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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第79話:土曜は換金の日 5

 アカネも無事合流したことだし、そろそろ帰ろうかな。今の時間から逆算して、真っ直ぐ帰って換金に並んで……と考えると、丁度薄暗くなり始めるぐらいの時間で戻れるだろう。今日は換金する物も大量にあるし、帰り道にまた何かしら拾うかもしれない。


 それを見越して満タンまで荷物を持たない間に帰るのも探索者としての秘訣というか、ちゃんとドロップしたものは持ち帰る、というマナーの問題だな。


「さて、そろそろ帰るか。目的のものは手に入れたし、目的の行事は果たした。後は無事に帰るだけがダンジョン探索だな」


「まだ早い気もするけど……五層まで来てるし、帰り道にそれなりに時間がかかりそうなのと換金作業の時間を考えたらちょうどいいかもしれないわね。じゃあ帰りましょ」


 五層から四層へ戻り、リザードマンと数戦。無事に撃破し魔石もちゃんと手に入れて、ちゃんと帰りの分は開けておいたのが功を奏したって感じだ。やはり帰りの分は空けておくに限る。


 三層に戻り、オークとまた数戦。オーク肉を落としたのでビニール袋に入れてちゃんと魔石と混ざらないようにしておくと、一気に稼ぎが2000円分増えたと喜ぶところだ。家に持って帰っても消費しきれないし、彩花が肉が欲しいなら家に直接取りに来ればいいのでそれでいい。今日のところはちゃんと換金に出して、お互いの現金として保持しておくようにしよう。


 お金はいっぱいあったほうが幸せだし、金があって困ることはここまでの人生ではなかった。おそらくこの先もないだろう。金がなくて塩パスタでしのぐことは数あれど、金があって塩パスタでしのぐことは寝坊した時ぐらいだ。


「今日の夕飯が楽しみねえ。何作ってくれるのかしら」


「そうだなあ。また鍋でもしようかな。肉はあるし、野菜さえ買えば手軽にできるのもいい。野菜を刻んで順番に茹でて鍋の素だけ放り込んでしまえばできるのもなかなかのポイント。ちゃんと今日動いた分のカロリーも取れるし言うことなしだな」


 そろそろ暑い季節だが、そういう時でも鍋というのは悪くない。


「主食は? 」


 彩花が確認を取ってくる。主食か。ジャガイモを放り込んでこれが主食と言い張ることもできるが……


「鍋……パスタ? ご飯炊くのはちょっと面倒くさいから、パスタ茹でて残ったゆで汁で栄養分を逃すことなく食べるのも大事かもしれない」


「まあ、お鍋するならちゃんと栄養素は取れるし私はそれならいいかなって」


「俺の栄養分、そんなに大事か? 」


「大事よ。いつも元気でいてほしいもの」


 レッドキャップエリアを通過しながら夕飯談義。レッドキャップが居ない所を通っているのもあるが、のんびり帰り道に差し掛かっている他の探索者が引っ掛けてくれているおかげで戦わずに抜けることができている。


 ゴブリン族はさすがに手が出る。重ねて拾いたいスキルもあるし、スキルスクロールのドロップ率の低さを考えたら駅前ダンジョンでも数を狩っておいたほうがいいのは間違いない。少しばかり討伐に集中して魔石を五、六個手に入れるとさすがにバッグも一杯になってきた。この後普通のゴブリンを相手にする可能性もあるが、その場合は彩花のバッグに入れてもらおう。


 ゴブリンとスライムを通り抜けて、退場時にはそれなりの人だかり。やはり早目に戻っておいて正解だったか。土曜日の夕方は混む。もっと遅くするか、もしくはさらに早めに帰るかしないと混雑に巻き込まれるな。


 退場待ちに五分、換金待ちに三十分、換金そのものに十分、と充分な時間を待たされてしまい、結局予定よりほぼ一時間遅れで換金を終えた。もう周囲は暗くなり始めている。


 換金待ちの間にも「今日はえらく時間がかかるな」「この時間帯は混むからしょうがない、稼いで良い飯食って帰る奴が多いからな」等の貴重な意見を聞くことができた。


 駐輪場で軽く話をしながら家への道をちょっとだけ急ぐ。


「いやー、今日は儲かったな」


「そりゃあれだけ戦っていればね……睾丸も出たしオーク肉も出たし、金額も良い感じ。このまま戻るの? 」


「装備抱えたまま買い物には行きたくないしな。彩花も着替えてから帰るだろ? 」


「そうね。次に用事があるとしたらあなたのダンジョンだし、あなたの家に置かせてもらってもいいかしら」


「元よりそのつもりではいるし、ちゃんと洗うときは洗うし匂い消しだけで良いなら消臭スプレーを吹きかけておくよ」


 アカネは今の所無言で着いてきている。ボーっと待っているうちに飽きたのか、それともダンジョンをどう改造しようか悩んでいるのかは解らないが、何かしら考えることがあるんだろう。


 家に着いてお互い装備を外し、ちょっと汗をかいたところで……ふと背中に柔らかい感触。彩花が背中に張り付いている。


「前に回ったら? 」


「……そうする」


 前に来た。そしてレベル5探索者の全力のハグを受ける。こちらもレベル10探索者の全力のハグをしたいところだが、最悪体に何かしら負傷をさせるといけないので徐々に力を込めていき、このぐらいかな? というところで力のセーブをする。


 やっぱりハグするなら前からのほうがいいな。胸板に胸が当たるし、柔らかいしうなじのいい匂いが立ち上ってくる。ちょっと汗のにおいのほうがつよいが、それでも一日動いたとは思えないような髪の香りが鼻腔を刺激する。


 これが幸せの香りか……さて、長めのハグで幸せを堪能したところで、買い物に出かけよう。


「さて、鍋の材料を買いに行かないとな。彩花も遅くなる前に帰……」


 別れの言葉をキスで防がれる。そして思いっきり舌を入れてきている。これは対抗せねば。舌を絡めながら、舌に巻き付けてくるような激しいキスを求める彩花。普段の学校では絶対に見せない、二人……いや二人と一柱だけの時の激しい感情の応酬が見て取れる。こんなに情熱的な女の子が好きでいてくれるなんて幸せなことだな。


 そのまま舌を絡め合い続け、一分ほどしてお互い唇を離す。


「ぷは……」


「ほえ……」


 息を止めていたわけではないが、頭が真っ白だ。軽い酸素欠乏症から深く深呼吸し、もう一度だけ軽くキスをする。


「ん、んぅ……」


「これで来週も頑張れそうか? 」


「うん、大丈夫。足りなかったらまた補充しに来るから」


 後ろを見ると、アカネがパタパタとワンピースを仰いでいる。何を言いたいかは伝わってきたのでもう何も言わないでおこう。


「じゃ、ちょっと私は野暮用があるから結城さんについていくからよろしくね」


「家に来るの? いいけど、幹也も一緒に来るの? 」


「いや、なんかアカネだけ用事があるらしい。彩花の家を覚えておけば彩花のことも多少わかるようになるかもって話らしいから。俺が行くのは少々ハードルが高い」


「そう……まあ、他の人には見えてないんだし問題ないわ。ついて来ればいいわよ」


 アカネと彩花は家に戻っていった。アカネが迷うことはないだろうから、家を突き止め次第戻ってくるだろう。オーク肉のレンジ解凍をさせつつ、その間に俺は買い物に出かける。


 スーパーにつき、買い物かごを取って今日の鍋の具材と、明日からしばらくの献立を考えていろいろ買いそろえた。今日の収入がなくても買えることは解っているが、収入のおかげで普段よりお高い白菜なんかにも手を出せる。


 買い物を終えて家に戻ると、アカネはもう帰ってきていた。意外と移動速度早いんだな。


「ただいま」


「おかえり。ゆっくりだったわね。必要な物は買えたの? 」


「ひとしきりな。金持ってるとやっぱり食材を買うにも余裕が出てくるのは嬉しいところだな」


 残ったお金の内、使わない分は金庫にしている引き出しに入れて管理。その内ATMに預けにいこう。大金を家に置いておくのもちょっと防犯的な意味であまりよろしくない。やはり銀行に預けておくのが無難だろう。


 そこそこに解凍が終わったオーク肉を薄切りにしていって用意をすると、食材を切り出していく。


 今日は辛い系の鍋にしようかな。何個かあるうちの鍋の素ブロックからチョイ辛チゲの素を取り出し、白菜、ネギ、豆腐、キノコを煮えにくい順番に茹でていき、別鍋で茹でていたパスタを投入。パスタのゆで汁で水分を増やした後、最後にオーク肉を投入して鍋の素を入れて後はしばらく茹で上がるのを待つだけだ。


 でき上がった鍋を一人分鍋から色々具材を取り出して、いただきます。鍋の素を使っているとはいえ具材も肉も自力で作った一品だ。それなりに多めの青い光がアカネに吸い込まれていく。


「暑いのに辛い物を食べるわけ? 」


「せっかく汗もかいてるしな。もっと汗かいて、新陳代謝を良くした後風呂でゆっくりすると気持ちいいんだ。それに辛い物は嫌いじゃないしな」


「なるほどねえ。お風呂の予約はしたの? 」


「おっと、忘れてた」


 早速風呂を入れて、その間にハフハフと食事をする。鍋全体にちりばめられている唐辛子の破片が舌に絡みついて体の内側から熱い何かをほとばしらせていく。頭の毛穴が開き、そこから汗が直接流れ出ているかのように汗が出始めた。うん、この汗がまた気持ちいい。


 この汗を大量に流して、食べ終わった後そのまま風呂に直行して洗い流せるのも更に良い。洗い物なんて後でいいのだ。今はただこの汗の気持ちよさと、辛い中に残るオーク肉の脂の甘味を存分に楽しみ、口の中で甘さと辛さが同居し、そして離れ離れになってそれぞれの舌の上でまた辛さと甘さが融合し合う。


 ふぅ……一気に食べ終えてしまった。やはり鍋は暑い時でもいけるな。顔からダラダラと流れる汗を洗い流すためそのまま風呂へ直行する。汗をしっかりかいて脱ぎにくくなった服を無理矢理ひっぺがして洗濯機にぶち込むと、少しぬるめにしておいた風呂へ体を洗ってから沈む。


 さて、今週と言わず来週分も金が溜まったぞ。しばらく換金しなくてもいいぐらいには金はある。ちょこちょこオーク肉を採取しに行くだけでも問題ないだろう。そのオーク肉すらかなりの量が溜まっている。風呂から上がったら洗い物を終えた後肉料理の幅を広げるために勉強でもするかな。


 しっかりと汗を洗い流し、冷水をビシャッと浴びて毛穴を閉じた後、風呂の掃除をしながらこの後の今日の予定を決めた。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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