第81話:オーク狩りスパイラル
さて、調べものでほどほどに頭を使って胃も消化されたことで、かなり楽になってきた。そろそろ家の中へお出かけの時間かな。
昨日しっかり消臭しておいた防具の匂いを嗅ぎ、汗のにおいがしないことを確認すると再び着込んで、山賊刀を装備し、バッグの中にビニール袋数枚が入っているのを確認すると、早速夕飯の買い出しにダンジョンへ出かける。
「夕飯のオーク肉の買い出し行ってくるけど、アカネはどうする? 」
「そうね、暇だしダンジョンの拡張にでも行こうかしら。昨日しっかり知識は仕入れてきたし、モンスターについても情報や戦い方、他の探索者がどうやって行動してるか、なんかもしっかりみてきたからそれを参考にダンジョン開発を進めていくわ」
「じゃあレッドキャップまで索敵頼む。あそこを通り抜けるのだけが面倒なんだ」
「いいわよ。じゃあオークエリアまで一緒に行ってそこで別れましょ。帰りは……まあ、先に帰るならそれでもいいし、私が飽きたら先に帰ってくるかもしれないしね」
索敵ドローンを手に入れたのでレッドキャップまでは気楽に潜り抜けることができるな。目指すはオーク肉だ。三つぐらい落ちてくれると今週分の食事が浮くので非常にありがたい。
さて、早速ダンジョンに入ろう。道中のゴブリンやスライムは今の所は可能な限り無視だ。今日はオーク狩りと決めているからな。立ち向かってくるなら仕方なく倒すが、それ以外は気づかれないなら無視をしていく。オークを狩ったほうが同じ時間でも儲けが違うし、しっかりと稼いで帰るためにもオーク肉の大量保管は優先したい。
その為にはバッグも空けておく必要があるので、たとえレッドキャップが今日はスクロールを落とす日だとしても無視していく。なあに今日じゃなくてもその内落ちてくれるなら問題ないだろう。
そんな感じでゴブリン族もできるだけ無視して戦っていくと、ゴブリンアーチャーがスキルスクロールをポロリと落とした。無欲でいると落ちるものなのだろうか。またエイミングかな? と考えつつもしっかりバッグに仕舞い、先へと急ぐ。今はゆっくりスキルスクロールの鑑定をしている場合ではない。俺はオークをたくさん倒したいんだ。
レッドキャップ地帯へ来たが、アカネのおかげでこっちからの奇襲二回だけで済んだ。これはかなり楽ができたな。アカネ様様だ。後で夕飯を豪勢なものにしてしっかりとお礼を捧げることにしよう。
三層のオークゾーンに来て、ここでアカネとお別れ。
「じゃあ私は五層以降を作ってくるから、怪我しないようにね」
そういうとアカネはリザードマンの奥へ進んでいった。さて、ここからが本番だ。いっぱいオーク狩るぞ。オークのおひとりさまが暢気に歩いているのでこんにちはーとそっと声をかけながら陰ながら奇襲。一発で首を跳ね飛ばして御臨終。早速魔石とオーク肉を手に入れた。これはなかなか幸先良いな。この調子で肉をしっかり仕入れていこう。肉をビニール袋に包むと、次のオークを探す。
しばらくおひとりさまのオークを探し続けて十五分ぐらい周り、二匹出てくる場所に到着。ここからドロップが増えてくるはずだ。魔石もオーク肉も、できれば睾丸もしっかりと補充していきたい。あんまり数多く出たら……その時はこっそり換金にいくかな。
◇◆◇◆◇◆◇
三時間ほどひたすらオークを相手にし続けて、バッグはパンパン、オーク肉も八枚とかなりの数を手に入れることができた。睾丸は二個ある。睾丸とオーク肉半分と魔石を……今日中に換金に出してしまうか。日曜日だし、探索者の数も多いだろうしその中に紛れ込んでひたすらオークを狩ってた、となれば紛れて誤魔化せる可能性は大だ。
朝から真剣に潜ってたということにしておけばきっと言い訳は通るだろう。アカネには悪いが先に帰ることにしよう。今から外へ出て駅前ダンジョンに到着する頃には良い時間だ。そのまま装備を着ていれば問題なく探索帰りだと判断されるだろうし、そこそこ汗もかいているので帰ってきたてほやほや、という感じにはできるはず。
よし、そうと決まれば帰ろう。アカネを置いてダンジョンから脱出する。道中数回の戦闘を挟んだが問題なく抜けて、部屋まで帰ってきた。そのままの格好でバッグの中のスクロールだけ確認する。スクロール鑑定サイトによると、またも【エイミング】のスキルらしい。このスキルは重ねることで矢だけでなく攻撃も、自分の思った通りの場所へ狙えるようになるように補正がかかるらしいので、そのまま重ねて覚えることにする。
スキルスクロールを使うと考えて念じることで、スキルスクロールの文字が俺の中に入り込んでくる。収まった後、家に残しておくオーク肉を差っ引いて三枚だけ換金に出すことにした。睾丸が落ちてるのにオーク肉が一切換金に出さない、というのも不思議な話だからな。今日の稼ぎを背負うと駅前ダンジョンまで自転車で走り抜き、駐輪場に止めた後、入退場口のすぐ横を通り抜けて換金カウンターへ。
まだ比較的空いている換金カウンターに睾丸二個とオーク肉三枚、そして大量のオークの魔石を渡す。
「これは……うーん、オークばかりですね。相当集中して探索してきたんですか? 」
「家でもオーク肉を食べたくて。残りは自分で調理して食べようかと思っています」
「なるほど。かなり頑張られましたね。少々お待ちくださいね」
換金カウンターで怪しまれるようなことはなく、魔石の数が多かった分睾丸もそれだけ多く出たのだろう、と判断されたようだ。入退場の証拠と換金したオークの魔石の量とを照合されない限りはバレないようだぞ。あんまり頻繁に使える手ではないが、さすがに今日の稼ぎは多すぎた。鑑定が終わり、97400円が換金結果として出てきた。オークの魔石が七十個ぐらいでたことになるのかな? まあ、そのぐらいは倒していた、ということだろう。
今日の収入ほぼ十万。四時間ほど働いたので時給にすると25000円か。これはかなりぼろもうけだな。他の誰にも知られてはいけないというのもあるが、ちゃんと体を動かして儲けた金額だ。誰に向けて申し訳ないと思うことがあろうか。レベルが上がらなかったのが疑問点だが、もしかしたら10から先はなかなか上がらないのかもしれないな。次の専用ダンジョンアタックで上がるかもしれない、とは考えておこう。
家に帰り、装備を脱いで消臭。丁寧に丸洗いでも良いが……まあいいや、洗うか。明日一日干しておけば乾くだろうし、明日は早速ダンジョンに潜る、なんてことも彩花は言いださないだろう。言い出すなら明後日辺りか、水曜日あたりに俺成分が切れたから補充しに来た、なんて言い訳をしながら来るかもしれないな。
彼女か……実際にできてから思うが、居てくれてこんなに幸せなものなんだな。少々激しすぎる気もするが、その激しさを知ってるのが俺だけ、という点も更に心にぐっとくる。彩花今頃何してるんだろう。まじめに勉強してたりするのか、それとも友達と遊びに行ったりとかしてるんだろうか。
うっかり「今なにしてる? 」とか連絡してそこから付き合ってるのがバレる、という可能性もあるので連絡はしないでおくか。今はまだ、二人と隆介とアカネだけ知ってる関係で良い。もしかしたら俺たち以外の高校生探索者が目撃している可能性もあるが、広まっていない辺りを考えるとそこは安心して良いんだろう。
さて……財布から今日の稼ぎを取り出すと、金庫代わりの引き出しに入れておく。明日にでもこれはATMに預けにいって預金残高を増やしておこう。
さあ、夕食作りだ。今日は贅沢にオーク肉の一枚肉を使ったステーキにしよう。厚みもそれなりにあるし、フライパンでうまく蒸焼き風にして全体に火が通るかはやってみないとわからないが、焼肉のたれでは風情がないからな。醤油ベースのステーキのタレがまだ……よし、冷蔵庫に残っていた。賞味期限もセーフだ。これをふんだんに使って美味しいステーキを食べよう。
そして、ステーキと言えば米だ。まだ冷凍してある分から温めて、焼き始めるのはアカネが帰ってきてからでいいな。それまでに下準備を全て済ませておこう。
アカネが帰ってきたのはそれから一時間ぐらいしてからだった。
「いやー、久しぶりに集中してダンジョン作ったら捗ったわ。仕事した後の食事は格別なものになりそうね。で、今日のご飯は? 」
アカネから今日のご飯何? と聞かれるのは珍しいことだ。よほど真面目に仕事をしていたんだろう。
「今日はオーク肉の一枚肉ステーキの予定だ。レアに焼いてもいいが、ミディアムぐらいで完成するだろうと思っている」
「それは楽しみね。是非待たせてもらうわ」
「アカネが帰ってくるのを待ってから作り始めたほうがいいと思って待ってたんだ」
「あら、それは悪かったわね待たせちゃって」
というわけで早速ステーキを焼き始める。フライパンをしっかり熱しながらではなく、まずはオリーブオイルとニンニクをしっかり油と一緒に熱し、オリーブオイルに成分が移りはじめたところでオーク肉を投入。中火で二分ほど焼いたところで裏返し、蓋をして蒸らすように弱火で焼く。この焼き加減が重要だ。
中まで火が通ったころにたれを追投入してジュワーっといい音をさせながら焼けていくオーク肉がニンニクとたれの香りが合わさって、既にお腹が空き過ぎて痛い。
たれをしっかりかけ流しながら中まで浸透させ、ほどほどに蒸発したところで火からおろして皿に盛る。キャベツを千切りにして別皿に用意して、こっちにはマヨと、フライパンに残った焦げのあるステーキソースを振りかけて、キャベツにも味を絡める。
米も温めたものを茶碗に盛りなおして、完成だ。さあ食べよう。いただきます。
それほど手間もかかってないにもかかわらず、随分な量の青い光がアカネに吸い込まれていく。
「ふぅ……しっかり神力を使ってダンジョンを拡張してきた分、お腹に溜まるわね」
どうやら神力もお腹いっぱいになることがあるそうだ。それはさておき、今日はステーキだ。しっかり味わって明日からの活力にして行こう。
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