4 ばあちゃん
ズルズルと引きずられている。
足を引かれているので、後頭部が地面を引きずられている。
僕は意識が戻ってくると、「今度はどんな動物だ?」と、僕の足を引っぱる生き物を確認した。
派手な金色の毛皮の、ずんぐりむっくりした猿が、向こうを向いて僕の足を両肩にかついで引きずっていた。
猿からは緑色の湯気がにじんでいる。それはおだやかな雰囲気で、攻撃的な気配ではなかった。
「あのぉ~」
とまどいながら声をかけると、猿が振り向いた。
「なんじゃ、気がついたなら、はよ言わんか。重たいのに。」
振り向いた猿は、猿ではなく人間の老婆だった。
腰にツルで編んだ大きなカゴをつけ、色鮮やかな数珠や首飾りをぶら下げている。
「ばあちゃん、助けてくれたのか?」
「あんなとこで寝てたら、すぐに喰われてしまうぞ。このあたりには、腹をすかせた獣が、わんさとおる。」
ばあちゃんが、厳しい顔で言う。
「なんか、お口に合わないみたいだけど…。」
僕がうんざりして、つぶやく。
「ん?」
ばあちゃんが、首を傾げる。
「まあ、よい。とにかく、ウチに来て休め。歩けるか?」
僕は立ち上がって、体をたしかめる。
「ああ、なんともないみたいだ。」
僕は、ばあちゃんに着いて行った。
大きな岩がゴロゴロしているところを登ると、頂上に大きな木が見えてきた。
幹がとても太く、枝も太く、横に大きく広がっている。幹にはツルがすだれのように大量にぶら下がっている。
ばあちゃんは、ツルのすだれをかき分けて中に入っていく。
僕がおどろいて大木に見とれていると、ばあちゃんがツルの中から顔だけを出した。
「はよこい。」
「う、うん。」
僕は、ばあちゃんに続いて、大木の中に入っていった。
中は薄暗いが、上から光がさしているので、見えないことはない。
いろいろな袋や、縄や、木の箱などが、大量に置かれている。その間を通ってばあちゃんについていく。
なだらかな階段が、木の内側を回るようにのぼっている。階段をのぼりきると、広いところに出た。大木が大きく枝を広げた中心が広くなっており、そこに板を敷き、柱を立て、屋根をかけてあった。周りは木の枝と葉のカーテンで、森の中のおだやかな光が満ちていた。