第168話:大泉ゼミ再び
合法ロリの説明が終わり、次の教授、准教授の説明が始まる。次は中谷准教授の話らしい。きっとまた、ダンジョンロジスティクスの話になるんだろう。資料と話す内容を抱えた合法ロリが舞台袖に消えていき、そして物陰で深呼吸をしているのが見える。お疲れ様。
中谷准教授はしっかり自分のスライドと話す内容を叩きこんでいるのか、淀むことなくスラスラと自分の研究分野であるダンジョンロジスティクスについて説明、そしてぜひともこのシステムを実用化するダンジョンとして、大学構内にある物をそのまま利用してサンプルとして使っていきたいので今大学側に交渉中であることを知らせてくれている。
「……というわけで、実現可能性は大学側がこの仕組みを理解し、認めてくれるかどうかにかかっています。その上でテスト運用し、運用の結果を再構成してより良い形として再度調整して……というPDCAプランをうまく活用してより合理的なギルドとダンジョンの運営をしていけたらいいなと思っております。以上で説明を終わります」
中谷准教授が説明を終えて、次の教授にバトンタッチする。あと二人いるらしく、どちらもダンジョン研究としては大事なことなんだろうが、どちらかというとフィールドワークや各ダンジョンの浅い層で効果のあるダンジョン探索法やモンスターへの対策法、といった地道な研究が元になっているらしい。
フィールドワークとしてダンジョン探索が求められているのはこの後者二人と前者二人の確執なんかもあったりするんだろうか。ダンジョン学部内の対立とかそういうのもあったりするんだろうか。ちょっとワクワクするな。
一通りの話が終わり、自分に合いそうなのは中谷准教授か合法ロリか、それとも他の教授陣の話を聞きに行くのもいいかもしれないな。先の二人は前のオープンキャンパスで話を聞きに行ったゼミでもあるし、同じ話を再度聞きに行く、ということはちょっと無駄が大きい。
「それでは、今からは各自研究室に籠もって……いえ、失礼。研究室に戻って対応をしますので、気になった研究室に行くなり、色々回ったり好きに時間を過ごしていただければ結構ですので、時間が来たらそれぞれ解散するということで一つよろしくお願いします。それでは各自好きな研究室に散っていただくということでよろしくお願いします」
全体ミーティングというか、事前オリエンテーションが終わり、各研究室の研究内容をそれぞれ見に行ったり実演したり、話を聞きに行ったり……自由な時間が始まった。ここで興味がなくなったらもう帰ってしまうのだろうな。すでに二人ほど、出入口から出て帰ろうとしている。さて、俺はどうしようかな。
「みき太君、少しだけ荷物を持ってくれるかね。ちょっと服を直したい」
「あ、はい良いですよ。持ちます、これですね? 」
「そうそう。ついでに私の研究室まで頼むよ」
「少しだけじゃないんですか? まあ、いいですけど。初めてじゃないから場所もわかりますし」
……あれ、この流れ、なんかいやな予感がするな。このまま研究室まで連れていかれてなし崩し的に相手をさせられるような気がする。
そのまま研究室までたどり着き、大泉ゼミのドアを開けてもらって中に入ると、後ろ手でカチリと鍵を閉める音が聞こえる。
「ふふっ、つ・か・ま・え・た」
いたずらをするように艶っぽい声を出して囁く合法ロリ。しかし、魅力的なお姉さんではなく合法ロリであることから、魅力的と思うより先にイラっときた。
「探索者が力づくでこじ開けるとどうなるか、知りたいんですか? 」
「冗談、冗談だから本気にしないでくれるかな? 人生で一度ぐらいやってみたいじゃないか、こういうシチュエーション」
「その相手が俺でいいんですか、もっと相手はちゃんと選びましょうよ」
「相手は選んでいるとも。みき太君なら怒るだけで済ませてくれるだろうし、万が一本気にされても……ちょっとありかもと思ってしまうよ」
頬をポッと染めるような雰囲気を出す合法ロリ。
「彩花が居たら横っ面張り倒されて窓から吹き飛ばされてたと思いますよ。良かったですね、今日は俺一人で」
かちゃり、とちゃんと鍵を開けてドアの前から移動した合法ロリを相手にして、さて、これからどうするかというのを考える。このまま介護を続けるか、それとも他の学生が来ることを見越して俺の行きたいところへ色々巡ってみるか。
「行ってしまうのかい? 寂しいねえ。あんなに語り尽くした仲じゃないか」
「語り尽くしたので他の所でも同じように語ってこようかと思うんですけど、そのしっかりと握ってる袖を離してはくれませんかね? 」
途中で袖をこっそり小さく、しかしがっちりと握り込んで寂しそうなそぶりを見せる合法ロリ。このまま俺以外誰も来なかったら一人寂しく自分の研究を進めることになる……と考えると少しだけいじめたくなる気持ちが湧いて出てきたが、そこまでして相手にしてやる必要があるかどうかもまた別の話。今のところは真面目な話、いろんな話を聞けるだけ聞いておきたいというのが本音。
「真面目な話、他のゼミにも興味はあるので行ってきますよ。何も掴めるものが見当たらなかったら帰ってきますから、そう寂しそうな雰囲気”だけ”をまき散らすのはやめてください」
「バレていたか。さすがはみき太君だな。君は君の必要な情報を仕入れてきたまえ。私の方は私なりにやっていくし、君に心配されるようなことはないはずさ! さあ、いったいった」
あえて”だけ”と付けて見たが、やはり寂しいフリだけだったらしい。いや……フリに見せかけて実際にも寂しいのかもしれないが、そこまで俺も面倒を見きれない。面倒を見ていいのは入ってからだな。それからなら、まあおふざけに付き合ってみるのもいいだろう。
さて、大泉ゼミを出て、他の探索者向けの話をしていた二人の教授陣のゼミを見学に行く。途中からの参加になったが、メインの話には追い付いたらしい。
「つまり、探索者の潜り方には二種類、登山と同じような潜り方が推奨される。インスタンスダンジョンにおける極地法方式……インスタンスダンジョンが出来たすぐのころに突入して、モンスターをしらみつぶしに倒していって十層までたどり着き、一旦十層でワープポータルを利用して戻ってきて補充と休憩をし、そのあとまたワープポータルで戻ってじっくりモンスターの湧きつぶしをしていく方法がこちらになる。一方、アルパインスタイルのように、一気にダンジョンを駆け下りていってダンジョンコアまでたどり着く方式がある。こちらは明らかに出遅れてダンジョンに入った探索者パーティーのとりうる手法になるが、モンスターと出会うまでひたすら奥へ奥へと進んでいき、モンスターが出てきた段階で極地法方式に切り替えていく、といった形になる。これらを比較することは難しいが、どちらもインスタンスダンジョンを攻略する際に意識することで、より気楽にダンジョン探索に赴く手段としては有効だと言える」
どうやら、ダンジョンアタックの方法について熱弁しているらしい。確かに、後から追いついてしらみつぶしにモンスターを探していても時間の無駄であるし、先行している探索者の消耗を考えたら早く追いついて、追いついた先から潜り方を切り替えて探索していく方が効率的だろう。この二種類の戦い方を切り替えていくことが大事だ、という話らしい。
今後は駅前ダンジョンではなく大学内ダンジョンか、インスタンスダンジョンに駆り出されていくんだろうな、ということを考えるとこれらの話は聞くだけの価値があるな。もう少し話を聞いてから他へ行こう。
「例えばそうだな……以前インスタンスダンジョンでも比較的浅い階層にダンジョンコアが設置されていたにもかかわらず、ダンジョンコア破壊に参加した全員が極地法……つまり、自分たちの周りだけでモンスター退治を行った結果、ノーマライズ化して一気にモンスターリポップが始まり、モンスターの溢れ出しにつながった事件があったが、これも意識的にダンジョンの探索方式を変更していれば防げた事態ではある。これらの潜り方をスタンダードな探索方法として広めていくのが当面の目標だ。そのためにはこの方法で実際にインスタンスダンジョンなりノーマライズダンジョンに潜って、成果のほどを証明しなければならない。中谷准教授が言っていた、実際にダンジョンに潜る必要があるか、必修にするかしないか、というのはこの辺りにかかってくるんだ。私は必修である必要はないが、可能なら単位として取り入れるべきであると考えている。みんなの声で必修単位が変わるならと、ぜひとも声を上げてほしいものだな」
聴講生が十人ほどが居るゼミ。みんなここに集まっていたのか、と思う程度には人数が多い。全体の半分ぐらいいるかな。ここにほとんどの参加者が集っているんじゃないか、と思う程度には人がいる。他のゼミには後で行くのかもしれないし、ここでは今の話が聞けたのが一番ありがたかったかな。ダンジョン探索方法にも色々ある、というのはよくわかった。
さて、話を聞いたところで次のゼミに行ってみるか。みんな順番に色んなゼミへ回っているようだし、このままついていって次のゼミの話を聞くことにしよう。
◇◆◇◆◇◆◇
グルッと回って一通りの聴講を済ませてきた。ダンジョンの生成パターンのアルゴリズムと出現位置の予想、そしてどこにいつダンジョンが発生するのか、という傾向と対策が出来るようになるかもしれない、という講義内容には魅かれるものがあったな。いつどこにどのぐらいの深度予想のダンジョンが現れるか。地震予知のメカニズムともまた違うそれは研究テーマとしては面白い物だった。
さて、あの合法ロリはどうなってるかな……一通り見終わったし様子を見に行ってやるか。再び訪れた大泉ゼミでは、合法ロリが楽しそうに研究を始めていた。どうやら、スキルスクロールに何かしらの力を加えて人間が扱っているかのように見せつけるにはどのようにしたらいいのか、というのを悪戦苦闘していた。
「あ、みき太君お帰り。ちょうどよかった、少し実験に付き合ってくれないかね? 」
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