第187話:早めの帰宅と誰もいない部屋
家に帰宅して久しぶりの一人タイムで散々賢者モードに入った後、晴れやかな顔をして朝起きる。昨夜は久々に盛り上がった。アカネが少女の姿でいることもあってか、罪悪感でそれどころじゃなかった日常だが、久しぶりの感触に、まだまだ衰えるには早いということと、これが彩花に向かい始めるのか……ということも同時に考えることになる。
現段階でこれなのだ、これに加えて【精力絶倫】まで覚えてしまったら一体どうなってしまうのだろう。そしてどこまで頑張れてしまうのだろう。衰え知らずで朝まで……で済むとは思えないな。おそらくレベルが上がっている影響もあるのだろうが、それに輪をかけて今必死に我慢しているところだというのを考えると、全てが終わった後の二人での愛の確かめあい、というのはそれはもうすごいものになるだろうな。
彩花も同じように欲求不満を爆発させているのかと思うと、あっちも家族の目があって大変だろう、という同情心が湧く。彩花自身もレベルが高く、そのぶんそっちの欲求も強くなっている可能性が高いのだ。お互いにかなりのレベルで高まり合っているのも確か。
これは難題だな……他の彼氏彼女がいる受験生も同じ思いを募らせて頑張っているのだろうか。それとも、お互い息抜きとして欲求不満を適度に放出しあっているんだろうか。
よそのカップルのことは解らないが、こっちは受験が終わるまで我慢、ということにさせてもらっている。もしかしたら、欲求不満の解消にしても実は俺だけがこっそりしてて、彩花には悶々とした気持ちを抱かせ続けているのかもしれないな。それはそれで……焦らしプレイとしては悪くはないかもしれないが。
まあ、それはそれとして新春から長めの賢者モードに入ることになったわけだが、やることはもう他になくなった。ヤることも終わったので後は勉強に打ち込むのみか。ちょっと早めにご飯だけ作っておいて、温めればいつでも食べられるようにしてから集中して勉強できるようにしておくか。
久しぶりに火を入れる台所に……そうだ、年末に食べ物は全部綺麗に片付けておいたんだった。食べるものは……パスタはあるな! よし、今日もパスタをしっかり食べよう。ちょっと多めに作って、お腹が空いたらすぐ摘まめるように茹でておき、ソースと馴染ませてレンジの中へ入れておく。これで後はお腹が空いたときに温めて食べればいいな。
さて、念のため彩花には帰宅したことを伝えておこう。今からならうっかりあけましておめでとうとあいさつしに来ても大丈夫……じゃない、アレな匂いがこもっていたりしないだろうか。ちょっと勉強前に換気をしておいて、空気を綺麗に冷たい外の外気と入れ替えた後、ゴミ箱の中身をゴミ袋に移し替えた後、ゴミ箱に消臭スプレーを軽くかけて、匂いの抹消を試みる。
大体匂いが消え失せ、部屋の暖かさも消えてしまったところで改めて暖房を入れ直し温まるまでの間布団をかぶって寒さをこらえておく。においの元を部屋から移して空気を入れ替えたことで、アレな匂いは消え去った様子でこれで一安心。いつ彩花がうっかり部屋まで来ても問題ないな。久しぶりのアレだったのでかなり濃い匂いを充満させていたが、発散できたし健康にも良い感じになって何よりだ。
さて……色々と気を取り直して勉強の再開だ。共通テストに向けて過去問をひたすら解きまくろう。7教科9科目。どこから攻められても点が取れるよう均等に学んできてはいるものの、二次試験で数学と理科に大きめに配点が振られている。理系色が強いということなんだろう。
そんなに理系に割り振った学科なのかな……とも思うが、合法ロリの研究はもろに理系だからそれでいいのかな。他の大学でどういう扱いになっているか、配点から区別するようにしてみよう。
他の大学のダンジョン学部も見回ってみたが、どうやら理系のほうが多いらしい。世の中は理系を欲しているようで、そっちのほうもダンジョンなのに理系文系関係あるんですか? 等の質問箱が飛び交っていた。
回答としては、ダンジョンの探索理論や深部探索時の補給ペース等を考えるのは荷物の管理、補給物、それから色々の世話なんかを考えるとある程度数字に強くないとやってられないし、収入の配分や経理、それからその他いろいろについても数字が付いて回るため、理系に強い人種が募集されているのは確か。
しかし、それ以上に肉体的な強度を求められるので、理系だからダンジョンに単純に潜れる、と解釈するのは危険だ、という意見がつけられていた。
後はダンジョン関連の仕事についている人曰く、ダンジョンドロップ品の鑑定や品物としてどれほどの価値のあるものがあるのか、それらを加工する時にどんな加工を施すのかなどで数字と喧嘩することが多く、その点からも理系のほうが向いている、という話であった。結局理系で良いらしい。
俺としてはどっちでもかかって来いというイメージだが、ここからはある程度理系に絞って勉強をしていくのも有りかもしれないな。どうせ落ちたらここで終わりなのだし、共通テストで良い点を取れても二次試験で落ちたら一緒だしな。その分で言えば、ここから理系科目を伸ばしていくのはありなんだろう。
よし、共通テストが終わったら集中的に数学全範囲と物理化学あたりで迎え撃つことにしよう。その前に共通テスト向けの勉強だ。ひたすら過去問を解いていき、全部を暗記するつもりで行こう。同系統の問題が出ても対応ができるように、公式も頭に叩き込む。今の俺ならそれらが……できる。
決して侮る意味ではなく、今の自分の実力でどこまでできるかを考えた上で、どこまでもできそうなぐらいのまだ余裕あるオツムの容量と回転をフルに回し、どこまでできるか、どこまで行けるかを試していくしかない。浪人する気は一切ないのだし、一発勝負でどこまで出来るかの緊張感が俺の臓腑を掴んでは振り回すような圧迫感を覚えさせる。
冷静になろうとすれば冷静にいくらでもなれるが、あえてこの失敗できない出来事に対して焦りを覚えようとすると、途端に胃が痛くなってくる。受験ストレスってのはこうやって発生していくものなのか。レベルが上がって以来、ある程度の物事を第三者視点で俯瞰できるようになった今、受験ストレスのようなものは意図的に発生させる以外では感じ取ることがない。
もしかしたら内臓の強化や精神的な器の大きさの広がり方にまでレベルアップの作用が働いているのかもしれない。かといって、彩花にそんな感じがするんだけどどう? なんて聞いてみて、彩花が受験ストレスの真っただ中にいる可能性がある。
それが原因で嫌われることになったりするかもしれないからな。迂闊に人に聞ける話でもないので、全てが終わってからそういえば……という感じで思い出したように話してみよう。ことが終わった後でなら、いくらでも反省会はできるからな。
さて……彩花に家に戻ったとメールだけしておくか。遊びに……いや、勉強しに来るかどうかは置いといて、学校が始まる前に一回ぐらいは顔を合わせておきたいしな。
メールを送ると、「明日辺りに陣中見舞いで色々貰った物のおすそ分けに行くわ。親には交渉済みだから気にせず受け取ってね」と返ってきた。
どうやら、彩花のご家族には好意的に受け止められているらしい。なんだろう、俺と付き合い出してから成績が上がったせいなのかな。もしかしたら大学へ合格した時に、一緒に祝われたりするのだろうか。それは彩花の家族の中で祝ってくれるだけで充分だとは思うんだが、その辺は向こうはどう思っているのか、後で彩花からそれとなく聞き出してみるか。俺のことどう思われているのかとか、話しているのかどうかとか。
とりあえず「あんまりそういうのは気にしなくていいんだけど、受け取らないのは返って失礼にあたるかもしれないから今回は受け取っておくことにするよ。次回からは本当にいいからね」と、メールを送り返しておく。
しばらくするとメールが返ってきて「多分幹也も喜ぶものだから期待して待ってなさいよ」とな。俺が喜ぶもの……パスタソースの詰め合わせセットとかだろうか。それは確かに喜ぶが、俺がパスタ大好き男だと彼女からも認定を受けるのはちょっと……切なさがあるな。パスタ以外も食べるんだけど。
さて、今日は昼飯をまともに食いたい気分なので買い物に出かけよう。肉じゃがでも作ろうかな。そのころにはアカネも帰ってくるだろうから、アカネに俺のお手製の美味しい肉じゃがを味わってもらって新年から美味しい思いをしてもらうことにしよう。
さっそく買い物に出かけて、牛肉含めて野菜と具材を色々と買い込む。今日から数日分の食材も買い置きしておきたいし、米こそあるものの、米に合わせる食材も今のところない。ああ、卵も買っておかないとな。卵を落とすモンスターとかいないのかな……運んでいる間に割れそうだし、ドロップとしては微妙ではあるか。
さて、一通り買い物を済ませて帰ったら肉じゃがを二食分ぐらい作って食べまわして使うか。今日の昼と夜は肉じゃが、そう言うことにしておこう。
「ただいまっと」
「おかえりー」
アカネが帰宅してきていた。思ったより早いな。
「お、帰ってたか。ゆっくりできた? 」
「そうね、久しぶりの祠でゆっくりはできたわ。買い物に行ってたみたいだけど、何を作ってくれるのかしら。私の可愛い信者の最初の捧げものに期待しておこうかしら」
「肉じゃがを作る。牛肉で、しっかり煮込んでジャガイモに味しみのしみにしたやつをお出ししてやろう。人参とインゲンも買ってきたから彩りもしっかりつけるぞ」
「あら、それは楽しみね。ふむふむ……明日は結城さんも来るらしいし、お土産に期待しておくことにしましょ」
どうやら明日彩花が来ることを俺の頭から読み取っていたようだ。今考えていること以外でも読み取れるようになった……ということはアカネもそれなりにレベルアップをしているらしいな。
「そうね。ちなみに読み取ったのは幹也の頭ではなくて、少し遠いところにいる結城さんの頭のほうよ。距離の制限がある程度無くなった、というほうが正解に近いわ」
「スマホ要らずで頭の中身を読めるようになったのか。それはまた便利だな……ん? ってことは今彩花は俺のことを考えてるのか」
「お幸せでいいわねー」
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