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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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9/22

第9話:駅前ダンジョン、初回

 早く目が覚めた。それ自体はいい。早く寝た分だけ早く起きる。早起きは三文の徳とも言うし、その分だけ長くダンジョンに入っていられることにもなる。フルに丸一日戦い続けることはできないだろうけど、今日はそれだけの準備をしてダンジョン探索に入ることになる。


 一応水分補給用の水は持ったし、ミネラルが不足しないように梅干しを用意してある。喉が渇いた時にも使えるし、しっかりと疲れを取ることもできる、いいアイテムだ。弁当は途中のコンビニでおにぎりを二個ほど買ってそれをお昼になったら食べよう。


 とりあえず、朝食には塩パスタではなく、ちゃんとパスタソースを使ったカロリー以外も取れるものをチョイスしておいた。最近は二人分が主流ではあるが、一人分のパスタソースも売っているのでパスタで生きている俺にとってはかなり助かる。


 ワンパンでパスタを茹でつつ、水で洗って綺麗にしたトマトソースパウチを一緒に温めて、ゆであがったら一回冷水でパスタだけ締めた後、油で軽く炒めてソースと絡めて終わり。健康優良児とはとても言えない食事だが、食えるだけマシというものだな。


 ちゃんとリビングで浮かんでいるアカネにお供えをして、青く光ると食事開始。そのお供えで目を覚ましたのか、アカネが身動きを始める。


「毎日パスタで飽きないの? 」

「飽きるが、生きていくためには食う必要があるし、一番安く腹に溜まるのがパスタだから仕方ない。今後のダンジョン活動に期待しててくれ。もしかしたらもっといいものを喰えるようになるかもしれない」

「そのためには私も頑張らなきゃいけないところね。今日は付いていくことはできないけど、精々ダンジョンの拡張に精を出すことにするわ」


 食べ終えたら片付けをして、ボディバッグではなくちゃんとしたリュックを背負い、その中に必要物資を入れていく。途中のコンビニで買い物をするのも忘れないように。後、武器は今は取り外しておいてあるのでコンビニに強盗が入るのと勘違いされる可能性は低い。


 しっかり装備を整えると、アカネに行ってきますと声をかけてダンジョンへ旅立つ。さあ、今日が本当のダンジョンデビュー戦だ。本当のダンジョンはどれだけ危険で、どれだけ刺激的で、どれだけの報酬を俺にくれるのだろうか。


 コンビニで昼飯を調達した後ノーマライズダンジョン、通称駅前ダンジョンに到着する。この場所をノーマライズダンジョン化させることによる駅前への集客効果と地元に金を落とすことを目的としているということに表向きはなっている。実際のところはわからん。


 とりあえずいつも通り自転車を停めて、受付で探索者証を見せて探索者であることを確認してもらったら後は中に入って自由にモンスター退治を楽しめるようにしてある、ということだ。俺専用ダンジョンとの違いは、他人がいるかどうかと、モンスターがどこまで出現するのか、そしてドロップ率が違う、という主にこの三点だな。


 早速地図を購入した後、ダンジョンの中へ入る。まだ朝が早いからか、それほど人がそれほど多くないからか、入り口の様子は……そうだ、武器を組み立てないと。入り口に戻って槍を組み立て直し、改めて中に入る。


 中に入った感じは俺専用ダンジョンと大差ない感じ。ここのダンジョンを参考にしたのかな? と思うような仕組みになっていた。入り込んでしばらくすると、スライムが壁に張り付いているのが確認できたので、槍で一突き、スライムを倒す。スライムは何も落とさなかったので、ここは確かに普通のダンジョンなんだな、ということが確認できた。


 しばらくスライムとの出会いが続き、六匹目でようやく一個魔石を手に入れた。うん、これは効率が悪いな。しかし、スライム以外のモンスターに関する知識はこの次に出てくるらしいゴブリンぐらいしか知識を入れていない。あまり深くまで潜るのは危険だな。浅いところで体を慣らすつもりで戦っていこう。


 スライムしか出合わない一層を抜けて二層に到着した。ここからはゴブリンが出るらしい。ゴブリンは人型なので、対人戦の雰囲気も味わうことができる。実際に対人というわけにはいかないが、人型を忌避する人にとっては越えなければいけない壁として探索者の中では有名らしい。ここで諦めて探索者を止める人もいるとかいないとか。この辺も講習で習ったな。


 すこし二層を歩いて太い道から横道に逸れたあたりで、ゴブリンが二匹現れた。二匹連れ、というのは想定してなかったな。一人で来るべきではなかったのか? まあ、これも学びの一つだ。ゴブリン二匹と対峙し、同時に二匹を相手にしないように陣取る。


 ゴブリンはゆっくりとした速度でこちらに襲い掛かってきたのでそのゆっくりの行動を素早く回避し、ゴブリンの頭に槍を差し込む。すんなりと切れたゴブリンの頭はまるで頭蓋骨がないように沈み込んでいき、ゴブリンから血の代わりに黒い何かが噴き出す。噴き出した黒い何かは返り血のように付着するわけでもなく、そのまま空中で消えていく。


 ゴブリンの一匹目が倒されて消滅していく間に二匹目が近寄ってくる。これもレベルのおかげかゴブリンがゆっくり動いているように見える。攻撃してくる右腕に持たれているこん棒を避けてそのままゴブリンと立ち位置を入れ替えて振り返っての槍で追撃。


 胴体に槍が刺さったゴブリンはその槍を抜こうと試みるが、俺が体重をかけてしっかりを深く突き刺しているので抜けるはずもなく、リーチの問題でゴブリンの攻撃で槍を叩き落とされることもなく、そのまま力尽きて消滅していく。どうやらゴブリン二匹ぐらいなら相手に出来る自信がついた。いや、まだだな。今回はたまたまうまくいったと思っておこう。慢心は禁物だな。


 ドロップは……何もなし、と。流石にこの辺りで稼ぎを得られるような楽な仕事ではないのはわかった。探索者も大変だな。これなら普通にバイトしてたほうが儲かったかもしれない。やはり普通のダンジョンの浅い階層ではそれほど儲けになるということはないらしいな。


 そのままゴブリンに体を慣らすためにいわゆる二層を歩く。他にも探索者は居るし、出会うモンスターが全て戦えるというわけではなく、戦闘中の探索者の横を通り抜けて奥へ行くことも数回。しかし、まだ階層が浅いからか、それとも通り道を歩いているからか、中々にモンスターと出会わない。それはそれで安心できると言えばそうなのだが、せっかくのダンジョン探索、モンスターか宝箱が出てきて欲しいものだ。そうすれば早く隆介への金も返せる。


 考え事をしながら地図を見てグルグル回っていると、次のゴブリンが出てきた。今度は一匹。一対一なので安心して戦える。こん棒で殴りつけてくるゴブリンに対して、サイドステップで回避して、そのスキに足元に足を置くと、ゴブリンは俺の足に引っかかって転んだ。その背中に槍を突き刺してグサグサと突き刺していく。猟奇的に見えるんだろうか。


 いや、他の探索者も同じことをしているはずなんだから、猟奇的に見えるわけではないと思うな。相手はモンスターであって人間ではない。この調子でどんどん行こう。ドロップしないわけではないけど、ドロップ率はそれなりにひくいとかんがえて、ここは数をこなしていこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一時間ほど戦って、スライム12匹とゴブリン7匹を倒せた。ペースとしてはゆっくり巡っているのでそれほど焦ってダンジョン探索をしている訳ではない。ドロップはゴブリンの魔石が1つ手に入っただけとなった。うん、やはり儲けを考えたら俺専用ダンジョンのほうがよほど効率はいい。さて、次の一時間まで何がいくつ手に入っていくのかを計算して、自分のペースというものを掴んでいこう。


 一層や二層に滞留する探索者はあんまりいない様で、みんな数人でパーティーを組んでより深く危険で、確実に金が稼げる方向へ行くみたいだ。流石に一人でそこまで行くことは難しいだろうし、探索者証取り立てで、お手製の武器と中古の防具で挑むような場所でないことは確か。


 ゴブリンを探して二層を歩き回る。どうやら同じく二層を周回してゴブリンを探し回ってる探索者はいないようだ。つまり、この階層は今は俺だけの二層になっているということだ。ある意味俺専用ダンジョンになってくれている。


 普通のゴブリンは魔石しか落とさないらしいが、それ以外のモンスターによってはドロップがあるという話だし、そこまで潜れるようにはしていきたいな。つまり、この次の層からこの層の奥にかけて、というところか。ゴブリンも色んな種類が居るらしいし、ゴブリンアーチャーなんかが出てくると遠距離攻撃を防ぐ方法のない俺には難しい話になってくる。やはりソロには限界が早く来るんだろうな。


 だとすると、俺専用ダンジョンで経験値と金を稼いで装備を新調するなり新しく盾を持つなり、武器を変更するなりと色々考えないといけない。初期投資に金がかかるのは困るな……と、次のゴブリンが出てきた。今の所二層の浅いところにいる間は普通のゴブリン、こん棒と腰みのだけを装備した緑色の汚らしいガキが出てくるだけで済む。サッとした動きで難なく倒すと、今度は魔石をドロップしてくれた。ゴブリンの魔石はいくらで買い取ってくれるんだろう。


 さあ、ゴブリンだけが出る範囲だけを今日はしばらく巡ることにしよう。下手に上の戦ったことのないモンスターを相手にして、しかも遠距離攻撃をしてくるタイプ。同時に二匹三匹相手にすることを考えると今の俺には難しい。せめて一対一とまではいかなくても、もう一人バックアップでパーティーメンバーが欲しくなるところだ。頑張って稼いで隆介の分も装備をそろえて二人で来れるならその先を考えることにしよう。


 今日のところは通常のゴブリンを倒していくことで何とかお金を稼いで帰ろう。ダンジョンの受付で買った地図にはどのぐらい奥へ行けばゴブリンの種類が増えるかが明記されているので、そっちへ近づかなければ大丈夫だろう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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