7 大うさぎ
ばあちゃんに剣や弓を教えてもらって半年以上になる。
僕は、自分の身は守れるようになってきた。
狩りも、1人でできるようになってきた。
気配を消し、標的に近づき、弓矢で足を止め、短剣でトドメをさす。
ひらかれた土地に出なければ、赤鷲からは気づかれない。
大猪は、盛大に怒気を放っているので、遠くからでも存在がわかる。
川の大渕の深いところまで泳いで行かなければ、大雷魚に襲われることもない。
大うさぎは、1人で狩れるようになってきた。
大うさぎといっても、馬鹿にしたものでもない。
体は人間のこどもほどもある。
頭から生えている角は、短いが鋭い。
動きはすばやく、ジャンプ力が普通ではない。
初めて1人で狩るときには、角にはくれぐれも気をつけろと、何度もばあちゃんに注意された。
大うさぎの角で大怪我する人間は多いと。
でも刺さらなかった。いきなりよけそこない腕に食い込んだけど、刺さるほどではなかった。
冷静になり、大うさぎの動きを見た。落ち着いて精気を静かに目に流すと、大うさぎの動きを捉えることができた。
大うさぎの突進を横にかわし、静かに剣を振り下ろすと、大うさぎは動きを止め、息絶えた。
精気を、自分の身体の必要な一箇所に、慎重に集中させるのには慣れてきた。
しかし、それを違う箇所にすみやかに移していくのには、集中力が必要で難しかった。
ばあちゃんに教えてもらいながら、大うさぎを解体した。
肉は食べ物になり、毛皮は服や敷物になり、角は強いヤジリになる。
余った肉は、煙でいぶして保存食になった。
自分たちを生かしてくれる生き物には感謝し、無駄な狩りはしなかった。