出来たところで食生活は改善できた。そして魔石を集めた分だけ後日換金する金額が増えたため、魔石入れがそろそろ満タンになりそうなぐらいだ。何万円分あるんだろうな。これは三日ぐらいに分けて換金に行かないと色々と面倒なことになりそうだ。


 ダンジョン禁止令が開けた後、近くにインスタンスダンジョンでも出来てくれないものかな。そうすれば換金するにしてもいくらかごまかしが利くようになるのに。


 それはそうと模試だ。今日はダンジョンではなく、模試の勉強のためにまた集まっている。午前中は数学を一通りした後、現代文と古文を中心に一年生の範囲からやり直していく予定である。これも夏休みという集中した期間が取れないと難しい時間だっただろう。


「にしても、全国模試か。どこからどんな問題が出るかも傾向予測はできるが……予測を狙って点数を稼ぐよりも俺達の場合ベースをきっちり作ってあるか確認をして、そこにさらに上乗せするほうが早そうな話ではあるな」

「確かに、私も一年生の時の分まできちんと学べているかどうかを考えたら怪しいしね。もっと簡単な所から順番に難しいほうへ進みましょう。私はその方針で行くわ」

「数学IAからⅡBへ順番にか。まあ、そのほうが順当かもしれんが……そういうベースのところで得点を落とすよりはそのあたりでしっかり稼いでおいたほうが確実だろうな。幹也も突然三年になってから成績が良くなり始めたから、去年や一昨年の部分の拾いなおしをしておいたほうがいいかもしれないな」

「そんなわけで、一からやっていくぞ。一応教科書とかテキストやノートは捨てずにとってあるからな。それを見て……なんだろうこれは」


 自分で自分のノートを見て、何が書いてあるかわからない。知能レベルの急激な向上により、どういう意図でこのようなノートの取り方をしたのかわからない、といったところかもしれない。うむ、このノートを読み下そうとするよりも、一から教科書を見ていって例題を解いて思い出しながら行く方が早いだろうな。


「よし、去年までの俺はあてにしないことに決めた。今の俺で出来る範囲のことをやる。そうしよう」

「どれどれ……これはひどいな。こんなノートの取り方をしてたやつが学年2位とは思えんほどだ」

「これは……ちょっと私でもフォロー出来ないわ」


 俺のとったノートを見て二人がうめき声をあげる。一番うめき声をあげたいのは俺だ。なんでこんなわかり辛いノートを取っていたのか、過去の自分が嫌になる。


「よし、一から勉強し直そう。ある程度は覚えているだろうし、おぼろげに浮かんできたところを引っ掴んで無理矢理全部解ける所まで持っていくぞ」

「幹也ならやりそうだから怖いな。結城はどうする? 幹也と同じ学習法にするか? それとも俺がわからない所だけかいつまんで説明していったほうがいいか? 」

「そうね、かいつまんだ説明のほうでお願いするわ」


 なお、アカネは絶賛ダンジョン建築中である。彩花との一件以降、むやみにダンジョン利用者を増やすべきではないとの話から、隆介が来てる時は本業に戻るかダンジョン拡張に精を出すことになってもらっている。隆介も危険人物というわけではないし、カラクリを知られたところで大声でそれを張り上げ始める人物でもないことはわかっているが、隠すべきは親友でも隠すという線引きをしたことになる。


 そんな中、必死に教科書をひっくり返して公式から解き方から必死こいて覚え直すことになった俺。スポンジが水を吸い込むように、というのはこういう時のことを言うのだろうな。どんどん頭の中に公式が蓄えられ、隆介が時々質問してくる内容にきっちり答えることが出来ている。


 そんな俺の様子を見て隆介も安心したのか、彩花の勉強にかかりきりであり、隆介自身も教えることで自分の身に再投入することが出来ている様子で、午前中は覚え直しに全戦力を投入することで、乗り切った。


 昼飯に入り、流石に毎回彩花に作ってもらうのも悪いということで、俺が手伝いながら昼ご飯をささっと作り、三人で食べる。今日は簡単なスープパスタと生野菜のサラダハム付き、そして白米である。ちょっと炭水化物が多めだが、頭をしっかり使っている今日にはもってこいの食事だろう。量もしっかりと用意してあるため、お代わりもできる。


 卓を囲む隆介も本当なら一緒に秘密を共有して共にダンジョンでレベルを上げてより高みへ……といきたいが、そうなると今度は隆介の彼女だけが仲間外れという話になり、もし隆介の彼女が入れ替わることになればまた知っている人が増えることになる、と際限がなくなる。そのため俺と彩花とアカネが相談した結果、隆介にはまだ本当のことは言わない、ということになったのである。


 閑話休題。午後からも数学の続き。彩花は数学から手を変えて、英語の見直し、聞きなおしに入った。俺は黙々と数学の教科書を読み進んで、午後三時ごろには数学を一通り終えることが出来、英語に遅れて入り始めた。英単語は一通り頭に入っているので後はひたすら問題を解いていくだけ。とにかく積み重ねが大事だ。彩花に追いつくべく課題内容をひたすら解いていく。


 隆介は時々茶々を入れるように、英語で「今どんな感じだ? 」と聞いてくるが、今詰まっている問題の内容を英語でやり返すと、そのまま簡単な英語で解説、ポイントを教えてくれるようになった。おかげで英語の聞き取り力まで向上しそうだ。


 日が傾き始めるまで……と言ってももう夏休み、七時になってもまだ明るいと言える範囲で、お腹が空いたのでそろそろお開きにしようということで解散した。ふぅ、今日は一杯勉強したな……夕飯作ったら復習するか。彩花も今日はそのまま帰るとかで、何もせずに帰っていった。今緊張の糸が途切れるようなことをするのはお互いにまずかろう、ということなのだろう。


 できるなら俺もイチャイチャしたいが、それでせっかく覚えたことを吹き飛ばしてしまう恐れがあるからぐっと我慢。我慢した方が後のイチャイチャが楽しいものになるからな。


「そうね、その模試が終わるまでは精々我慢しておくといいわ」


 気が付くとアカネが帰ってきていた。夕飯を食べながらアカネとしばし話し込む。どうやらダンジョンのほうは順調に拡大されているらしく、夏休み中に十層までできあがる予定らしい。


「あなたも勉強しなおしで大変なんだろうから、少しだけ癒しをあげるわ」


 そういうと、アカネから俺へ青い光が配られる。普段の逆だ。すると、頭が段々スッキリし始め、そして頭の中が整理されたかのような感触がする。スッキリはしたが、覚えた内容は忘れたわけではない。純粋に癒しの効果、という感じだろう。


「ちょっと楽になった気がする。ありがとう」

「いいのよ。貴方がきちんと自分の目指す道を行こうとする限り、私は応援する側だからできるだけのことはするわ」


 頭もスッキリしたところで復習に取り掛かることにしよう。さっきまでしっかり詰め込んだ知識が整理され、更に頭に詰め込む余裕すら出てきた。この調子でどんどん知識を入れ込んでいこう。まだまだ俺もやれることはある。覚えることもある。


 青い光の余韻が消える頃には、さっきまで疲れで霞んでいた視界が驚くほど鮮明になっていた。頭の中に散らばっていた知識が整理され、一本の道筋のようにつながっていく。これがアカネの力か……と、感心しながらも俺は再び机に向かった。


 ペン先が紙を走るたび、さっき覚えたばかりの公式や英文法が鮮やかに蘇る。もう覚え直しという感覚すら薄れて、ただ頭に定着していくようだ。自分でも驚くほどの集中力に、思わず口元が緩む。


「……ふふっ。いい顔になったじゃない」


 全国模試。たかが全国模試、模試である以上ただの一試験にすぎない。けれど、これから先の未来を決める大きな指標でもある。自分の実力が全国という母集団の中でどれほど通用するのか、明確に示される場だ。ここでどこまでの実力が出せるかどうかで、夏休みの重みも秋以降の勉強の姿勢も大きく変わってくる。


 隆介は当然上位を狙ってくるだろう。彩花だって、もう学年で18位に入れるだけの力を示した。二人に負けたくはないし、同時に肩を並べたい。


 そして俺自身、ただ流されるだけの過去の俺から、本気で未来を掴み取る俺へと変わったことを証明するためにも、この模試は絶好の舞台になる。


 よし……と小さく呟いて、再び参考書を開く。もう時計の針は夜の十一時を回っていたが、眠気は感じない。むしろ心は冴え渡り、明日の模試に向けて昂ぶっている。


 明日から始まる戦いは、ただの模試ではない。俺にとっては、自分の可能性を試す一歩だ。そして、その先には彩花との未来も、二人で挑むダンジョンも繋がっている。


 机に頬杖をつくようなポーズをしながら、アカネが小さく囁いた。


「頑張りなさい。結果はどうあれ、あなたの努力は必ず報われるわ」


 その声に背中を押されるように、俺はペンを握り直した。明日は遅刻ギリギリになるか、逆に早起きになるかのどちらかだろうという予感がしている。今のうちにパスタを茹でて冷蔵庫で一晩寝かせておくか? 考えたあげく、頭を冷ます仕事としてパスタを茹で、二食分、明日の朝食と昼食それぞれの食事を作っておくと、冷蔵庫で一晩寝かせておくことにする。


 明日の食事ぐらい作り置きでざっくりさせておいてもいいだろう。一仕事終えると、また勉強に没頭する。遅くとも深夜二時には寝よう。明日遅刻ギリギリでも良いように今手はずは整えた。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
アイテムボックスがないチートは、なかなか現実感があってよいですね。
これは、模試でやらかす(いい意味で)流れか!?続きが楽しみです〜
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