第153話:満腹の午後、イチャイチャし
食事を終えて家に帰る。まだまだ午後に時間はたっぷりあるので遊ぶもよし勉強もよしだが、俺個人としては今日手に入れた分の魔石は今日中に提出して現金にしてしまいたい気分で一杯だ。
「さてお二人さん、午後からはどうするの? 勉強? イチャイチャ? ご休憩なら私外に出てるけど? 」
アカネがまたいらん気を回してこようとするので頭をガッとつかんで文句を言おうとするが、まだ触れられないアカネにスカッと空振りをする。午後からか……正直勉強だけに使うのはもったいないんだよな。確かに勉強は大事だが、この魔石箱に入った二人分の魔石も換金しに行きたくはある。
「よし、午後からも駅前ダンジョンに潜って魔石も換金してしまうか」
「そうね、いつになるかわからないものをずっと置いておくよりも、今日の分としてはっきりさせた方が気が楽だわ」
再び防具に着替え、バッグに魔石を詰め込むと家から駅前ダンジョンに出かける。道中暑いが、これも金のためと思って少しでも涼めるよう、首元だけは開けた状態で駅前ダンジョンへ到着する。
ついでに水分補給用のドリンクも買うと、入場手続きを取って一層から十層へワープ。十層から十一層へ向かい、道中のシャドウウルフを相手にして進む。三十分ほどして十一層の入り口に着いたので、彩花と頷き確認し合いながら十一層へ入り込む。
こっちの十一層は人がいるので所々戦闘音が響きつつも、ホブゴブリンの足音は確実に聞こえる。しばらく進んでホブゴブリンと出会い、戦闘開始。
「こんな時にアレなんだが、スキルスクロールの鑑定を忘れてるな。もしいいのが出てて覚える余裕があったらもうちょっと楽に戦えたかもなっと! 」
ホブゴブリンにこっちから戦闘を仕掛け、体重を乗せた山賊刀の一撃をホブゴブリンに加える。
「帰ったら確認しましょ! よいしょ! 」
俺の一撃がホブゴブリンのこん棒によってガードされるも、その俺の体重の乗った一撃で軽く足元がおろそかになったホブゴブリンのその足を彩花が狙い、足の腱を切る。片足しかまともに動かせなくなったホブゴブリンがその場に倒れ込みそうになるが、その間に俺が二撃目を放つ。
俺の二撃目はこん棒を杖代わりに使っていたおかげで遮るものが無く、首にそのまま命中すると、その首を一気に切断する。そして、切断口にエネルギーボルトを撃ちこんで更に傷口に塩を塗り込むようなダメージを与える。
ホブゴブリンはそのまま黒い霧を吹き出しながら消えていった。後には銀貨が一枚残った。さっき換金したのに……でもまあいい、魔石ばかり提出して銀貨を全く出さないでは逆に怪しく感じられるかもしれない。一枚でも提出した方が怪しさは抑えられるだろう。
「さて、長居をするのは逆に時間の無駄だ、とっとと戻って換金しよう」
「そうね、長居して儲けたければ素直に幹也の家に行けばいいわ」
ホブゴブリンを倒した証である魔石と銀貨はここにあるし、入場退場は確かに行った。一日朝からデートなら十二層のスケルトンメイジの四種類の属性攻撃を浴びに行くというプランもあるが、それには二人では少々厳しい。隆介の手助けが必要になるだろう。
急ぎ一層に戻り、退場をして換金カウンターへ向かう。さっき拾った銀貨一枚と、魔石の山を換金カウンターに渡して換金を願い出る。
「銀貨は一枚だけですか? 」
「残りは潜り込めた記念品に取っておこうと思いまして」
「なるほど、了解しました」
これでまた俺の言い訳コレクションが一つ増えたことになる。どこまで言い訳が通用するかはわからないが、慎重に消費していこうと思う。
彩花の方を見ると、よくもまあそれだけ言い訳の種類が思いつくわね、といった顔をしている。
「まあ、また新しいのを考えつくさ」
小声で彩花にそっと話しかける。
「方向が私に向いてないから良いけど、私にそんなしょうもない嘘ついたら怒るからね」
「どうせアカネ越しにバレちゃうんだから彩花に秘密はないよ。そこの切り分けはちゃんとできているつもりだ」
「なら良いけど。それでお金が手に入るなら嘘も方便ってことにしとくわ」
しばらく待って、換金の結果が返ってきた。二等分したいと伝えたところ、二等分で一人当たり51700円ということになった。銀貨のほうがよほど金になったな。だが、どちらにせよ良い感じに稼げたには違いない。彩花とそれぞれ金額を受け取ると、パンパンになった財布を落ち着かせるために一度コンビニのATMに寄って預金する。
「苦労の分は稼げたって感じね。あとは戻ってからスキルスクロールの鑑定して、覚えるかどうかを考えて、それから勉強するか、イチャイチャしましょう」
「何拾ったか楽しみだなあ。後はあのサイトにいい加減寄付の一つでもしたいところだけど、どこからどうやって寄付すればいいかも調べておくか。多分サイトの何処かにやり方書いてあるだろうし」
そのまま家に帰って、防具を脱いで早速洗濯する。ダンジョン内は適度に涼しくてなんとかやり過ごせるが、家から駅前ダンジョンへの自転車往復で汗をかいた。その分はどうしようもないし、ちょうど洗い時だ。彩花の分もまとめて洗ってしまおう。
防具を洗濯機にかけると、早速スキルスクロールの鑑定を始める。今回拾ったスキルスクロールは二枚。一枚はなんだか見覚えがあるので体捌きの可能性が高い。そして、もう一枚は未知のスクロールのような気がする。早速二枚とも写真を撮って鑑定サイトに投げる。
結果が返ってきた。見覚えのある方はやはり【体捌き】。そして未知のスクロールのほうは【バッシュ】のスクロールだったようだ。
「私、バッシュ覚えたいわ」
「良いとも。体捌きはどうする? ついでに両方覚えるか? 」
「それでもいいけど、幹也は何も覚えなくてもいいの? 」
「そうだな、ソロでスケルトン潜ってる時に体捌きは出易いからな。数を集めたいなら自分で何とかなるし、それほど困るものでもない。それに体捌きはあくまでサポートをしてくれるだけだからな。バッシュを使うのにもちょうどいい感じにサポートしてくれるんじゃないか? なら覚えてバッシュを確実に打てるようにしておくのも悪くないと思うぞ」
個人的にはもうちょっと彩花の戦闘力を上げておきたいという本音もあるので、まっすぐそのまま伝えるわけではないが、少し着地点の柔らかい感じでお勧め差し上げるところだ。
「じゃあ、両方覚えるわね」
彩花が一つずつスクロールの文字を自分の中に刻み始める。両方とも覚えたところで、彩花が「しまった」と言い出す。
「どうした? 」
「せっかく覚えたばかりなのに、防具を洗濯に出してしまって試し運転が出来ないわ」
「ああ……ゴブリンを【威圧】で止めて、その間に試し切りってのでどうだろう? それなら俺も防具なしでも戦えるし」
「じゃあ、それで行きましょう。もう一回潜るわ」
そのあと、言うとおりにゴブリンエリアまで到着し、その辺にいたゴブリンを【威圧】で動けなくしている間に彩花がバッシュらしき攻撃を加えると、ゴブリンはそのまま勢いで黒い霧になってかち割られるように頭から吹き飛んだ。ちょっとグロいかもしれない。
「これ、いけそうね」
「そうか、ならよかった」
試し切りを二回ほどした後、満足したのか先に戻っていく彩花。ちょっと物騒なスキルを渡した気がしないでもないが、まあ強く居ることに関しては問題はないだろう。
「さて、今度こそ勉強か、イチャイチャかどっちかをしよう」
「じゃあ……久しぶりにイチャイチャで」
そう言うと、汗をかいて汗も拭かないまま彩花が俺の腕の中に飛び込んでくる。思わず抱きかかえるが、汗に混じって甘いいい香りがする。これが女の子の香りですよ奥さん。たまらんね、もう。こんな可愛い彼女の可愛いところと、それから二人だけの時だけ見せるだだ甘の笑顔と、それからとろけるような表情、そしてそのままキスを求めようと目をつぶってこちらに向けてくる顔。これが全て俺の物。
幸せを充分に感じる。そして、俺の分身も期待をするが、まだ半年早い。暴れるまでにはもう少し長い時間をかけて、存分にお互いを高ぶらせてそれから我慢の絶頂に達したところで一気に出すのが一番気持ちいいんだ。それまではキスやハグ、その他いろいろな行動で落ち着かせておくほうがよっぽど楽しめる。
「ん……むちゅ……幹也好きぃ」
唇を合わせながら彩花が俺の胸の中でつぶやく。
「俺も好きだぞ、彩花。その人前では絶対見せない甘ったるい部分とか、俺にだけ甘えてくるところとか、そういう部分も含めて」
「やあん……こんな恥ずかしいところ、幹也にしか見せないわよ。小林にだって教えてないんだから」
「なんでそこで隆介が出てくるんだ? 俺だって隆介には彩花にこんな部分があるなんて教えてないぞ」
「じゃあ、本当に二人だけのヒミツってことね……ん……」
唇を重ね、舌をお互い絡め合いながら抱きしめ合い、そのままずっと時が過ぎればいいのに……と目を横に逸らすと、青い光にギュルンギュルンと覆われながらアカネがドアの隙間から覗いているのが見えた。神様は覗きもお好きらしい。
目線で「いつまで見てるんだ」と視線を送ると、「あなたたちの気が済むまで見続けるわ、文句があるなら途中で止めて見なさい、出来るもんならね」という視線が返ってきたような気がした。
アカネの視線に気づいてない彩花が止まらないので、途中で止めるのは難しいと感じた俺は、アカネを無視して彩花に集中することにする。彩花の口の中に舌をねじ込み、強引に唇を吸い、喉を鳴らし、そして呼吸を彩花に送り続ける。やがて呼吸が厳しくなってきたのか、自然に口を離す彩花。
「ふぅ……はあ……幹也好きぃ……」
完全に出来上がっている彩花に、最後に一口軽いキスをすると、ちょいちょいとアカネが覗き見をしてるほうを指さす。途端に顔が赤くなり、そして赤くなり切った後一気に白くなり、そのまま気を失うように倒れていく彩花。どうやら恥ずかしさがオーバーヒートしたらしい。
「全く、とんでもないスケベ道祖神だな」
「前も言ったでしょ、神様はみんなスケベなのよ」
アカネは御馳走様~と言いながらリビングへ去っていった。さて、勉強の準備をして彩花が再起動するのを待つか。
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