第101話:調べもの、まとめて
彩花が帰った後、一人夕飯を作り始める。パスタは主食だからそれはまあ置いといて、野菜炒めを作り、そこにパスタを投入して、ゆで汁で軽く出汁を溶かして、全体に味をなじませて、スープパスタ風にした野菜炒めを作り、いただきますをして食べる。
「そういえば、ダンジョンのほうは何層まで出来てるんだ? 今日は六層まで駅前ダンジョンを潜ってきたけど、こっちの方は何処まで進んでいるのかなと思って」
「そうね、大体九層の初めあたりまではできているかしら。十層はまだだし、ワープポータルも設置してないから一息つくところまではまだできてない、というのが正直なところね。だから奥まで目指すならもう少し待ってもらって、結城さんと一緒に十層まで潜り込んでワープして帰ってくるのが近道と言えばそうなるわ。そこまで求めなくてもいいから途中までで訓練しておきたい、というなら今でも潜って充分な利益やそれなりの訓練強度は見込めるとは思うけれど、深く潜るなりに面倒も多いわよ」
九層の頭までか。ということは、八層までは問題なく潜れると考えていいわけだな。一人で潜るかどうかはさておき、程よく稼ぐには問題ないだけの広さはあるらしい。これで一人でやることがないときにふらりと立ち寄って食費を稼ぐなりできるようになっているってことか。
そういえば、樹液を持ち帰ってきたんだったな。食パンはさすがに無いが、試しにとスプーンに一さじ舐めてみる。すると、メープルシロップとはまた一風違った風味、そして存分に味わえる甘味が脳を支配する。これがレッサートレントの樹液の美味しさか。もしかしたら普通のトレントの樹液もあったりするのかな。
そういえば、その辺も含めてまとめて調べておこうと思ったことがいくつもあったのを思い出す。まとめて調べて何かに書きとどめておこう。
食事を終えて片づけをして風呂に入り、ホカホカの状態になってから早速スマホでポチポチと検索する。パソコンとワイファイがあればいいんだろうが、そんな贅沢なものをこんな狭いアパートに引いて独占するほどの財力はまだ持ち合わせてない。スマホで自由にネットが見れるだけでも充分役には立つ。パソコンはあるに越したことはないだろうが、初期投資がそれなりに大きい。
武器一本買えるぐらいの金が溜まって、ネット回線も引けるようになった頃に考えればいいだろう。少なくとも大学生になるまではいいかな。さて、調べることは……まずはモンスターの魔石のドロップ率か。それから後は順次思い出したことを調べていこう。
まずは魔石とモンスターの強さの相関関係だが、モンスターはある一定以上の強さを持っていると、確定で魔石を落とすように、もしくはドロップ率が向上していくらしい。つまり、奥に潜れば潜るほど稼げる仕組みになっている訳だな。深く潜ってオケラで帰ってくる可能性は低い、ということになる。
また、十層までの間でも体感できる、というか実際体感してきたんだが、スケルトンあたりから魔石のドロップ率が少しずつ上がっていくのは間違いないようだ。これもきちんと統計的な情報として記録されているのでほぼ間違いないらしい。
ということは、自分達だけで独占できる、という理由以外で専用ダンジョンを用意してもらうのはそれほど効率がいいとは言えなくなるのか、それとも経験値稼ぎの場としてのみ存在してもらい、残りの内の魔石のドロップ率100%という機能はあってもなくても変わらない、ということになるんだろうか。
まあ、魔石以外のドロップ率が10倍ほどある、というのは美味しさのポイントではあるので、樹液がたくさんほしかったり肉をたくさん集めたり……と色々楽しむことはできるだろうからその点は大きく心配しなくてもいいのか。
後、今日の気づきで得たスケルトンだが、やはり雷攻撃と言っても実際の電撃や雷撃といった具合の雷ではなく、エネルギーボルトというべき種類の攻撃手段であるらしい。
より細かく言うなら、モンスターが持っている生命力そのものを電気的なイメージの形で絞り出している物であり、そもそもアンデッドであるスケルトンに生命力云々の話はどうなのかとか、生命力を搾り取った結果アンデッドになっているのか、それともアンデッドという概念自体が通用するものなのかどうか、という俗説が出ては消えてを繰り返しているらしい。
細かいことはどうでもいいが、そんなわけで雷スケルトンの雷撃を受けてもスマホに通電して故障するような仕組みにはなっていないらしい。結果が良ければ細かいことはどうでもいい、という派にはそれで通用するので、実際のところはどういうものなのかは学者が考えればいいと今読んでいるサイトでは結論づけている。
よくわからんが、スマホの心配はしなくていいらしい、というのだけわかればそれでいいだろう。直撃さえ受けなければ問題なし、ということだな。さあ、これで二つ確実によくわからないものは謎が解けたようなものだ。後は今後現れるであろうモンスターについての情報だな。七層八層のモンスターの話をしっかり頭に叩き込んでいこう。
七層ではリザードマンが生息する環境のように、少し暑くなるらしい。そして、その熱気に耐えうるサラマンダーというトカゲのようなモンスターが現れる。攻撃手段は二枚ある舌を上手に使い、転ばしてこちらに引き寄せ、そして堅い顎でかじってくるようだ。人間の骨ぐらいなら軽くかみ砕いてしまうほどの顎の力があり、油断すると一瞬で餌食になるので注意が必要とある。
弱点はあえて言うなら全身だが、眉間あたりは皮膚が硬く分厚くなっているので、狙うならそこ以外を狙うと良いということらしい。つまり、引き寄せられてとっさに武器で反撃したところの位置が一番堅い部分に当たりやすい、ということでもあるんだろう。
ドロップは魔石と、サラマンダーの革をドロップするらしい。革は既になめしてあり、充分な薄さと頑丈さを兼ね備えていて、探索者向けの手袋や革鎧等に使われているらしい。今度気が向いたら探索者用品店でよく見て確かめてみよう。それなりのお値段と頑丈さはしそうだし、本当に使い道が多種多様なら他の用途でも使われていそうだ。
続いて八層。八層では気温や湿度も通常に戻るが、出てくるモンスターはブラッドバット・ビッグバットという名前の二種類の蝙蝠らしい。ブラッドバットは一メートルから二メートル、ビッグバットのほうは二メートルを超える大きさで、天井にぶら下がってはフンをおとしてきたり、集団で集まって噛みつきに来るなど集団戦を強いられる様子だ。
頭の上にいられる分だけ下りてくるまで攻撃できないので、無視するか気合を入れて倒すかしかないらしい。倒すとドロップ品は魔石を確定でくれるのが特徴らしい特徴のようだ。ここで確定ドロップがもう来てしまうのか。ちょっと惜しいな。
九層では、一風変わって森の中のようなマップになり、足元こそ危ういものの、そこまではっきりと歩きづらいとまではいかないようで一安心だな。そして出てくるモンスターはマイコニドというキノコ型モンスター。ドロップはいろんな食用キノコを落としてくれるらしく、全てが可食品で危険なキノコは一切落とさないが、マツタケやトリュフのような高級キノコを落とすこともないらしい。
十層から逆に九層へ来て、帰りにキノコ鍋を楽しみにして帰る探索者も多いそうだ。ちなみにキノコも魔石も確定ドロップではないのが九層のちょっとした特殊な理由の様子。また、モンスター数もそれなりに多く、また九層という深めの階層の割に戦いやすく弱めのモンスターであるため、十層周辺の探索者の中では人気の階層になっているらしい。
九層まで潜れたら十層まで潜り込んで、そのままワープポータルで帰りたいところだな。そして十層だが、シャドウウルフという一般モンスターと、こちらはボス部屋にいるとされるオルトロス……二つ首をもつ獣のモンスターだ。この階層は獣というか犬がメインの階層となっている。
シャドウウルフは影に入れるわけではないが、その黒い毛並みのおかげで視認しにくく、また動きも素早いので厄介な相手ということにはなっている。素早いだけならレベル差でなんとか覆せるからそれほど問題にはなりそうにないな。
十層までで問題になりそうなのはボスのオルトロスと、八層のブラッドバット、ビッグバットあたりになるだろうか。こっちから遠距離で攻撃できないというのは不便だ。何とかして遠距離攻撃の手段を獲得するか、戦わずにさっさと抜けていくことが必要になるだろうな。
また、十層おきに存在するとされているワープポータルから半径50メートルほどの間はモンスターも意図的に寄せ付けない限りは近づかない不思議空間となっており、安全なワープポータルの利用ができるようになっている。
意図的にというのは、ギリギリ十層にたどり着いて必死にワープポータルから一層へ逃げ出そうとして、ワープポータル周辺で休憩や食事をしている探索者にモンスターをなすりつけようとするとか、そういう行為のことを指すらしく、これもダンジョンの利用の上ではトレイン行為と呼び厳密に禁止されているので、やる時は必死にヘルプを頼んで、モンスターが倒せるまではその場に居続けることが義務とされている。
しかし、そこまでギリギリの戦いをして戦ってきて十層に逃げ帰ってきても、次に十層に来る時はまた同じモンスターを相手しなければならないのだからブックマークを作る意味はそれほどないのではないかとも考えられるが、さてどうなんだろう。このあたりは実際に自分で行ってみないとわからないか。
とりあえず夏休みの目標として十層までたどり着く、というのを掲げている以上、ここまでは行かなきゃいけないんだよな。しっかり頭に入れておいて、動画なんかも見て攻撃パターンや攻撃方法、それから対処方法について学んでおこう。とりあえずそれをきっちりやってから、今夜は寝るかな。
もうちょっとだけ、もうちょっとだけ。このもうちょっとを積み重ねてより無駄のない動きや行動が取れるなら、それは必要な分だと言えるだろう。さて、寝落ちするかもしれないが、横になりながらしっかり動画内の動きを見つめておこう。
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