第110話:イチャイチャ
これは、俺と彩花だけでもやろうと思えばできるのではないか。隆介に頼らなくても、彩花と二人でそれぞれの首を相手にしていれば普通に削り切れるだけの体力と俊敏さ、それから火力と言えるだけの近接攻撃力を賄えていれば、十層ボスは問題なく倒せる。それがハッキリと形が見える状態で見えてきた。
「これ、思ったよりも楽かもな」
「あら、そうなの? 片方の首を相手にしてる間にもう片方を相手にして、何とかなるっていう風に見えるんだけれど」
「これは盾役が上手にモンスターの身体と片方の頭を調節してるからうまくいっているように見えるだけで、実際は別に動き回られても、それに追いつくだけのスピードと頭を押さえておけるだけの実力があれば問題ないように見えるんだけど」
「じゃあ、幹也は、例えば私とコンビなら勝てるってこと? 」
「むしろ彩花とだからうまくいくかもしれないな。二人ともレベルアップで下駄を履いてる分だけより素早く確実に行動できるし、ボス部屋なら他人の視線を気にすることなく全力を出せるし」
隆介にも見せたことのない本気の戦闘、隆介から見たらどういう風に見えているんだろうな。俺と彩花が全力を出さずに戦闘をしているのは薄々勘付いているとしても、全力がどこまでの戦闘力になっているかまでは計りかねているはずだ。
ふと、彩花の首もとに手を回しつつ、顎の辺りをくすぐってみる。彩花は気持ち良さそうにそれを受け入れ、目をつぶって猫が可愛がりを要求するような形になった。さすがにゴロゴロ……と音を出すことはないが、それでも近いような構図になっている。
「私、猫じゃないんだけど」
「すまん、つい、な」
「まあ、嫌じゃないからもう少し付き合うけど。あと何分ぐらい猫の代わりをしてればいいのかしら? 」
そういうと横になりながらこちらを向き、顎の下を突きだしてきた。ちょうど片腕で腕枕をする体制になり、もう片方の空いた手で彩花の顔を撫でる。頬から顎、顎から顎下へと手が伸び、そのままそっと喉へと下がっていく。
これ以上下に下がっていくと……さすがにまずいな。そこまではやるつもりはない。少なくとも今は。したいという欲求はあるけれど、セーブできないほどじゃない。
大学デビューというわけではないが、そこを一つの区切りにする方がよいのではないかと考えている俺にとっては、今のこの少々甘い空気で充分楽しさとうれしさといとおしさを感じられるなら充分なのだ。
もしかしたら彩花の方には多大な我慢を強いさせていないかどうかはちょっと気になるところだ。一度聞いておいたほうがいいかもしれないな。
「なあ、俺、我慢させてる? 」
「んー、我慢の定義にもよるけど……お預けを喰らってるところはあるかな。でも、時間が解決してくれる問題だとも思ってる。だから焦らないことにした。幹也はそこまでちゃんと考えてくれてるって信用することにしたから」
やはり、我慢はさせてるらしい。本当ならこの受験の大事な時期とはいえ、彼氏彼女の関係になって、デートもしてやることはやって……と順番にダンジョンを潜っていくようにこなしていくのが自然だと思う。
なにより、彩花とはかなりディープなキスまでしてしまっている。この次に進むならこの夏休みの間に進んでしまうのが自然な状態だとは思う。
「そっか……もう一歩進んでみる? 」
「それもうれしいけど、幹也は良いの? 私は歓迎するけど幹也の我慢がどこまでできるかわからないんじゃないかな」
そういうと、彩花の手が俺の太ももにそっと這っていく。その細い指といやらしくまとわりつく指に思わず股間が動いてしまう。さては俺の反応で楽しもうとしているな。
俺の方も……と、彩花の二の腕や太ももに手を向けようとすると、彩花にキュッと力が入るのがわかる。あっちも中々に緊張しているらしい。
そのままお互いの色んな場所を触りあいながらも、大事な場所には触れない、という焦らしあいを楽しむことになった。
「もっと直接的なことをして来るかと思ったけど、これはこれで中々楽しいわね」
「どこを触ってくるかわからない、という点では目隠しプレイみたいなものなのかもしれないな」
ふと、目の前に彩花の顔があるのでキスをする。こっちのキスは問題なく、じらし合うでもなく求めあい続けるらしい。そのままディープなキスへと移行して、ハァハァと息をしながらお互いの唾液をすすり合う。
しかし、彩花はどうしてこうオンオフの違いが激しいのだろうか。俺個人としては、他の誰も知らない彩花の一面を俺だけが知っている、というだけでもうれしさがこみあげてくる。
彩花も、俺にだけは見せていい自分のはしたないところ、ということで興奮をしているのかもしれない。キスは止まるどころか段々激しさを増していき、口の周りはお互いの唾液でベタベタだ。ここまでベタベタになるならいっそのこと服を脱いで全身を舐めまわしてしまいたいぐらいの欲求にかられる。
そこまでするのは俺の心にもブレーキがかかっているのでさすがにそれはないが、もう一枚ぐらい服を脱がせてしまってもいいのでは……? という気持ちが湧きだしてきている。
彩花も、熱くなって体が火照ってきたのか、キスの余韻で体温が上がっているのか、もう一枚脱ぎたいような衝動に駆られているらしい。服を脱いでキャミソール一枚になった彩花が再び俺にしなだれかかり、体重を完全に預けてくる。
どうやらカップなしのキャミソールにスポブラだったらしく、彩花の胸の柔らかさが直接体に当たってくる。柔らかくて暖かくて、立ち上ってくる彩花の甘ったるい汗と混じった香りに脳みそが沸騰しそうなぐらいに打ちのめされそうだ。
もしもレベルが上がってなかったら、この場で襲っていたのかもしれない。自制心もレベルに関係があるのかはわからないが、きっとそういうことなんだろうということにしておく。
彩花の胸……柔らかい。大きさもそこそこあるのも理由の内だろうが、やはりスポブラでそれほど締め付けてないというのが大きいのだろう。彩花にそのままのしかかられて、柔らかいその胸の感触を胸板で存分に味わいながら、馬乗りになられてキスを更にねだられる。
「んっ……んうっ……はぁ……」
彩花の呼吸が艶めかしい。呼吸音だけが耳傍で聞こえるだけでも、俺の下半身は全力で反応し、いつ俺の出番があるんだと言わんばかりに怒張しているが、もうちょっと待ってほしい。出来ればあと半年ぐらいは。
それまで精一杯の我慢と前戯でゆっくり時間をかけて熟成し、長い間樽の間で寝かせたようなねっとりとした琥珀色のウィスキーのような性的欲望をぶつけるのが目的だとしたら、何と気の長いことなのだろう。
キスに満足した彩花が俺の口元から離れ、最後に俺の口の周りを舐めていく。彩花の舌のザラザラが俺の口まわりを更に舐めまわし、その感触がまた俺の気持ちよさを高ぶらせていく。
「ただいまー……ごゆっくりー……」
アカネが専用ダンジョンから帰ってきて、俺の上にまたがっている彩花を見て、リビングのほうへ退散していく。彩花と目を見つめあい、クスリと笑いあう。
「タイミングのいい帰還もあったものね」
「そうだな。お母さんは空気を読み過ぎだな。もうちょっと遅くても問題なかったのに」
「遅くても何もしないから? 」
彩花がゆっくりと俺から起き上がると、丁度股間の上に座る。多分丁度当たっているだろうし、俺の気持ちと考えと我慢しているかどうかはわかりやすくダイレクトに伝わってくれているはずだ。
「そうだな……もう少しぐらいは先に進んでいいような気もするが、とりあえず今日はなしかな。また今度、今日の続きを少しずつ進めよう。世の中にはポリネシアンセックスと言って、何日もかけてお互いの気持ちを高ぶらせ続けて、それが最頂点になった時に致すというのがあるらしい。気の長いそれをやるぐらいのつもりで自分の中に高ぶらせていこう。受験が終わるまでそれを続けていれば、きっとものすごい激情になってるはずだからな」
「それは楽しみね。待てをされてるんじゃなくてお互いに解った上でそれをやるならこれほどの楽しみはそうそうないわね。ゆっくりお互いを認識していきましょう」
彩花はそのまま服を着直すと、熱くなった二人の体温を覚ますようにエアコンがフル回転を始める。これは汗のにおいもそうだが、彩花の香りが部屋中に広がっているので後で消臭……しておかないと俺が持たないだろうからな。きっちり消臭はしておこう。
「防具はどうする? 洗っておく? 」
「今日はまだ消臭スプレーだけかけておいてくれればいいわ。近いうちにもう一回二回は潜るかもしれないし、その間生乾きの装備を付けていくのはちょっと避けたいところよね」
「じゃあ俺も洗濯はしなくていいか……とりあえず七層で汗かいたのは間違いないから、汗臭くはなってるはずなんだよな」
自分でも匂いを嗅いでみるが、さすがに強烈とまでは行かないもののそれなりに汗のにおいが漂っていたのでちょっと強めに消臭スプレーを振っておく。
「こっちのダンジョンでも七層ぐらいまでは出来てるのよね? でも十層が出来上がってから改めて通過するほうがいろいろと便利……というか、不便がなくていいわね」
彩花は自分の防具に消臭スプレーをかけた後、匂いを嗅いで大丈夫だと考えたのか、そのままクローゼットにしまい込む。
「十層が出来る前に潜るとしても六層までかなあ。ほら、結局深く潜る理由がない以上、ドロップを狙うならせいぜい六層までかなっていうのがあるからさ、そこまで深く潜る理由がないんだよ。ちなみに六層までもぐる……というのはちゃんと根拠があっての話だ」
「一応聞いておきましょうかねえ、六層まで潜る根拠という奴を。何か狙うドロップ品があったりするわけ? 」
「六層には雷スケルトンが出るだろ? あいつのドロップ品のスキルスクロールがあれば、遠距離攻撃手段を手に入れることができるんじゃないかと思ってさ。そろそろ何かしら遠距離でも攻撃できるような技の一つか二つは持っておきたい」
「なるほど……とすると、リザードマンから水を噴射する魔法のスキルスクロールを手に入れるか、雷スケルトンから雷撃っぽい魔法を出すスキルスクロールのどちらかは手に入れたいわけね」
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