第141話:日曜日の軽作業
そのまま戦い続け、ケイブストーカーの出る道はすべて回り切り、この後ろにはもうモンスターが居ないという自信があるぐらいに綺麗に片付けておいた。途中で先に行く探索者も居たが、ここは任せろと言わんばかりにケイブストーカー退治に心血を注いでいたため、外から見てもこの辺りの掃除はしてくれていると伝わったのかもしれない。
ケイブストーカーを狩り尽くした後は更に奥へ進む。すると、リザードマンが出てきた。前に入り込んだ学校のグラウンドに出来たクイックインスタンスダンジョンに比べるとかなり深いインスタンスダンジョンになったな。今日中に綺麗にしなければいけないんだろうけど、本当に間に合うのかは怪しいところだ。
間に合わなかった場合はリポップするモンスターに囲まれながら奥を目指さないといけない、という風に聞いている。二十四時間のうちに済ませてしまうのが一番手間がかからずに済む方法だとは聞いているが、それの協力が上手く出来ているのかどうかは怪しいところだな。
まあ、少なくともケイブストーカーを倒す時間分だけ他の探索者の時間を浮かせることが出来たのだから、きちんと仕事をしていたとは言えるだろう。さて、気にせずに奥に行くか。俺たちより先に奥に行った人により、ほとんどのモンスターは駆逐されているようだが、二、三匹ほどうち漏らしのリザードマンがいた様子なので、それらは美味しく処理させてもらった。
「リザードマンの次はちゃんとレッサートレントなのかしら」
「インスタンスダンジョンにもよる、という話らしいぞ。普通のノーマライズ化されたダンジョンと同じ場合も多いが、違うケースもあるそうだ。ここの場合がどうなるかまでは解らんが、少なくともレッサートレントぐらいは出てほしいもんだな」
奥へ奥へと急いで行くと、先ほど俺達を通り越していった探索者がリザードマンと戦っている。お疲れ様です。ほぼ同じタイミングで奥へ向かうことになったので、こちらが道を譲って、向こうが先にモンスターと戦えるようにお膳立てをしておく。その方がより奥へ進めることになるし、いざモンスターを目の前にして主導権を主張し合わなくて済むので好都合だ。
そのままリザードマンを抜けて……どうやらレッサートレントの地域らしく、そしてかなりマップが広くなっているのか、あちこちで戦闘音が聞こえる。レッサートレントの叫び声とレッサートレントに攻撃を仕掛ける音と探索者の声、そしてレッサートレントがモソモソとうごめく音が【聞き耳】に入ってくる。
「結構奥まで来たが、ここが広いのか前のダンジョンが浅かったのか……判断できないな。まあ、こういう時は前のダンジョンが浅かったことにしておくほうが色々と面倒がなくて済むわけだが」
「前のダンジョンって学校のグラウンドに出来たやつよね。あの時はどうだったの? 」
彩花が横から覗き込むようにこちらを見つめてくる。そういえばあのダンジョンの話はあんまり広まってないんだったな。
「あの時はオークが最後だったよ。クイックインスタンスダンジョンと言って、出来上がってモンスターが湧き出てくるのが早い分、浅くて狭いダンジョンだったみたい。そうすると、クイックでない分こっちのインスタンスダンジョンのほうが本来攻略するべきダンジョンだった、ということになるな」
「じゃあ、こっちが何層まで出来てるかで一つの目安になるわけね。十層以降が出来てたら行くの? 」
「うーん、無理に新しい階層に挑むよりも十層に到着した時点で自分たちの身体の様子を見て、それから決めるでも遅くはないと思うし、収入の具合がどのぐらいになっているかを考えてからでも悪くはないと思うんだよな」
「じゃあ、とにかく今は奥に行くこと優先ね。早速奥へ行きましょ」
彩花が俺より前を歩いて次のモンスターは居ねえがといった形で目を皿にして探し回っている。俺も【聞き耳】で近くのモンスターを探してはいるものの、どうやら周辺のモンスターは既に他の探索者が戦闘を始めている様子。このままこのレッサートレントの階層では戦闘もなく奥へ続くことになりそうだ。
時間は……そろそろお昼ってところか。レッサートレントを抜けたところで休憩を取りはじめたら、みんな集まって休憩をはじめたりしないかな。とりあえず奥っぽいほうへ行こう。
しばらく歩いて、レッサートレントにも数匹出会い、交戦するも樹液のドロップにはならず。魔石はくれたのでそれはよしとしておこう。
レッサートレントの領域を終えてダンジョンの壁や床の様子が変わりはじめたので、ここから先はおそらくスケルトンの領域になるだろう。
「そろそろお昼にしよっか。ここから先はスケルトンだろうし、モンスターの湧き直しの心配がない分だけゆっくり休憩を取れる」
「それもそうね。これでご飯を後回しにしてスケルトンが大量に居たらお昼ご飯食べるタイミングを逃しちゃいそうだし、マップの切れ目で丁度良さそうだし、ここにしましょ」
それぞれ買ってきた弁当を食べ始める。俺は大盛3色そぼろとチキン南蛮の弁当、彩花は親子丼だ。チキンだけは共通点があるな。
「それだけ食べてれば午後も安心ね。パスタじゃないし」
「別にパスタ茹でてきても良かったんだが、そうなると持ち歩く水分がパスタのゆで汁になりそうだったからな。蕎麦湯だったらわからんでもないが、パスタのゆで汁片手にダンジョンうろつくのはちょっと理解に苦しむ」
「蕎麦湯でもあんまり変わらないわよ。まあ、下手にパスタにこだわらないのと、今日の収入のあてがきっちりあることがわかっただけでも充分こっちはありがたいですからね。たまのコンビニ弁当だって私にとっては贅沢よ」
「俺にとっても贅沢だよ。おかげで腹いっぱい食えそうだ」
二人で地面に座り込んでご飯を食べていると、他の探索者が寄ってきた。
「すまない、隣いいだろうか? パーティーで固まってそれぞれ……てのでもいいが、万が一モンスターが襲ってきた時に対応できる人数が居るほうがありがたいからな」
要するに、俺達を基点に休憩ポイントを作ろうということなのだろう。そういうのなら大歓迎だ。間接的に俺達の安全も保障されるということになる。
「そういう意味なら大歓迎です。こっちも助かりますからね」
「感謝する」
向こうもコンビニ弁当を広げて昼食の準備を始めた。やはりコンビニの敷地内にできたダンジョン、というのは立地的に非常にいいらしい。コンビニのフランチャイズによってはコンビニ内で飯を食えるところもあるし、十層単位で潜り込めているなら十層付近でうろちょろして飯食いに戻ってまた深く潜って……と往復することだってできる。
「君らは高校生か? それとも大学入学してすぐなのか? その若さでここまで潜ってこれるのは中々のものだと思うが」
モリモリと食事を続ける俺達に、先ほど声をかけてくれたパーティーが馴れ馴れしく話しかけてくる。できるだけ食事に集中したいところだが、そうさせてくれないのは日曜日のインスタンスダンジョンだからなのか、それとも彼らが特殊なのか、どちらにせよ少しうざったい。
「高三です。十層までは潜ったことはありますのでこのあたりのモンスターはまあ、慣れたもんですよ」
「高三でそこまで行けるのか。中々凄い腕前だな。でも、受験シーズンにダンジョン潜ってて大丈夫なのか? インスタンスが発生したとはいえ、探索者の義務とは言いつつも受験を優先していいとは思うぞ」
「息抜きなので大丈夫ですよ。とりあえず十層まで潜って、その先は他の探索者さんに任せていこうかと思っています」
「そうか、頑張れよ」
この人も日曜探索者なのか、それとも専業探索者なのか。装備品や見た目ではまだ判別することはできないが、話し方から察するに、俺達よりも深い階層の探索をしているようには見える。
浅い階層から探索者が集まり始める。どうやらここを拠点にして昼休憩に入るらしく、みんなこっちに寄ってきては昼食を取りはじめた。これは、昼食が終わり次第取り合いになるか、みんなが昼食を取ってる間に奥へ行ってスケルトンを狩って儲けにして行くかのどちらかだろう。
予想通り、みんなが休んでるのを見てこれはチャンスだとばかりに奥へ行き、戦闘を続行する探索者グループも見える。ここが儲け時、ということだろう。それに、前方も後方も安全にしておいてくれるという意味では、こっちもゆっくり休憩するだけの余裕を持たせてくれているのは感謝するべきところだろうな。
昼食を食べ終えて水分を取り、十分程さらに休憩したところで彩花が立ち上がる。どうやら食休みは充分らしい。
「お、もういいのか? 」
「幹也はまだ辛い感じ? 私はそれなりに消化したと思うからぼちぼち向かっていってもいいとは思ってるわ。先に向かった探索者がモンスターはある程度倒してくれているから、歩いて探している間にお腹のほうはこなれていってくれると思う」
なるほど、しばらくはモンスターが出ないことを織り込み済みで考えている訳か。なら、俺も大盛を食べたからと言って動かずにいる理由にはならないな。
「じゃあ、俺も行くか。歩いてる間にこなれてくれることを祈って……ダメだったらエネルギーボルトに頼ることにしよう」
「ふふっ、良いわね動かなくていい手段があるというのは」
「ただ、骨の隙間を縫うように当てなきゃいけないから難しいんだけどな。コントロールが中々……だから、素直に殴りに行ったほうが早いと思ってる」
実際、骨の隙間を縫うように核を殴りつけるよりも、核ごと叩き割りに行ったほうが早いケースは何回かあった。特にデブスケルトンのほうが顕著であった。ガリスケルトンは盾持ってたり剣に当たったりして攻撃の軌道を逸らされることが多いが、デブスケルトンはとげ付きこん棒さえ往なしてしまえば後は楽ちんなので、どういう戦い方をしても意外と何とかなる。
その中で編み出されたのが骨ごと砕き切るという技だ。それなりのレベルと【剣術】、そして【体捌き】のコンビネーションが必要になるが、うまくストンと入ればスパッと骨ごと切れて、核もそのまま割りつぶせるという便利技。普通の人がこれだけのスキルを集めるのは手間だろうし、探索者一年生で到底集めきれる量でないこともわかっているが、実際にできてしまっている自分が居るのでそのまま使い続けることにしよう。
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