第七話 庭園の甘い朝
翌朝、庭園には柔らかな朝日が差し込み、緑の葉が金色に輝いていた。
リリィはまだ昨夜の出来事の余韻で少し緊張していた。
耳を伏せ、尻尾を小さく揺らしながら歩く。
「……本当に、私でいいのかな……」
心の奥で、昨日のシルヴィアの言葉がよみがえる。
「弱くて、役立たず……そんな小娘が婚約者だなんて……」
胸がぎゅっと締め付けられ、リリィは自分に自信が持てなくなる。
---
庭園で静かに訓練を見守っているリリィに、カインが近づく。
金色の瞳が、まるで心の奥を透かすかのようにじっと彼女を見つめた。
「リリィ……何を考えている?」
声は低く、しかし優しさに満ちている。
リリィは耳を伏せ、目を逸らす。
「……えっと……あの、私……本当にカイン様の婚約者としてふさわしいのか……」
小さな声で打ち明ける。心の奥の不安がついに漏れた瞬間だった。
カインはリリィの手をそっと握る。
「我が選んだのはおまえだ。リリィでなければならぬ」
その声に、リリィは思わず耳をぴんと立て、頬が赤く染まる。
「おまえが弱くても、頼りなくても……我にはおまえ以外見えぬ」
カインの手は温かく、力強く、リリィの心の奥まで届くようだった。
「おまえのすべてが、我にとって大切なのだ」
リリィは小さく頷き、胸にじんわりと温かさが広がる。
「カイン様……ありがとうございます……」
耳と尻尾を柔らかく揺らし、震えもほとんど消えていた。
---
その後も、部下たちは訓練を続けていたが、リリィはもう恐怖に怯えることはなかった。
カインの手がそっと自分の手に触れていることが、どんな守りよりも安心できる盾になっていた。
「これからも共にいるのだ、我とおまえは」
カインの言葉に、リリィは小さく微笑む。
耳と尻尾を揺らす猫獣人の姿は、守られている幸福感と甘い信頼に包まれていた。




