第80話:暇なる日曜日
日曜日、早速料理の開発をするべく朝から空腹のまま、どんな料理を作ってみるかを悩む。まず、定番の生姜焼きと薄切りにして肉じゃがにするのは既にやっている。回鍋肉……この辺から手を付けてみるか。キャベツはあるし、肉も昨日一晩解凍済みだ。肉を切り出して早速調理開始。昨日の鍋の余りのネギもあるからそれも一緒に使おう。
キャベツをざく切り、ピーマンを八等分ぐらいにして同じぐらいの大きさにそろえると、フライパンにごま油を敷いて温め、キャベツとピーマンを炒めてしばらくしたら一回置く。そのままごま油を少しだけ足して肉を焼き始める。ごまの香りとオークの脂の香りがあたりを充満し始めた。
すでに胃袋がこれは美味しいのではないだろうか? と疑問を持ちはじめ、空腹が加速される。酒を振って甘味噌を入れ込み、肉と絡めたところで先に炒めておいた野菜と合わせて混ぜて、全体に味をなじませる。最後に醤油と胡椒で味付けだ。味噌のいいにおいが立ち込め、早く食ってくれ、今ならうまいぞ、と料理が語り掛けてくるかのようだ。
俺流なんちゃって回鍋肉完成だ。主食は……しまった、主食のことをうっかり忘れていた。仕方がないのでパスタを使い、パスタの水気をしっかり切ると、甘味噌を足し込んで回鍋肉と合わせて回鍋肉パスタにしてしまおう。きっと世の中にはこんなレシピがあるはずだ。
多分ロングパスタではなく、ペンネやショートパスタで合わせると具材の大きさ的に丁度合うんだろうが、手持ちにはロングパスタしかない。折るか……? いや、折って食感が変わったりかえって味を損なうとイマイチなものができあがる可能性のほうが高い。ここは大人しくそのまま使おう。
でき上がったパスタを回鍋肉に絡め、よく味をなじませる。もし味が濃すぎたらゆで汁を使って薄め、薄かったら甘味噌を足して味を調整していこう。
早速でき上がった回鍋肉パスタを食べていく……と、その前に写真を撮って彩花に送っておこう。朝からちゃんと食事をとっているぞ、という証拠にしなければいけない。野菜も肉も炭水化物もきっちり取れたので、朝食としてはかなり悪くないライン。普段の自分の朝食からすればかなりのクオリティの高い一品になっているだろう。
アカネは料理中リビングにずっと浮いたまま寝ていたが、いただきますの捧げものをすると目が覚めたのか、動き始めた。
「おはよう。朝からまあまあ重たいものを作れるようになったじゃないの。その調子で頑張ってほしいものだわ」
「日曜日だから作れたってのもあるけどな。平日は時間がない。下ごしらえをしておいて後は最後の調理と調味だけ……ぐらいまでお膳立てできてれば問題はないとは思うけど」
「まあ、ギリギリまで寝てるのを早起きできるようになるのが先ね。それで三十分ぐらい時間ができれば大体一品料理ぐらいならできる時間は取れるでしょう? その時間で一品二品作って弁当箱に詰め込むぐらいはできるようになるわよ。幹也、あなた器用なんだから時間の問題だけだと思うわ」
「そう褒めてくれるとやる気が出るな。昼飯も何か一手間加えたレシピを探してそれをやってみよう。肉料理ばかりだが、肉はいくらでも確保できるからな。今から新鮮な肉を確保しに行ってもいいし、午後からでも良い。むしろ午後からかな。午前中は勉強に集中して午後からちょっと一潜りしに行くという手もある。腹を満たして適度な運動をして……というのは悪いことじゃないだろうし、その内金になるという点でも悪くない。よし、午前中は勉強、午後になったらダンジョンへ行こう。それで今日の予定は終わりっと。昨日と同じ鍋……というのはアレなので何かレシピを考えておくことにするか」
何食べたい? と自分の腹に聞きながら、とりあえず回鍋肉パスタを食べていく。甘味噌のしっかりした味付けにオーク肉の柔らかさとキャベツとピーマンのシャキシャキ感が混ざって口の中で色んな音がする。これは俺の得意料理として一品加えてやってもいいだろう。調味はある程度適当でも美味しくそれなりに作れるのがポイントだ。
綺麗に食べ終えた後片づけて、昼飯のレシピの調べに入る。素直にただの肉野菜炒めを作って、日曜日は贅沢に野菜を使っていくのも悪くない。ジャガイモの皮をむいて細切りにしておくと、少し水にさらしてでんぷんを抜き、ニンジンやゴボウも同様にしておく。全ての素材を細切りにしたところでオーク肉も塊から切り出して、細長くしておく。これでニンニクと一緒に炒めれば立派な野菜炒めのでき上がりだ。
炊飯器も稼働させよう。細かくして置いたし、肉と野菜を別で焼く以外は材料はでき上がったので、ここからしばらく勉強に集中できるな。さて今日はどの教科を攻めていこうかな。
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集中して三時間ほど勉強して、いい感じに頭の中が整理され始めた。副教科はどうしようもないところもあるので実技部分以外はパスするが、それなりの知識と教養を身に付けられたのではないかと思う。筆記テストの点数については問題ないだろう。さて……昼食の時間だ。
下準備を済ませておいた野菜類を取り出し、まずごま油で刻んだニンニクを炒めて、匂いが立ってきたところでコマ切れオーク肉を投入。色が変わり始めたところで野菜も投入。調味料を入れてそのまましばらく炒めて野菜がしんなりして、肉が完全に焼けたところで火からおろし、今日の昼飯完成だ。
ちゃんと盛り付けた後の写真も撮って彩花に「おひるごはんだよ」と送信しておく。これでちゃんと食事をしている、と安心させることができるだろう。
炊飯器からご飯をよそい、茶碗に盛り付けるといただきます。勉強中ずっとリビングで眠っていたアカネに青い光が相当量吸い込まれている。やはり、野菜から具材から一から作った食べ物はそれだけ神力の素になるらしい。
「うん、ちゃんと作っててえらいえらい」
アカネが頭を撫でるようにしてすかっすかっと頭をすり抜けている。気にせず野菜炒めを食べていると、彩花から返信があった。「ちゃんと二食とも作ってて安心。朝はパスタだったけど」とのこと。食べかけの写真をもう一枚送って「昼はちゃんとご飯食べてるよ」とさらにアピールしておこう。
彩花の返信を待つことなく料理を食べ終え、少し量が多かったかな? まあたまにはいいかと思い、ベッドに横になり少し胃袋の消化待ち。消化が終わったらダンジョンに潜ってオーク肉を集めにいこう。
その間に世の中のダンジョン事情やらなにやらの調べものをする。自分たちは普段自力で行ける階層分の調査しかしてなかったからな。いわば予習範囲が狭すぎた、というところだ。専用ダンジョンにご用意されてないのもその理由の範囲ではあるが、この先どんなモンスターが出てくるのかを考えておいても損はないだろう。
前に六層ではスケルトンが色々出てくることは調べたな。最初は普通のスケルトン……人体模型が剣と盾を持ってるような感じのモンスターが出てくるのだが、奥へ行くとスケルトンの太った奴、こいつは剣ではなくこん棒を持っているらしい。それからスケルトンアーチャーが居て、遠距離攻撃もしてくるようだ。
六層を乗り越えた七層では、少し汗ばむマップとなり、気温が上がる仕組みになっているらしく、サラマンダーという炎を噴いてくるモンスターが出てくるらしい。対抗するには炎そのものを喰らわないようにするか、炎に耐性のある素材でできた防具や服装、それからサラマンダー自身が落とすスキルスクロールの【炎耐性】などの取得が効果的らしい。
サラマンダーしか出てこないので戦い方さえ身に付けていれば苦戦もしないし、それほど数多く同時に出会うことはないらしいが、水分補給が必要になるのでしっかり水分は持っていかなくてはならない、と注意事項が記されていた。その分荷物が重くなるな……ちゃんと考えていかないと苦戦するマップなのは確かだろう。
八層ではまたカラッと乾いた冷えた階層だ。涼しくなって良いんだが、その分体温は下がり汗は蒸発していくので、また水分を持っていかれるんだろうな。そこでは二種類の蝙蝠が出てくるらしい。ブラッドバットとビッグバットというらしい。空中戦を仕掛けられると面倒だな。
九層は温度は低いが湿度が高いじめじめマップで、出てくるモンスターも色々いるが、全てマイコニドという名称で統一されているキノコ系のモンスターが出てくるらしい。それぞれが胞子を振りまいて、しびれだったり喉に来る毒を振りまいたりと様々な状態異常を振りまいてくるようだ。
喉に来る毒は喉スッキリスプレーで洗い流せるし、胃に入った段階で消化吸収できる毒だそうだが、しびれのほうはしばらくしびれが取れるまで時間がかかる様子。ダンジョン内の実況中継でも時々痺れを感じて動けなくなる探索者の様子が映し出されている。
これも胃に洗い流せばしびれは段々取れていくらしく、八層に続いて水分が必要なマップとして注意事項が書かれている。八層九層は水分が大事……と。二リットルのペットボトルに薄めのスポーツドリンクの粉を混ぜ込んでおいてうがいするように水分を取っていけばいいようだ。
そして区切りの十層。十層には一層へそのまま転移してくれるワープポータルがあり、直接一層に、または直接十層に移動できるような設備が整えられているらしい。原理は未だ解明中らしいが、とにかく現象の結果として、一層に瞬時に戻ることができるシステムが用意されている。
そしてこれは十層のボスを倒さなくても十層に到着した時点で扱えるようになり、ボスを倒さなきゃ使えない、というわけではない。つまりは一層から十層に直接ワープして、そこから改めてボス狩りの待ちに並ぶことができるということでもある。安心設計なんだな。疲労困憊の中で十層にたどり着いてそこでボスを何とか倒してようやくワープポータルを使えるようになる、というわけではないのは有り難いところ。
とりあえず食休み中に調べた内容はこんなところか。後でノートか何かにまとめて、隆介とも彩花とも共有できるようにしておこう。
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