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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第264話:インスタンスダンジョンは深く、深淵はこちらを見ている

 そのまま二、三、四、五層と彩花と二人で別れながら行く道を探していく。二人で手分けして探し、階層も浅いことから確実に手早くダンジョンを進んでいく。モンスターがいない間に探索するダンジョンは物悲しく、ちょっと物足りなさがある。なにもくれないとしてもモンスターがいるほうが確実に暇はつぶせるし、二人でバラバラで探索するのはちょっと不満。


「あ、幹也? 次への道見つけたわ。さっき分かれたところから十分ぐらい。私が行った方向までついてきてくれればそこから先は案内するからよろしく」


 あっちが正解だったみたいだ。六層へ向かうのは彩花のほうが先に道を見つけたようだ。ここまで、かなり階層間の間隔は短い。どうやら大きいダンジョンではないらしく、小さめのダンジョンであることは確かなようだ。


 彩花と合流して六層へ到着し、数日ぶりのスケルトンと対面できるかと思いきや、六層も綺麗に掃除しつくされているらしい。七層、八層と、お互いソロでも問題なく通過できるんだが。特に七層だな、サラマンダーが綺麗になっていればかなり楽にできるな。


 彩花と合流し、灼熱の七層へ到着する。相変わらず長居をしたくないマップなので、素直に通り抜けたいところ。二人で最速で動きながら、汗をかきながら十五分ほど歩きまわり、無事に八層にまでは到着した。


「ふぅ……何度通り抜けても七層はいい気分がしないな」


「ここまで無収入なのも問題だけど、何かしら倒して少しすっきりしたいわね」


 八層のモンスターは……ここも相当綺麗にされてるな。蝙蝠たちの声は耳では聞き取れないのでどうしようもない。羽ばたきぐらいは聞かせてくれていいんだけどな。ここのモンスターは必ず魔石を落とすので、ここを綺麗にしない探索者はいないだろう。


 ここもはずれかと半ばあきらめながら歩いていく間に、一匹だけビッグバットが飛んでいるのを見かけた。今日の収入は最悪これだけ……と思って倒してみた。確実に手に入る魔石を片手に、そのまま九層へ向かう。どうやら周囲にも離れたところにも、聞き耳を立ててみたが確認できないので、もう八層も綺麗になった、と考えたほうがいいだろう。


「また次の道探しか……じめっとしてるほうへ向かえばいいんだよな」


「地道に探すしかないわね。今日は……収入は今のところ900円ってところね。普段十分稼いでるから時間の無駄に思えてきたわ」


「まあ、バイトだと思えばそうなるが、人助けと職務を果たすという方面で言えば、ついでに小遣いがもらえると考えれば割には合わないとも言い難い。言い難いが……さすがに歩くだけで900円では、インスタンスダンジョンの様子を見るには心もとないな」


 聞き耳を立てると、ほかの探索者の歩く音がほのかに聞こえるので、俺たちと一緒に迷っている探索者がいるらしかった。


「どうやら御同輩がいるらしい。あっちの足音が聞こえなくなったら正解は向こう、ということになる。こっちはこっちで、目でも耳でも探すか」


「そうね……とりあえずうろついて探すしかないわね」


 狭いダンジョンのおかげでそこまで苦労してダンジョンを駆け回る必要はないんだが、このモンスター密度の薄さを考えると、もしかしたらモンスターの数が異様に多くて狭いダンジョンだったのかもしれないな。


 クイックインスタンスではないけど十分にモンスターが多く、リンクしていくならば最初に潜り込んだ探索者には相当の負担がかかっていたんだろうな。前半戦だけで疲れ切って帰ってしまった可能性すらあり得る。そういう場合はお疲れ様、と戦果のほうを見せてもらって納得されるのかもしれない。


 そこまで歩き抜ければもう仕事をしっかりした、といえるのだろうが、後ろから追いかけてくる探索者にとっては、そのまま歩き抜けて休憩せずに踏破してもらいたい、という空気になったのだろうか。それとも、今からの分を残しておいてくれてありがとう、というべきなのか。まあ、大学ダンジョンに一から潜ってるほうが明らかに早く稼げるのは確かだろうな。


 しかし、暇だ。早く次の階層は見つからないものか……と、なんだかじめっとする空気が周りに漂い始めた。若干紫じみた地面に変化していき、明るさが少し暗くなる方向を見つけた。こっちが九層だな。


「彩花、次への道を見つけた。こっちだ。最初に分かれた曲がり角から右、左、左、まっすぐ、でたどり着くはずだ」


 彩花にスマホで連絡をしてしばし待つ。十分ほどして彩花と合流。合流するまでにしっかり休憩させてもらったので、十層までたどり着けたら今度は彩花に休憩してもらおう。


 九層のマイコニドはゼロというわけではなかった。ドロップ品として買い取ってもらえないキノコがドロップする、というのもあるが、毒やしびれを受けて進捗が悪くなるのを嫌って、モンスターとして居残りになる可能性はあるってことだが……これはキノコ鍋でもしてせめてもの慰みにしろということだろうか。


「キノコはいれども……か。まあ枯れ木も山の賑わい、キノコも森の賑わいというところか。マイコニドだけはそれなりに残ってるようだぞ」


「何もないよりはましよね……キノコだけど」


「魔石も落ちるかもしれないからな。まあ、ここまで来たら休憩がてら奥まで乗り込むことも難しい話じゃない。十層でいったん外へ出て、外の空気を吸って休憩してから再突入だな。さすがに歩きどおしで十層まで来たとはいえ、疲れる」


「そうよね。ダンジョンの中で休憩する必要もないわけだし、今ならまだ大学のコンビニも……空いてるわね。急ぎで来た分ゆっくりできるわ」


「さて、そのためにもまずは十層にいかないとな。さて、十層はどっちかな……と」


 マイコニドが時々現れるということは、こっちは正解の道じゃないな、という判断をしながら道を選んで歩いていくので、九層でそれほど迷うということはなかった。逆に言えば、九層でもっと掃除をする必要はあったのではないか? という気がしないでもないが、今の自分たちの戦力を考えるに、ここでプチプチとモンスター退治をするよりももっと奥へ行ってモンスターと戦うほうが理にかなっているのだろうと思う。


 前なら喜んで九層でも十層でも喜んでモンスター退治に精を出していたんだろうが、さすがにソロで十二層まで行けるだけの戦力が二人もいるんだ。九層でうろうろしているわけにはいかない。自分の実力にあった場所へ行く必要がある……と自分に言い聞かせ、そのままモンスターの少なさそうなほうへ進んでいく。


 九層に到着してから二十分ほどで十層への道の合図である、石畳に地面が変わり始めた。そして、いくらかの人の声みたいなものもする。どうやら、十層まで切り開いてきた探索者がいくらかいるようだ。


 その人の声のほうへついていってみると、見慣れた探索者……というか学友を見つける。


「朝日奈、お前こんなところで何やってんの」


「やあ本条君、今日は大学内の探索者サークルのパーティー実習に参加させてもらってるんだ」


 4限は確かに朝日奈は別講義だったのは覚えている。まさかのところで再会、というところになった。朝日奈がそこまでダンジョンにご執心だったとは気が付かなかったな。


「探索者サークルに入るのか? いくらインスタンスで先達が先にほとんどのモンスターを倒してくれてるとはいえ、十層まで潜り込んでくるのはかなりまじめにやる気ではなければ難しいと思うんだが」


「どうだろうね。僕としては大泉先生の手助けになるならそれも悪くないと思っているよ。本条君は結城さんと二人で突破してきたのかい? すごいね」


「ほとんどモンスターはいなかったんでな。キノコが今夜の鍋に花を添える程度にしか収入を得られていないのが実情だ」


「じゃあ、休憩したらもうちょっと奥まで行くんだね。僕らはみんながどうするか相談してからかな。でも、今日は体験ということで入らせてもらっているから、危険なことはしない、ということでここより奥には進まないかもしれないね」


 朝日奈は冷静に考えているらしく、俺たちとたぶん一時間半ぐらいしか違わないにもかかわらず、それなりに疲労しているらしいことを見ても、十層までの探索者はそんなに集まらなかったのではなかろうか。


「もしかして、人少なかったのか? ここを見る限りはそんな風には見えないが」


「むしろ、朝日奈君たちが頑張ってきてた感じにも見えるけど」


「まあ、半々ってところかな。ほかにもちゃんと探索者もいたし、探索者サークルも三パーティー出してそれぞれに新人一人くっつけて……っていう感じかな。もちろん僕は新人のほうだけれど」


「なるほどな……お、ちょうど呼んでるみたいだぞ、行ってこい」


 朝日奈を呼ぶ声が聞こえたので、朝日奈に教えると、朝日奈はそちらのほうへ向き、合図を送った後、こちらに向き直す。


「どうやらここでいったん解散するかも。それじゃ、また授業でね。明日休みだからって本条君も結城さんも無理しないでね」


 それだけ伝えると、朝日奈は去っていった。


「朝日奈君、一気に引っ張られて大丈夫かしら。自分で十層行けたからってそれを鼻にかけなければいいけど」


「そういうキャラじゃないからな。安全率は充分に取るだろうし、探索者サークルに入るとしても一からみっちり教えられるだろうから、そのほうが本人にとっても安全だろうな」


「……そういう意味では私たち、よく今日までやってこれたわね」


「力で無理やり押しとおってきたからな。今日もこの後は力押しで突破することにしよう。とりあえずコンビニでちょっと休憩かな。そのまま朝日奈達についていっていったん外へ出て、一休みしたらまた中に戻ろう。もうしばらくはダンジョンも残っているだろうし何より稼いで帰りたい」


「そうね、さすがに900円だけ持って帰れ、ではあまりに寂しすぎるわ」


 とりあえず念のために持ってきていたゼリー飲料をそのままに、いったん学内のコンビニまで戻って数分、ホットスナックとクエン酸ドリンクをその場で食べて、少し休憩がてら歩いてインスタンスダンジョンまで戻る。さあ、インスタンスダンジョンでは、十一層以降に行くのは初めてかな。どこまでの深さができているかはわからないが、潜れるところまで潜ってしまうのがよさそうだ。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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