第6章「微笑みの裏にある過去」
優は口を開けたまま、呆然としていた。
全身が震え、冷たい汗が頬を伝う。
見開いた瞳は、まばたきすら忘れていた。
(やっぱり……! この世界、本当に「魔法」があるのか!?)
突然、静寂が破られた。
「うわぁぁぁ! すごい! もう一回やって!」
子供たちの歓声が一斉に響き渡る。
優は頬をかきながら、ため息まじりに呟いた。
(やっぱり……世界のどこでも、子供が同じってわけじゃないのかもな……)
丘の上では、焔羅も優と同じように息を切らしていた。
呼吸は荒く、空気が重い。
筋肉は硬直し、熱い汗が流れ落ちた。
胸の奥では、心臓が激しく脈打っている。
地面に突き立てた斧に両手をかけ、膝をついたまま、焔羅は苦笑した。
「はぁ……いつも思うけど、これを使うと本当に疲れるな……」
その瞬間、焔羅の脳裏に、一つの記憶がよぎった。
陽光が木々の隙間から差し込み、黄金色の輝きが葉を染める。
風は穏やかで、まるで囁くように心を撫でた。
灰色の髪の男が、幼い少年の頭を優しく撫でている。
「筋肉が痛くても、背負う荷が重くても――お前は強くあれ。皆のために、強くなるんだ」
男は真っ直ぐに少年を見つめ、力強く言った。
「この村に、最も美しく、最も長く続く夜明けをもたらせ」
「うん、父さん! 約束する! 一番きれいな夜明けを、みんなに見せてみせる!」
少年は顎を上げ、決意に満ちた瞳で父を見返した。
ふたりの笑顔は、太陽の光そのもののように輝いていた。
やがて父の姿は淡く光り、記憶の中で消えていく。
残ったのは、心の奥で響くあの声だけだった。
「……でも、こんなの、俺にとっちゃ大したことないさ!」
焔羅は笑顔を浮かべ、額の汗を拭い取ると、勢いよく斧を持ち上げた。
丘の上に子供たちが駆け上がってきて、焔羅の腕を引っ張りながら叫ぶ。
「訓練! 訓練! 約束したでしょ!」
焔羅は顎に手を当て、片眉を上げて言った。
「ん? そんな約束したっけ? ……何の日だったかな?」
その時、優、陽菜莉、春香が追いついてきた。
子供たちはなおも必死に懇願を続ける。
「お願いっ! お願いだから! 訓練してよ!」
焔羅は大きく息を吐き、頭をかきながら言った。
「はぁ……一日中外にいたし、腹も減ったしな。今はちょっと無理かもな……」
春香は腕を組み、悪戯っぽく微笑んだ。
「ふふっ、私と陽菜莉は朝から畑仕事だったからね〜」
彼女は顎に手を当て、軽く考える素振りをする。
「だから、夕食まではちょっと時間がかかるかも」
「うん! 今日は私がママを手伝うの!」
陽菜莉は嬉しそうに叫び、目を輝かせた。
焔羅は頬を赤らめ、少し視線を逸らしながらも笑った。
「わかった、降参だ……。でも、今日だけだからな!」
「やったぁぁぁぁ! 春香さん、最高ー!」
子供たちは歓声を上げ、跳ね回った。
春香は陽菜莉の手を取り、丘を降りていく。
「じゃあね、みんな! 気をつけて遊ぶのよ!」
優は心の中で呟いた。
(訓練……? どういう意味だ? まさか……魔法を教えてくれるのか!?)
恐怖はすっかり消え、胸の中を興奮が支配する。
筋肉の痛みも忘れ、優は焔羅のもとへ駆け寄った。
「お、俺も……! 俺も訓練に参加していいですか!?」
声は震え、頬は真っ赤だ。
焔羅は大笑いしながら、優しく優を見た。
「ははは! もちろんいいさ!」
優は顔を背けたまま、小さく息を呑む。
(ああ……あの目で見られると、なんか落ち着かない……。でも、それよりも楽しみだ! 早く始めたい!)
焔羅は声を張り上げた。
「よく聞け! この訓練は簡単じゃないぞ! 覚悟はできているか!」
優の瞳は輝き、好奇心と期待で満ちていた。
(うわぁ……どんな訓練なんだろう! 早く始まってほしい!)
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