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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第12話:加減不可

 午後の授業に入るが、最後の授業が体育であることと、その前の授業でしっかり頭に詰め込まれた知識がすんなりと整頓されたような形で頭に入り込むことになった。暗記系の授業だったが、これならテストでも思い出すのは容易だろう。やはり、レベルアップで賢くなっているのは間違いないらしい。


 これは四月生まれだからといって体験できる現象というわけでもなく、モンスターから入手する経験値倍率がおかしいからこそ起きている事態だろう。


 この様子だと、この後の体育の授業も力を抑え気味にしないといけない感じか……確かサッカーだったな。大人しくゴールキーパーでもしておくか。ゴールキーパーなら動いてなくても怒られないし、届きそうなボールにだけ反応していれば良いだけのはずだ。


 そして、体育の授業は始まった。ゴールキーパーやるからーと宣言すると、みんなもやるよりは走り回るほうが好きらしく、じゃ任せたからなーと素直に応じてくれた。多分、ゴールキーパー用の手袋がないからとかそういう理由もあり、素手でボールを掴みたくない、という事情もあるんだろう。後はみんなの仕事に任せて、後ろの方でボーっとボールの動きを見て、取れそうなシュートが来たら取る、という仕事に全力を費やすことにしよう。


 やがて、自陣を割り込む敵チームのフォワードがこっちにボールをドリブルしながら走り込んでくる。その動きも今の俺には緩慢に見える。やがて、フォワードが俺のゴールに向けてギリギリ横をすり抜けるようにシュートを打ってくるが、充分余裕で追いつけるスピードだ。


 取れるボールは取らなきゃサボってると言われるからな。取れるボールは……届いた。ゴールポストの端から端へ移動するとそのままボールをキャッチ。そしてボールを前へ投げてもうこっちへ来るんじゃないぞーと遠目にパスを投げると、俺の前で驚愕している相手チームの姿。そして、近くにいたディフェンダーも同じ顔。相手陣地まで届いた俺のオーバースローパスにも驚いているようだ。


 しまった、これもまだやり過ぎか……味方からは応援の嵐、敵チームからはあいつなんであんなことできるんだ? という表情。そしてこっちの試合を見ていた女子から軽く黄色い声が上がっていた。


 俺に向けて女子から黄色い声が上がるなんてことは今までの人生ではなかったはず。ただのモブだった自分を考えると、あり得ない話だ。やはり、身体能力も上がっている……冷静になって考えると、探索者の上澄みは同じくレベルが上がっているのだろうから、みんな見た目麗しかったりするんだろうか。帰ったら調べてみるのも面白いかもしれないな。


 授業中そのままこっちにボールが飛んでくることは数回あったが、さっきの一回がたまたまうまくいった、という風に装って加減をするのに全神経を集中させることでなんとかのりきった。教師からは全くの偶然として処理されたらしいが、今後もこうやって微調整や出力制限をしながら授業を受けなきゃいけないのかと思うと気が重いな。


 授業が終わって、今日も一日やれやれだぜ……と思って帰り支度をしていると隆介が現れた。


「帰ろうぜ、途中までだけど」

「本当に途中までだけどな」


 隆介の家は高校から近い。歩いて登校しているレベルで近い。それに比べれば十数分かかるとはいえ自転車だ。必然的にわざわざ俺が歩いて付き合うことになる。


 自転車を押して隆介のダベりに付き合うことになったが、隆介からの一言でやっぱり面倒ごとに巻き込まれることになるんだな、ということを再確認することになった。


「やっぱりダンジョン行って帰ってから、お前おかしいぞ」

「そうなのか……自分では実感が湧かないぞ」


 おそらくレベルアップのせいだろうなあ……というのは気づいているが、いくらなんでもこんなペースでレベルアップする高校生、というのは観測上難しいだろうし、そもそもまだ一回しか公的にダンジョンには潜っていないことになっている。そんな中から見つけ出すことは不可能に近いだろう。


「今日の授業中女子の会話をこっそり聞いてたんだが、お前の噂をしていた。最近急にかっこよく見えるようになったとか、そういう方面の話題だ」

「それは昨日今日、ではなくか? 」

「大きく変わったのはこの土日を挟んでだろうから、ダンジョンが関わってる可能性は高いな」


 授業をちゃんと聞いている隆介の耳に聞こえていたんだから、相当噂になってるかもしれないな。やはりダンジョンに行ったという話はあまり公にしないほうがいいだろう。


「ダンジョンに行くとかっこよく見えるとか、人間として一皮むけたとかそういうのだろうか」

「わからんが……次の土日に期待してみることにするかな。それでまたお前の評判が上がってたら、やっぱりダンジョンには何かある、ということになる」

「もしかしたらテストの点がやたらよかったのもダンジョンのおかげかもな」

「いや流石にそれはないだろ」


 全力で否定される。そこまで否定せんでも良いだろうとは思うものの、実際にそれぐらいしか思い浮かぶ事象がないのだから俺としてはダンジョンのおかげで良い男になれました! と声を大にして言いたいところだ。しかし、俺だけ使える専用ダンジョンというものは口が裂けても言えないからな。そもそも俺にしか見えてない可能性すらある。


 アカネの姿は俺にしか今の所見えていないらしいが、神力が集まったら見えるようになるのだろうか。っと、考えがそれたな。


「まあ、ダンジョンのおかげってことにしとくかあ。生死にかかわる体験をして人が変わることってあるらしいけどな」

「そこまで危なかった体験をしたのか? 大丈夫か? 」


 隆介が真面目に心配してくれている。


「今の所はそこまでのことにはなってないから心配しなくていいぞ。まだ一層二層ぐらいしか潜ってないけど、もっと深く潜ったりするにはパーティーメンバーとか必要らしいし、日曜探索者としては浅い階層でとにかく数を倒してドロップする魔石を売って稼ぐのが着実な方法らしいし、俺もそれに倣ってみることにする」

「そうか。思えば俺が防具を折半して購入して先に潜れなんて言いださなければお前もダンジョンに潜らなかったかもしれないからな。それが理由でお前が怪我したなんて話になったらそれは俺の責任にもなるからな。安全に潜ってくれよ」

「確かダンジョンの標語も”今日もご安全に”だったな」


 入り口で見かけたのを覚えている。記憶力もやはり良くなっているのは確からしい。


「まあ、心配しなくていいならそれで俺も安心だ。じゃあな、後は俺こっちだから」

「おう、また明日な」


 隆介と別れ、自転車に乗って家に帰る。今日は寄り道はなしで真っ直ぐ帰ることにした。寄り道が癖になるとついで買いなんかで無駄な出費をしてしまうことにもなる。まだ潤沢に金があるとは言えない以上、家にある食材で今日も夕ご飯を作っていこう。


 家について「ただいま」と声をかけると、扉を閉めてリビングに入ったところにアカネは居た。


「おかえり。どうだった? ダンジョン効果は」

「どーもこーもない、色々変わりすぎてて驚きだよ」


 アカネにダンジョンに潜ってレベルアップした結果を体感してきた、と説明。素直に聞いてくれるアカネ。秘密を共有できる仲ってのは大事なんだなと思わされた。


「で、どうするの? あんまり目立つのが嫌だからダンジョン潜るのやめちゃう? 」

「そっちは細々と続けようかなと。換金して良いもの食べたいし、今の防具は買い取るなりしなきゃいけない分の金は必要だからね」

「じゃ、継続ね。今日はどうするの? ダンジョン入るの? 」

「入る。本当に潜り続けてレベルアップという現象が起きて、そのおかげで自分の身体能力というか、学習能力というか、そういうものが向上したことがわかったしね」


 おそらくこの短い学生生活の間に、いや、仮に大学に入ってからだったとしても、経験値の入手倍率がおかしい以上、普通に気づかれるような早さでレベルアップをするケースはないだろう。そう考えると、今レベルアップしておくことは今後の色々にとって役立つはずだからな。


「それならいいわ。せっかく作ったダンジョンだもの、有効的に利用してもらった方が私もうれしいし? それから、幹也がダンジョンに通うことで私の神力も溜まることがわかってきたのよ」

「じゃあ、どんどん潜ってモンスターを倒せばアカネも強化されていくってことか? 」

「そういうことになるわね。だから幹也には頑張ってもらった方が、私もお得ってこと」


 ふむ……だとすると、今日潜るとしても魔石を一旦換金してきた方がいいな。


「ちょっと出かけてくる。今のうちに昨日稼いだ魔石を換金してもらってきた方が怪しまられずに済むだろうし、まとめて換金依頼を出すと何処かのインスタンスダンジョンを攻略したのかと言われるかもしれない」

「そのあたりはよくわからないけど、ちょっとずつなら怪しまれないってことよね? 」

「そういうこと。だからちょっと出かけてくる。ちなみに……お土産は何がいい? 」

「そうね、この間の団子は中々良い感じだったわ。懐かしさがあって、お供え物って感じがしたわ」


 なるほど、お供え物にも色々種類があるらしい。ついでにコンビニ物で悪いがおはぎか餅大福も追加で供えてみるとしよう。


 早速駅前ダンジョンまで自転車で駆けつけて、バッグから魔石を取り出して換金。帰り道にコンビニで三色団子と餅大福を買い、それでも十分な黒字になったので意気揚々と家に帰った。


 さあ、今日もダンジョンに潜るか。今日もノルマはゴブリン40匹だ。このぐらいなら誤魔化せるギリギリの量だと思うのでその間で調整していこう。あんまり多いと今度は誤魔化しきれずにどこかに隠しインスタンスダンジョンがあるんじゃないかと疑われてしまうからな。隠せるものは隠すに限る。隠れてレベルアップをして、誰にも気づかれないようにひっそりと強くなっていくのだ。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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