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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第86話:昔の話と今の話とこれからの話

 彩花と食事をしながら、アカネとの馴れ初めやダンジョンを作るに至った話、ダンジョンのことについてなど、解ってる限りのことを彩花に伝えた。


 打ち捨てられていた祠を修復して綺麗にしてやった話をすると、彩花は真面目に聞いていた。「私もDIYで祠を立て直して、身綺麗にしてあげれば、私にも専用の道祖神が見つかったりするのかしら?」とも言っていたが、本当にそれが道祖神なのかどうかがわからないし、もしかしたら悪霊だったりする可能性もあるのでやめておいたほうがいいと諭しておいた。


「小さい頃のお礼ねえ。なんか夢みたいな話ね」

「そうだな。でも現実にそうなってるからしょうがないんだよな」

「アカネさん元気にしてるのかしら? 祠の周りが急にまた藪に戻ってるとか、祠のある場所で工事が始まって無理矢理立ち退きを要求されてたりしないかしら」

「どうだろう。その場合は……祠の中身というかアカネのご神体を引き取ることになるのかな。アカネが緊急事態よ! と飛び込んでこない限りは安全だとは思う。そんなことになってないってことは大丈夫だってことだろうな。しばらく本業の人の導きを行って、満足したら帰ってくるよ」

「人の導きってことは、私と幹也がこういう関係になったのもアカネさんのおかげってことになるのかしらね。これもお導きの結果ってことになるのかしら」


 確かに、そうかもしれないな。アカネにダンジョンを要求しなければダンジョンに潜ることはあっても目立つことはなかっただろうし、そうすれば彩花もダンジョンに潜ろうと考えなかったかもしれない。ならダンジョンで彩花を助けるというイベントも起きなかったはずだ。


「つまり……アカネの手のひらの上で踊ってる最中ってことにもなるのか。まあ、本人がどこまでそれを自覚してるかどうかまでは解らないけどな」

「私としては……まあ色々あったけど結果的に今幸せだから良いかなって。今後ともよろしくね、幹也」

「ああ、そういえば進路どうするんだ? 」

「いきなり現実に押し戻さないでよ」


 彩花が一気に現実に引き戻され、苦笑いしている。


「幹也のほうこそどこへ行くつもりなの? 」


 期末テスト前に進路の話。まあ、出来るなら同じ大学の同じ学部へ行きたいところだからな。


「ここから通える範囲で選ぼうと思っているので、名古屋の公立か国立になるな。もしくは岐阜か三重ってところになる。出来れば一時間半以内に帰ってこれる場所が良いな。今のうちに成績を積み重ねてなんとか学費が安くて望みの学部がある所へ行ければいいとは思ってるが……」

「そういえば新しくダンジョン学部が出来る話は知ってるの? 」

「なにそれ、知らなかった。どこの大学? 」


 彩花がスマホで今年から募集するダンジョン学部の募集ページを見せてくる。


「ここならAO入試もやってるし、実際にダンジョンに潜って実績としてどこまで潜ってるかを示せれば推薦でもいけると思わない? 」

「うーん、推薦よりは特待生を狙いたいところだな。そこの大学の特待生制度どうなってるんだ? 」

「ええっとね……学部構わず成績と行きたい学部との相性確認の面接、小論文……あたりはあるわね。幹也なら軽々と突破しそうではあるけど」

「うーん、小論文はともかくとしてそれ以外は期末の成績によるところだな。これはダンジョンに潜ってる場合じゃないな、ダンジョン学部に入るためにダンジョンへ入るのを少々控えてでも照準を合わせていく必要もありそうだ。面白そうだしそこも候補には入れておこうかな」


 彩花のひょんな一言で進学先が一つ増えた。ダンジョン学部だからダンジョンに通っていればいい、というわけではないだろうし、そもそもダンジョンとは何か、どういう構造物でどのような仕組みになっていて、そもそもダンジョンの歴史とは……という理詰めの学部かもしれないし、もしかしたらフィールドワークと称してひたすらダンジョン潜ってる人が教授やってるというユニークな学部かもしれない。


 スマホで調べて、オープンキャンバスの日程を調べる。新規設立学部のオープンキャンパスがあるかどうかまでは解らないが、夏休み中に開かれていることは調べがついた。新規学部への対応は……してくれると良いんだが、この地方では他に同じダンジョン学部に該当するような学部は存在しない。関東のほうまで足を伸ばせばあるかもしれないが、ただの一般探索者である俺なんかが行っても仕方がない気がするしライバルも多いだろう。


 その点でいえば地元にそういう学部が存在してくれるのは非常にありがたい。ここなら家からも通える範囲だし、そこまで通学時間に足を取られる、というわけでもなさそうだ。


「よし、第一志望はそこにしてしまおうかな。後は適当に期末試験と模試の結果によるところが大きいだろうし、それ以上のことはまだわからない……と、新設学部の偏差値がわからないか。まあ、予想はオープンキャンパスでズバリ職員に聞いてみるのが早いかな。このご時世にわざわざ新設するぐらいだしそれなりの学生を抱えるか、少数精鋭で行くのかそこを見極めることも大事だな」

「あっさり決めちゃって大丈夫なの? 新設学部って下手な学部よりも入り辛かったりするものだって聞いたわ。うっかり高学歴ばかり集まって大学入ってから探索者やろうって人も多いんじゃないの? 」

「それならそれでこっちは先行探索者として多少のマウントが取れるようになってればいいさ。大学入ったからと言っていきなり十一層からスタートできるわけじゃないし。それに、こっちにはレベルアップという大きな味方が付いている。今の時期でこれだけレベルアップできていて学力にも差が付けられるのは大きな武器だ、これを利用しない手はない」


 わからないなら出来るだけ高得点をぶつけて進学してやろう、というコースだ。うちの学校の偏差値で上から20番に入れているならまず大丈夫だと言えるだろう。期末テストの順位は特進コースはまた別で発表されているらしいが、模試の結果は特進コースも普通科コースも平等に受け付けてくれるからな。そこでちょっと度肝を抜くようなネタを一つ提供できればいいなと考えている。


「彩花もそろそろ期末の勉強しなきゃいけないんじゃないか? また勉強会やるか? 」

「一人でも集中して勉強できるのは間違いないんだけど、私より確実に賢い教師がついていてくれるならありがたいところね。次の土曜日はダンジョンじゃなくて勉強会にしようかしら? 」

「俺はそれでもいいぞ。次もいい点とってやるっていう自信とやる気に満ち溢れているからな」


 多少の難問なら解ける、と思いたい。流石に東大入試を流暢に迎え撃てとまでは言われないだろうが、そこまで行かなくてもそこそこの大学ならほぼ首席で入学できるんじゃないか、という自信すらある。更にレベル上げに没頭すればそれはどんどん高まっていくだろうな、という自覚も出てきた。


「模試ならいくつかスケジュールあるけど……どれ受けるの? 」


 彩花が近くの予備校のスケジュール一覧を出してくれた。


「とりあえず地元だし名大模試は受けるかな。後は学校でやる模試はひとしきり。それ以外だと……難しいな。できるだけ大学を絞ってテストを受けておきたいから……」

「ここは? 」

「そこは確か試験会場が暑い。とてもじゃないが集中できる環境じゃないらしいぞ」

「そんな理由でパスして良いの? 今のうちに申し込みしないと締め切られちゃうわよ」

「じゃあ、そこも申し込んでおくか……貯金はまだ大丈夫だな。最悪、模試を受けるからって実家に連絡して少しばかり費用を捻出してもらうのもありだしな」

「じゃあ、私もここ受けよっと。申し込みはネットで出来るから楽でいいわよね」


 わざわざ予備校まで持ち込まなくても個人情報を渡すだけで申し込みが確定されて、期日までに振り込めば申し込みが完了するのは非常にありがたい。親の世代からくらべればかなり恵まれているというべきだろう。しかし、しかし、その裏で思いや願掛けの重みが薄れてしまっているかもしれない。。


 そういう点で考えれば、道端のお地蔵さまに手を合わせて志望校に受かりますように、と手を合わせる行為が時々見られるのは、やはりやることをやり切って後は神頼み……という本来の意味での他力本願を成就してもらう、という願掛けに近いものはいつになってもなくならないものなのだな、という風情を感じる。


 道祖神という存在が身近になってしまった俺ですらそう感じるのだから、世の中ではより多くの人が自分でできることはやりきって、後は他の人の不調や不運に全て任せる、ということになるのだろう。その為に願掛けに行くのだとしたら、なんとまあ罪深い行動なんだろうなあ。


「後はもういい感じかしら。とりあえず受ける模試はできるだけ受ける。そういう感じで」

「あんまり模試ばかりでも窮屈だし、模試を受けたことで成長するとは限らんからな。ほどほどで良いと思う。夏休みに差し掛かる分だけ考えておけば良いかな」

「じゃあ、これでおしまいね。振り込みさえ済ませれば後は完了するはずだわ」

「早めに振り込んでおくか……いざ当日模試があるのを忘れてない限りは大丈夫かな」


 模試の申し込みをし終えたところで彩花が立ち上がる。どうやら帰るようだ。


「今日は運動も出来たし、帰って勉強するわ。ご飯までごちそうさま。あとは……」

「わかってるよ。帰りのハグだろ」

「ハグだけじゃ……んっ」


 ハグをしてそれだけじゃ満足できないと言いそうな彩花の唇をそっと塞ぐ。普段の熱烈なディープキスではなく、唇をついばむように唇だけを吸いつくすハムハムチュー、という奴らしい。いつものでは満足できないぞ、という雰囲気を出すのにちょうどいいらしい、と何かネット散策をしている際に紛れてきた広告で読んだ。


「ん……んぅ……」


 もっと激しいのが良い、と舌を入れようとしてくるが、唇でがっちりガード。俺の唇が彩花の唾液まみれになるが、それでも舌は入れさせない。


 唇を離し、彩花の舌だけが名残惜しそうに空中に出ている。


「いじわる……でもそこも好き……」


 瞳がうるんでいる彩花が可愛い。もっといじめたくなるな。


「続きは勉強会で頑張ったら、だな。それまでにしっかり前勉強してくることだ」

「ケチね。でも、おかげでやる気が出てきたわ。帰ったらしっかり勉強して、土曜日までにしっかり予習してくるわね」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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