第十五話 甘く導かれる夜
夕暮れの城、暖炉の火が揺れる書斎で、リリィは静かにため息をついた。
まだ人型に完全に戻れず、耳と尻尾はそのまま。
「どうして……私はまだ……」
胸の奥で焦りと渇望が渦巻く。
カインはそっと隣に座り、リリィの手を自分の手で包んだ。
「リリィ……焦る必要はない。おまえは十分に愛されている」
耳を撫で、尻尾を優しく包む。リリィの体が小さく震え、心が甘く蕩ける。
---
「でも……カイン様のそばにいると、私……もっとちゃんとしなきゃって…」
弱々しい声に、カインはそっとリリィの頬に唇を当て、低く囁く。
「ならば、少しずつでいい。我が手で導いてやる。焦る必要はない」
カインはリリィの肩に手を回し、体を少し引き寄せて膝に座らせる。
「まずは姿勢を意識するんだ。背筋を伸ばし、胸を少し前に出すだけで、人型の感覚が少しずつ掴める」
リリィは耳をピクピクと動かしながら頷き、カインの指示通り姿勢を正す。
「それだけでも、おまえは十分に美しく、我のそばにふさわしい」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。
---
「次に手や足の動きも意識するんだ。尻尾の動きを制御するのではなく、自然に揺れる感覚を受け入れる。そうすることで、体のバランスが整い、人型に近づく」
カインの指で耳や尻尾を優しく触れられながら、リリィは小さく体を揺らして練習する。
「上手だ、リリィ……そのまま我に身を任せろ」
デコにそっとキスを落とし、頭、頬、唇へと順に優しく触れるカイン。
「弱さも、未熟さも……すべて我は愛している」
リリィは耳を後ろに倒し、尻尾を小刻みに揺らしながら甘く蕩ける。
---
「我の指示に従いながら、自分を信じるんだ。焦らず、少しずつ……おまえは必ず近づける」
カインは最後に唇を重ね、短く深いキスを落とす。
「おまえは我だけのものだ、リリィ……忘れるな」
リリィは甘く蕩けながらも、心の奥で小さく誓う。
「私……カイン様のそばで、もっと近くにいたい……」
---
夜の書斎には二人だけの甘く濃密な時間が流れた。
カインの独占的な愛と具体的な導きに包まれ、リリィは少しずつ、自分が人型に近づける未来を信じられるようになっていった。




