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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第107話:頭の上のバット

 サラマンダー狩りは順調に進み、三匹同時エンカウントまでは確認できたが、四匹同時のパターンには出会わなかった。魔石は三割から四割ぐらいの確率で落ちてくるため、収入の心配はなさそうだ。


 魔石の大きさもオークよりも大きいので、ドロップ率が高い分収入には困らないだろう、という予想が付く。ここまで来ると時間当たりのモンスター討伐数も魔石のドロップ数もかなりのものになる。十層にも達していないのに、随分探索者というのは稼げる仕事なんだな、と今更ながら思う。


「このペースだと、今日の帰りは期待できるな」


「そうか。夏休みとはいえバイトもしたいし勉強も……という中での探索者はなかなか時間効率のいいバイトになるのかもしれないな」


「一日真面目に探索してこれだけ稼げるなら充分美味しいバイトよね。疲れるし命の危険……はあるけど」


 彩花も自覚はあるらしく、命の危険、といって一瞬ためらうようなしぐさはしたものの、ここまで首突っ込んでおいて今更か、という感情が感じ取れた。


 サラマンダーを引き続き狩り続けて三十分ほど。持ってきた水分がかなり減りはじめた頃に七層を抜けて、涼しい八層に戻ることが出来た。あと十五分もここに滞在していたら、八層から十層は走り抜けてなんとしても水分補給のために一層まで戻る必要がある所だった。


「水分的にはまだ余裕があるが、結構危ないところか。七層をちょっと舐めてたな」


「ああ、次に来る時にはリッターサイズの麦茶が必要だな」


 おそらく同じメーカーの同じ商品を思い浮かべながら、隆介と感想を言い合った。彩花もさすがにちょっと喉が渇いているらしく、俺から一口だけ水分を受け取ると、後は十層まで頑張ってみる、と気合を入れていた。


「本当に危ない時は言うんだぞ、水分不足で参ってくるのは厄介だからな。俺の動きが鈍くなるよりも彩花が動けないほうが俺は心配だ」


「うん、ありがとう幹也。でも今の一口で大丈夫よ。私がちょっと甘く見過ぎていただけだし、ね」


 後三階層分、実質二階層か。水分が持てばいいんだが、さっきの七層のような階層は少ないはずだし、九層は湿気が多い階層だと聞いている。そこまで心配するほどの物はない、と考えておこう。


 しかし、思ったより喉が渇くという形で不安が的中するとは思わなかった。もう一本だけで良いから水か麦茶をバッグに入れておけば回避できた話。次にくる際にはよく気を付けて考えながら進むことにしよう。


 とは言っても今から七層に戻ってもう一度一層まで歩くぐらいなら、十層まで強行軍で進んでワープポータルで戻ったほうが安全だ。


 他の階層に比べて十層で駆け込んでトレインを引き起こす事例が多いというのは、おそらく七層でこの蒸し暑さからくる喉の渇きに耐えられずに駆け込んでくる……というのが頻発しているのもあるんだろうな。その辺はあらかじめマニュアル化して共有してほしいところだな。


 さて、八層はまたカラッと乾いた冷えた階層だ。涼しくなって良いんだが、その分体温は下がり汗は蒸発していくので、また水分を持っていかれるな。


 そして、パタパタ……という音をたてながら飛び交う蝙蝠のようなモンスターが居る。これがブラッドバットとビッグバットらしい。それぞれかなり大きく、人間大の大きさをしているので小さすぎて攻撃が当たらないとかそういう心配はないが、攻撃できる位置まで下りてきてくれないとどうにもならないのが面倒な点か。


 しばらく動きを見ながら様子をうかがっていると、こっちに飛びかかってくる蝙蝠の姿があったので思い切って山賊刀を振りかぶり、一撃を入れる。斬れた感覚が手に残り、たしかに翼を斬ったらしい蝙蝠が足元に横たわる。そのまま突き刺してトドメを刺すと、前情報通り魔石をくれた。


 その後にも複数回近寄ってくるブラッドバットかビッグバット、どっちがどっちかは戦ってみるか近寄ってみるまで解らないが、ここで出現する二種類のモンスターがパタパタとはためいては時々こちらに襲いに来る。フンは時々落としてくるらしい。


 しかし、頭の上にさえいなければ問題ないので出来るだけ下をくぐらないようにしている。頭の上を通り抜けてフンをわざわざ爆撃しようものなら憤慨するところだが、わざわざそうする理由もないようで、頭の上にフンを落としに来るよりも直接噛みつきに来る方が数は多い。


 なお、倒したどちらかのバットは魔石は必ず落とすようになっているのでここで遠距離攻撃手段が使えるなら稼ぐのは充分有りなのではないだろうか。まだ持ちえぬ遠距離攻撃スキルだが、使えるようになるなら使いたいのは男の子の夢みたいなものだろう。


 そういえば、さっきのサラマンダーもそうだがこいつらは何か特殊なアイテムを落としたりするんだろうか。蝙蝠たちバットシリーズは魔石が確実に落ちるのでそれだけでも充分美味しいが、それにも輪をかけて美味しくなる何かが落ちるならそれに越したことはない。これも帰ったら調べておこうか。


 彩花が中々戦えないストレスを徐々に感じ始めているものの、それ以外は特に問題なく進めている現状、下手に刺激したりするのは得策ではないだろう。さて、この調子で八層を抜ければ残りは九層と十層、二つの階層を抜けるだけ……と思っていたが、ここでちょっとしたアクシデントが発生した。


 おそらく八層と九層の間になる所だと思うのだが、ここにバット達が密集している。まるで、誰かが八層から九層へ抜けたのを追いかけていったが、層を跨いで移動できないモンスターがそこで詰まっているかのような現象を見ることになった。数はそこそこ多い。三匹ぐらいならそれぞれで対応して終わりで済むところだが、明らかに三十匹以上存在する。


「どうする? あれ」


「そのまま通り抜けるつもりで突破するか、倒して突破するかって意味だよな」


「数としてはおそらくそこまで苦戦する数ではないけど、面倒ね」


「とりあえず少しずつ減らしていくしかないんじゃないか? その辺の石でも投げて順番にこっちに意識を向けてくれてくれるように祈るしかないな」


「じゃあその方針で行こう。面倒くさいがまとめて倒す手段がない以上少しずつ削っていくしかないな」


 適当に石を拾い、どっちかバットに向けて投げつける。こっちの投石に気づいた蝙蝠たちが少しずつこちらに向かってくるので、それを地道に倒していく。まったく、誰だよこんな面倒くさい場所作り上げたの。


 三十分ぐらいかけて順番に蝙蝠たちを倒し終わって、大量の魔石ドロップを得たところでようやく道が開けた。


「ふぅ、やっと倒し終わったか。まとめて倒す手段がないとこんなに面倒なんだな。他の階層では味わえなかった貴重な体験とでもしておくかな」


「しかし、どうしてこんなところに詰まってたんだろうな。モンスターが階層をわたれない訳じゃないだろうに……もしかして、浅い階層には移れるけど深い階層には移動できないとか、そういうのかもしれないな。帰ったら調べてみるか」


 モンスターが下から上まで上がってくる現象はモンスターのいわゆる"あふれ"の現象として認識はされているものの、その逆の現象、生息階層より深いところへ行こうとするのはストッパーがかかっているのかもしれない。


 実際に、ここで詰まっていたのがその証拠でもあるので、戦い始める前に写真でもとっておけばよかったかな。


「まぁ、無事に倒せたんだ、後はのんびり九層に行くことにしよう。ここでモンスターが詰まっていた以上、ここから先が九層である可能性は高い。むしろ、そうじゃないと詰まっていた原因がわからなくなるからな。後二階層、しっかり潜って今日のノルマをこなして帰ろう」


 隆介が前向きな発言で活をいれてくる。言う通りではあるんだが、八層は思ったより苦戦しなかったな、という感想が残った。


 むしろ、詰まっていたモンスター退治で予定より効率よく、そして懐に確かな満足をくれたのは間違いない。ありがとう、なんとかバットたち。結局違いとか大きさによる戦いにくさとかを比べる暇も余裕もなかったが、美味しい魔石をたくさんくれたことだけは間違いない。


 階層間のモンスターの詰まりを解消したところで先へ進む。数歩進んでモンスターが詰まっていた地点を抜けると、空気がまた冷たくひんやりとしたものになり、湿気をまとって体にへばりつくようになった。ここから九層、ということには間違いないらしい。


「なんかひんやりして……カビ臭そうなエリアね」


「実際出てくるモンスターもキノコだしな。育ちの良さそうなマップだ」


「ここは結構長丁場らしいから、のんびり進んでもいいし、早めに潜り抜けて十層へ急いでしまうのも有りだな。モンスタードロップは食用キノコらしいし、キノコ鍋を作る予定がなければモンスターにそれほど執着する必要はない。とマップに書いてある」


 九層と十層を比べたら十層のほうが稼ぎやすかったりするんだろうか。それともみんなそんなにキノコ好きじゃないんだろうか。十層から九層に上がってきて狩りをするにしても、もっとワープポータルに近いところで狩りをするだろうから、九層に入ったばかりのこのあたりでは他の探索者と出会うこともないのかもしれないな。


 他の探索者がどのぐらい潜り込んでいるかは解らないが、九層はそれなりに人気らしいしその内何処かのパーティーとすれ違うだろう。


 九層をしばらく歩く。マップはひんやりと冷たい、所々に水も滴るマップだが、鍾乳石のようなものはないらしい。ただ、イメージ的には鍾乳洞になりかけのマップ、というところだろうか。明かりがなくてもそこそこ明るいのは壁に生えているヒカリゴケの一種らしいもののおかげらしく、これが光ってくれていることで両手を空けた状態で探索が出来る。


 他の探索者の邪魔をしないように、このコケの採取は原則禁じられているらしい。明かりを失わせて損をするのは自分達だし、わざわざダンジョンの難易度を上げるようなことをするのは愚か者のやることだ。指先でちょんちょんと触ってありがたさを感じ取るぐらいならしてもいいだろうな。


 明るくしてくれていてありがとう。おかげで今日も元気に探索が出来るよ。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
>>フンをわざわざ爆撃しようものなら憤慨するところ まさに糞害(誰がうまいことを言えと(´・ω・`)
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