第148話:バラした後始末
文化祭翌日は休みだったため、翌々日。学校に行くと、クラスメイトや女の子たちに質問攻めにされている彩花の姿があった。
「結城さん、彼氏って本条君のことだったの!? 」
「そういえば本条君もかっこよくなってるし、二人付き合いだしてからなのかしら? やっぱり彼氏ができると綺麗になるのかな」
「でも多分それだけじゃないわよね? 二人でどんなことして過ごしてるの? 」
「えっと……その……」
完全に問い詰められてされてあたふたしていた。そんな彩花を横目に見ながら教室に入る。……と、彩花だけの話ではなかった。
「なんでお前と結城さんが一緒にいたんだよ」
「結城さんの彼氏って本条のことだったのか……」
「夏休みの目撃情報は嘘や見間違いじゃなかったってことか」
教室に入ると俺も質問責めにされる側だった。どうやら半日学校内で二人でデートしていた光景をしっかり見ていた奴らがいたらしく、その間で話が色々と広がって今日、問い詰めが発生することになったらしい。
まあ、あれだけ堂々とメイド服姿の彩花と並んで歩いてたらそりゃわかるよな。別に隠す意図が今まであったわけではなく、彩花の方からイチャイチャを人に見せるものではない、と言っていたから人前ではそれとなくしていただけだ。
それを彩花の方から解禁してきたのだから俺のほうで断る理由はない。そしてその結果が今日なのだから、遅いか早いかの違いでしかなかったんだろうな。
「どこまで行った? 指入れた? 」
「私も早めに声をかけておけば本条君とチャンスがあったってことなの? 」
「てっきり小林君と出来てると思ってたのに」
どさくさに紛れてとんでもないことを聞いてきた奴には鉄拳制裁を加えておくとして、隆介とのカップリングは……まあ、想像する自由は誰にでもある、聞かなかったことにしておこう。
「まあ、そういうわけだから。あんまり彩花にはしつこくしてやらないでやってくれ」
「名前呼び! 本条らしくない! いつの間に陰キャ卒業したんだ! 」
好きで陰キャしてるわけじゃないし、隆介との付き合いはあったとしても陰キャ扱いだったのか、俺は。まあいいや。とりあえず、どうするかな。
「あー……どうすればいいんだろう」
「とりあえず昼休みにでも質問コーナーを設けてみたらいいんじゃないか? どうせ中庭で昼食取るんだろうけど、たまには教室で食べるのも悪くないだろう」
騒ぐ中に落ち着いた声で話しかけてくる奴がいるかと思ったら隆介だった。やはり、隆介の方にも情報は飛び火していたらしい。
「なるほど、それが一番良さそうだな。じゃあそれまでは大人しくしててくれるってことでいいか? 」
周りに確認すると、昼休みまでは静かにしていてくれる、という話で納得してくれたらしい。とりあえず昼までは時間稼ぎができるか。その間に質疑応答のリストでも考えて作っておくか。何かしら対策を考えておかないといけないな。
◇◆◇◆◇◆◇
昼休みが来て、いつものパスタ弁当を食べ終わったところで俺の周りにできる人だかり。そしてちゃっかり人だかりに紛れている隆介。お前もそっち側なのか……
「で、どういう経緯で結城と付き合うことになったんだ? 」
「隆介お前は知ってるだろ。駅前ダンジョンに潜ってる時に、たまたま助けたんだよ。そこからだな」
おー、という周りの反応。なんか教室一クラスよりも人数が集まっている気がする。ここまで注目されるようなことなのか?
「なんか人口密度高くねえ? 明らかに一クラスより人数集まってるんだけど」
「それだけの人間が気になってたってことだよ。結城のほうには迷惑かけないって約束を守ることになったからな。その分幹也のほうに人間が集まってきたってことになる。だから実質二クラス分以上だな。三年だけでこれだけ集まったのだから、学校内全体集会で発表するのが筋かもしれないが、さすがにそこまでの規模を広げると結城にも迷惑がかかるからな」
全体集会……そこまで騒がなければならないことなのか……俺達はいつの間にかビッグカップルになってしまっているらしい。
「そりゃ、下手すりゃ男子筆頭イケメンになりつつある幹也と、女子でも同様に頭角を現してきた結城、しかも二人とも期末で成績をググっと上げてきた話題の二人だし、これだけの騒ぎにしたほうが面白……これだけの騒ぎになっても仕方ないってものだ」
なるほど、そういう方向性でも目立っていたってことか。なら……仕方ない、のか? いや、それにしても個人のことで騒ぎ過ぎだろう。あれか? 受験で気が立ってる時にイチャイチャしやがって、といううっぷん晴らしなのか、それともまともに付き合ってる二人が一服の清涼剤的な奴なのか?
「とりあえず、なんでみんなそんなに騒ぐのかわからないがいたって健全な交際をさせてもらってるというのは間違いないのでいかがわしいこととかそういうのはない、と……思ってもらいたい」
舌を絡め合うキスはいかがわしい範囲には入らないよな? 大丈夫だよな?
「じゃあ、どこまで行ったんだ? ご両親にお話は? 」
「それはまだだな。あと俺両親もういないから、そうなったら実家の爺ちゃんにご報告ということになるか」
「それは悪いことを言った。でも、まだチャンスはあるってことだな」
ないとは思わないがかなり難しい、と思うぞ。なにせ専用ダンジョンとレベルアップが絡んでくることもあるだろうし、アカネとの約束もある。彩花がどこまで約束を守ってくれるかにもよるが、少なくとも巻き込んだ側の人間としては彩花にできるだけサポートをしなければならない、というのは俺の勝手な思い込みも含めてやっておかなければならないことだろう。
「で、他に聞きたいことってなんだよ」
「そうだな、馴れ初めは聞いたし、普段どんなデートしてるかだな」
隆介が調子に乗ってレポーター役を務めている。そのおかげで他からランダムな質問が飛んでくることはなく、隆介の手元に質問が集まっていくことになり、結果的に隆介と俺が答えやすそうな質問ばかり飛んでくることになった。これも隆介の策略の内だろう。こんなところでも俺の手助けをしてくれるらしい。いい友人を持ったと思っておくべきだろうな。
「二人で勉強するのと、気晴らしにダンジョンに潜ることだな。そこそこ稼いで帰ってこれてるのは、そこのリポーターの隆介も知っている通りだ。小遣い稼ぎにはちょうどいいからかなり良いぐらいの間で推移してくれている」
「ああ、俺も時々一緒させてもらうが、この二人、探索者としても中々のもんだぞ。夏休み中に三人で十層までたどり着けたしな」
「十層まで行けたのか、すげえなお前ら」
どうやら高校生の間に十層まで行くのは一種のステータスらしい。確かにそこまで潜れれば強さとしても稼ぎとしても充分なものが受け取れるという認識があるようだ。俺もその辺しっかり頭に入れてるわけじゃないからな。次また……今日家に帰ってからでも調べるとするか。大体どのぐらいまで潜れれば探索者としては一人前になるのか。
高校生の間に十層まで潜れれば、年月や何月生まれかの問題もあるだろうけど、充分に早いペースだとは言えるらしいことはみんなの反応から何となく受け取ることが出来た。十層と言わず十五層ぐらいまで潜ってしまおうか、と思うところではあるものの、受験と引き換えに手に入れる名誉ではないだろうな。今は新しい階層に挑むことよりも、今の成績を維持していく方向性で進んだ方がいいだろう。
「ダンジョンでデートってなんか華がないな。バイト先が同じ……ぐらいのイメージでいいのか? 」
「まあ、そんなとこだろうな。肉体労働だけど下手なバイトよりは稼げるぞ。時給換算してもそこそこの値段になる。ただ、装備を整える事前投資が必要になるからそこをどうとらえるか、だな」
よし、恋愛話からこのままダンジョン話に少しずつ話題をずらしていこう。うまくいけばろくな話をせずに解放されることができるかもしれないぞ。
「ダンジョンへ行けば俺達もワンチャンあるってことか? 」
「年上趣味ならありなんじゃないか? 俺達が最年少だぞ」
「なるほど……そういう路線もありか。装備揃えて整えて……いくらかかるんだろ」
「そうだな……中古で揃えれば十万ちょいってところか。そこから何日かけて取り戻すかは解らんが、大学入ってからもちょいちょい活動することを考えたら余裕があるうちに少しずつ貯めて買い集めておいて、安いところで揃え続けるのもありだろうし、受験が終わって一区切りしたところでダンジョン探索者になるのもありだろうな。まあ、こればっかりは大学入ってからでも遅くはないと思うから、スパッと早めに潜るのをあきらめて大学に入って、大学にある探索者サークルなんかに入るのもありなんじゃないかな」
「そういえば大学の学園祭でも探索者サークルの活動記録なんかを見る機会もあったな」
「あっちの方が本格的にやってるだろうし、サークルメンバー用の貸出装備もあるかもしれないな」
「そのほうが金銭面に余裕が出来ていいかもしれん。これは一考の価値ありだな」
よし、俺と彩花の話から、ダンジョン探索者の話に少しずつずれてきてるな。
「本条は一回の探索でいくらぐらい稼いで帰ってきてるんだ? 」
更にズレた質問が出てきてくれた。これは嬉しい流れだぞ。
「そうだな……潜る階層にもよるが時給で言えば三千円ぐらい出ればいいほうだな」
ちょっと下目の所を語っておく。正直な話をすると、専用ダンジョンのドロップ品を持ち込むという水増し作業のおかげで一時間当たりいくら稼げたかなんて把握することが不可能になっている。純粋に三層オークだけを問題なくライバルなく狩り続けた場合、どのぐらいの時給を誇るのか、というのは一度計算に入れておくべきかもしれないな。
いや、でも今のレベルで今のペース、そして威圧とエネルギーボルトが使える状況で計算してもあまり参考にはならないか。それだけ探索者という仕事に投資してしまっている状況になるからな。うーん……と悩んでいると、隆介から助け舟が出された。
「俺も時々結城と幹也と一緒に潜って奥まで連れていってもらっている側だが、下手なバイトより稼げるのは確かだな。その分命の危険が迫っているのは間違いないが、それを天秤にかけても稼ぐだけの手段ではあるってことだ。慣れると割と楽しいしな」
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