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第24話:禁断の祭壇

第24話:禁断の祭壇

秘密の通路を抜けた先は、巨大なドーム状の空間だった。

部屋の中央には、黒曜石で作られた禍々しい祭壇が鎮座し、その表面には複雑な紋様が青白く明滅している。ここが、全ての元凶。そして、唯一の希望。


しかし、その希望を打ち砕くように、彼らを待ち構えていたのは、おびただしい数のヴァルカン兵だった。そして、その先頭に立つのは、銀髪をなびかせ、氷のような青い瞳を持つ、総大将ガイウス。


「ようやく来たか、紅玉の女王」

その声は、冬の湖面のように冷徹だった。

「その身で禁断の魔法に触れようとは…愚かで、危険な火種だ。ここで、その芽を摘ませてもらう」


「アリア姉ちゃん、逃げて!」

リラが叫ぶ。

しかし、もう遅い。ヴァルカン兵たちが、一行を包囲するように動き出す。


「アルバス、シルヴァ、リラを頼むわ!」

アリアナは、その美しい顔に悲壮な決意を浮かべ、祭壇へと駆け寄る。古文書の知識を元に、禁断の魔法の力を制御し、マナ汚染を浄化するための儀式を始めるためだ。

「ゼノ、私を守って。少し時間がかかるわ!」


彼女が、神聖な祈りの言葉を紡ぎ始めた、その瞬間だった。

「賢者と狩人、そしてあの小娘は俺たちが引き受ける。貴様らは、まず女王を捕らえよ!」

ガイウスの冷徹な命令が響く。


ゼノスは即座に剣を抜き、アリアナと祭壇の間に立ちはだかった。しかし、彼に迫るのは、ヴァルカンが誇る最強の騎士団。絶望的な戦力差だ。


「そうはさせるか!」

シルヴァが放った矢が、ヴァルカン兵の兜をかすめる。

「ったく、面倒なことになったな!」

アルバスが、詠唱を開始する。

「私も、ただじゃ転ばないんだから!」

リラが、パチンコを構える。


三人の仲間たちが、ゼノスの負担を減らすため、そしてアリアナの儀式を守るため、決死の覚悟でヴァルカン兵に立ち向かっていく。


ゼノスは、アリアナに迫る敵だけに、その全神経を集中させた。

彼の剣は漆黒の嵐となり、兵士たちを次々と斬り伏せる。しかし、敵の波は途切れない。彼の甲冑には次第に無数の傷が刻まれ、呼吸も荒くなっていく。


アリアナは詠唱を続けながらも、その心の半分は、傷ついていく仲間たち、そして何より、満身創痍で戦うゼノスに向けられていた。

(やめて、ゼノ!みんな!私のために、死なないで…!)

彼女の心が乱れ、儀式を司る魔力が、不安に呼応するように揺らいでしまう。


その一瞬の隙を、ガイウスは見逃さなかった。

彼は、仲間たちと戦うゼノスの背後をすり抜けると、一直線に、無防備なアリアナへと突撃する。


「アリア!」

ゼノスが気づき、振り返った時には、もう遅い。ガイウスの白銀の剣が、アリアナの白い喉元に突きつけられようとしていた。


(ここまで、なの…?)

アリアナの紅玉の瞳に、絶望の色が浮かんだ。


「陛下ァァァッ!!」


ゼノスの絶叫が、ドームにこだました。彼の脳裏に、貧民街で出会った幼い光の姿から、これまでの全ての思い出が、走馬灯のように駆け巡る。


次の瞬間、ゼノスは常人には不可能な速度で、アリアナとガイウスの間にその身を滑り込ませた。

だが、彼は剣を振るわなかった。


代わりに、彼はアリアナを背後から強く、そして壊れ物を抱きしめるかのように優しく、その腕の中に閉じ込めた。


「ゼノ…?」

何が起きたのか分からず、アリアナは彼の腕の中で息を呑む。逞しい胸板と、革鎧の匂い、そして彼の心臓の激しい鼓動が、背中から伝わってくる。


ゼノスは、アリアナを抱きしめたまま、自らの手を祭壇に強く押し付けた。そして、彼女の耳元で、囁いた。


「…たとえこの身がどうなろうと、私の光は、誰にも奪わせない」


その言葉が引き金だった。

祭壇から、黒と紅が混じり合った、禍々しい魔力の奔流が、ゼノスの体へと逆流していく。彼の全身が、苦痛と力に満ちた紅玉色の光に包まれた。ガイウスでさえ、その凄まじいエネルギーの奔流に思わず後ずさる。


ゼノスの絶叫と、彼の腕の中で名を叫ぶアリアナの悲鳴、そして、仲間たちの驚愕の声が重なり、ドーム全体が、世界が終わるかのような光に飲み込まれていった。

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