第92話:テスト終わり
三日間のテストは終わった。とりあえず二つある山場の一つは越えたってところだ。テストの出来はと聞かれると、前回に引き続き全部埋めて見直す余裕もあった。ちょっと難しい数学の問題はあったが、公式をいくつか当てはめれば自然に解ける問題ではあったので多分合っているだろう。
それ以外では現代文のいつもの「この情景について答えよ」という感じのインスピレーションでは解答できない問題があったので、消去法で違うものをどんどん消していって最終的に残った解答にする、という形で問題を解いていった。さて、今回は何位につけることができるだろうか。
隆介もテスト期間中は顔を出すこともなく、本気でテストに集中していたらしい。いつもなら茶々と入れてくるところだが、いつもと違う隆介に戸惑いながらもプレッシャーにはならずにいつもの調子で問題は解けたので、おそらく今回も問題なくTOP20には入っているだろう。
心配なのは彩花のほうだ。勉強に熱中していられるようになったことでどれだけの成績の上昇が見込めるのか。レベル5まで上げたことでどこまで成績に影響を表すことができるのか。レベルによる補正がどこまでかかるのか。まだ二つしかないテストケースの片方がどれだけの結果を残せるのか。
恋人をテストに使うのはいかがなものかとも思うが、実際彩花自身もレベルアップによってどのぐらい成績が上がっているのか、というのは気にしているところだろうし、スマホに「今日もいつもより出来た。なんか嘘みたいにカンタンに感じたわ」とこっそり経過報告を送ってもらっていたのでどうやらレベルアップによって賢さやひらめきなんかの頭の使い方まで変わってきているというのに間違いはないらしい。
後は結果を待つのみか。授業はあるがみんなそわそわしている。やはり期末テストの結果がそのまま模試の模試となる所もあるんだろうが、今回のテスト順位にみんな自分のすべてをぶつけて夏休みに入り込む、という点についても強化する科目、大丈夫な科目、ヤバイ科目とそれぞれあるだろうし、結果を見てからしっかりと今の自分の実力を確認していかないといけないな。
◇◆◇◆◇◆◇
数日すぎ、期末テストの結果が貼りだされた。今回も200名全員の結果が貼りだされている。一応下のほうから順番に見ていこう。
バババッと飛ばして上位だけを見るのも悪くないが、ランキングというのは下から見ていくのがマナーというもの。
200位から181位に知った名前はなかった。クラスメイトの名前もあったが、前回の合計点からは加点されていることから、成績が悪いわけでなく全体的に成績は良かった、ということらしい。それでも下のほうにランクインしている、というのはそれなりにプレッシャーだろう。
180位から161位。ここにも見知った名前はなかったが、少し涙目の生徒が居るので思ったよりも順位が良くなかったんだろう。ここにも三人の名前はなし。まあ、可能性があるとしたら彩花だが、彩花の順位はそこまで低くはないはずだ。勉強に集中していたりこっちでやってる問題を解かせたりしてみたのでそこまで低くはないだろう。
160位から141位。相模だったか。あいつの名前はここにあった。ダンジョンにかまけて勉強をサボっている訳ではないんだろうし、前回の順位がいくつだったのかはわからないが、ダンジョンに通ってた分順位が落ちた、となれば三者面談で問題にはされるだろうな。
140位から121位。あの場に集められた探索者のうち何人かはこの辺りにランクインしている。流石にレベルアップの恩恵を受けられるほどの成長は認められなかったらしい。流石にダンジョンのせいで、という言い訳をいかに使うかがかかってくるだろう。
120位から101位。クラスメイトがちょっと上がったと喜んでいる。中間テストと比べてもこの辺りの点数は上昇しているので、ランキングが低いからといって純粋にテストの点が悪くなっていたわけではなく、全体的に点数が上がっていた、ということになる。順位は変わらなかったが合計点は上がった、という声がちらほらと聞こえる。問題が簡単だったわけではないだろうから、みんなの成績が良くなっている、と考えるべきなんだろう。
100位から81位。彩花の名前はまだない。隆介の名前も当然ない。この辺りから順位当たりの点数差が小さくなっていく。上位勢は1点2点の差で順位が目まぐるしく変わるようになってくるんだろう。
80位から61位。まだ彩花の名前はない。これでダンジョンでレベルアップすることで成績が上昇することは間違いない、と言えるだろう。その場面を見ていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると彩花と隆介。どうやら同じタイミングで見に来て、ここまで順番に上がってきたらしい。
「二人とも上まで見たか? 俺はまだなんだが」
「俺達もまだだ。下から順番に見てきて、結城が何位にいるかどうか確かめていた所だ」
「とりあえずここまで名前はなかったから、上のほうに居るのは確かみたいね」
どうやら俺の見落としではなかったらしく、本当に上位にいるらしい。これは結果が楽しみになってきたな。
60位から41位。そろそろ彩花の名前が出始めるかもと思うところだが、まだ名前は出てきていない。周りがざわつき始める。多分俺がまた順位に入っていないからなのか、上位に入ってきてるのか、それとも上位が三人そろってきた、とでもいう感じで俺の行く先に道が出来始める。ざわつく生徒たちを気にせず、次の紙へ行く。
40位から21位。彩花の名前はまだない。これで、三人ともTOP20に入っているのは確実になった。彩花も内心を隠せず、ガッツポーズをしている。隆介は、まあそうだろうな、という顔をしている。俺は……もう何位に入っているかだけが気になるな。なんせ21位の時点で平均点は90点を超えている。この先は一問ミスったかどうかの都合だけでランキングされるようなものだ。
「ここまでは予定通りって顔をしているな。TOP20入りが三人もこの場にいるってのは悪くないな。しかも三人ともダンジョン探索者だ。探索しながらこの成績を維持できたってのは、学校としては悩ましいところだろうな。ダンジョンに通っているのに成績がいい、とはどういうことなのか、と不思議に考えているはずだ」
「まあ、俺はともかく結城と幹也はそうだろうな。さて、幹也を抜かせたかどうかだけが楽しみだな」
俺としてはもう懸念事項は解決しているので後は何位でも、何なら幹也より低くてもいい。ちゃんとTOP20に入っていればそれで充分なのだ。さて、最後の一枚を見ることにするか。
最後の一枚、1位から20位。ここに三人とも名前はあった。まず、彩花が18位。前回からの大躍進を果たした。レベルアップのおかげであることは間違いないだろうが、それに加えて彩花の勉強中の集中力。あれに救われた形になるんだろう。ただでさえ平均点が高い今回の期末テスト、その中でTOP20には入れただけでも充分な成果だと言えるだろう。
そして隆介は6位。前回よりランクアップしてこの順位。かなり緻密な計算をした結果、というより誰かが凡ミスをしてこの結果という形になっているんだろう。本当にこの順位の違いは僅差だ。2点差で6位ということなので、一つ下の山下さんが凡ミスで何かの計算を間違えたとかでうまく上ってこれたのだろう。
そして俺だが、今回は2位だった。万年2位の薬師寺君を抜いて上から2番。流石に1位の鉄壁の石畑さんを抜くことはできなかったが、石畑さんはほぼ満点に近いので流石にこれを抜くことは難しいだろう。だが、そこまでの順位を求めている訳でもないので今回はこれで良しとしておく。
薬師寺君との点差も1点なので、ほぼ伯仲していると考えてもらって結構だろう。それに、これで前回のラッキー順位とも言われなくなるだろうしな。
「くそ、また負けたか。だがまだ評定平均と模試ではどうなるかわからんからな。評定平均は一年生から期末までの全期間での評価が出る。こっちでは俺の勝ちということでいいだろうな? 」
三年になって覚醒した俺と、一年からすでに成績の良かった隆介ではかなりの差が出来てしまっていることだろう。そこは彩花も同じくするところだろうな。
「まあ、そこは譲るとしても、期末も勝てた。良かったな、何も賭けてなくて。これで一区切りは付いた。後は模試に向けてもう少し密度のある勉強をしていきたいものだ」
「ガリ勉ではないが、お前も勉強の楽しさがわかってきたようで俺としては嬉しいところだけどな。結城もだが、よく頑張ったな」
「小林に褒められる筋合いはないわよ。でも、素直に受け取っておくわ」
貼りだしを見終わった後、教室に帰るとスマホにメール。「後で一杯褒めて」だそうだ。今日あたり家によって行くのかもしれないのでたくさん褒めてやることにしよう。どういう褒め方をするかまではわからないが、久しぶりに濃厚な恋人の証をたっぷりと所望しているらしいし、呼吸が持つ限りは付き合ってさしあげるか。
授業も終えてテスト結果が次々に帰ってくる。すべてではないがテスト結果を家に持ち帰り、アカネに見せて学部内二位という成績を親の代わりにアカネに報告した。
「それは何よりだわ。神様の御利益が充分にあったってことでしょう? 私も鼻が高いわ」
「この後彩花が来るからダンジョンに潜るかどうかはわからないが、とりあえず反省会を兼ねて勉強をしに来るという言い訳をしながら来るはずだ。テストで好成績を残せた以上、彩花の親も文句は言わないだろうしな」
「そうね、この後濃密なキスシーンを見て私は神力を回復してればいいのかしら? 壁の向こう側に居たほうがいい? やっぱり直で見られてるとやり辛いかしら? 」
シモい話になると饒舌になるこの道祖神様だが、彼女のおかげであることには違いないので、せめてガン見せずに壁一枚向こうでスタンバってもらうことにした。
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