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チー牛転生 〜イケメンになってもガチ陰キャ〜  作者: チー牛皆伝
第3章 学園2年編
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第79話 チー牛の初めてのデート?

今回は長めかも

 


 帰省してすぐに1週間が経った。早いものだな。


 結局、稽古とトレーニング以外はずっとだらだらしていた。でも、田舎の自然は堪能できたし満足だ。


 田舎は良い、野菜は美味いし、「虫も可愛い。特にトンボ、この世界にもいるけど、マジで可愛い。あのキュートな目、あの凛々しい飛んでいる姿、警戒心も無く指に止まってくる姿。


 人間と違って、本能で生き、何も裏表などないから、ほんと好きだ。動物はもっと可愛い。犬とか、鳥とか、飼い主に嘘偽りなく、懐いてくれる。嬉しいときは表情や行動で示す。怒るときは怒る。


「人間は嬉しそうでも、実はそう装ってるだけかもしれないし、言葉で優しくしてても裏では悪く思ってるかもしれない。めんどくさいんだよマジで。まあその話は今はいいや。


 それに、久しぶりの父さんの料理も美味かったしな。ユリアの料理とはまた違った、実家!って感じの味だ。……語彙力を俺に期待するな。


 俺はのんびりできたし、帰ろうと思うが、レッドはまだ修行のために残るらしい。ユリアは俺と一緒に王都に戻るそうだ。


 レッドは「それじゃ、また夏休み明けにな」とだけ言って、すぐに稽古に励んでいた。父さんは「また来年も来いよ」と俺たちに別れを告げ、稽古を再開している。レッドがどれくらい成長するのか、楽しみじゃないけど……まあ、ちょっとだけ楽しみだな。


 そして俺とユリアは馬車に乗り、王都へ帰るのだった。



 ---



 王都へ帰ってきた。王都はいつも通り人でにぎやかだった。


 久しぶりに戻ったし、王都の賑やかさもいいかな……って思いたかったけど、全然そんなことなかった。また人酔いしそうになった。ユリアに念のため治癒魔法をかけてもらいながら寮に着く。


 でも、寮に帰ると懐かしさは出てきたな。やっぱ自分の部屋は落ち着くよなあ。俺は部屋に入ってすぐにベッドにダイブした。実家に帰っても、寮に帰っても、やることは同じ。結局ダラダラするだけだ。


 ああ最高……。もう何もしたくない……。で、なぜかユリアも俺の部屋に入ってくる。


 もうやめましょうよ!そうやって平然と俺の部屋に入ってくるのは!どうせ俺が勝手にユリアの部屋に入ったら怒るんだろ!?


「もう、チー君は寮に帰ってきてもそうやってだらけて……」


「え、あ、でも、やることないじゃないすか」


「やることって……」


 ユリアは少し困ったように首を傾げた。ゲームがあれば間違いなく没頭出来ていた。この世界は剣技はあるからなのか、スポーツがない。本当に娯楽が少ないものだ。


 だから大体の人は、商売やギルド活動、料理、学園なんかで時間を潰してる。それと俺はユリアにも物申す。


「あと当たり前のように俺の部屋に入ってこないでもらえますか」


「ひどい!別にいいじゃん……チー君も一人じゃ寂しいでしょ。それに話したいこともあるし」


「話したい事?」


「その、ね?一緒に出掛けたりとか、しない?い、嫌ならいいんだけどさ」


「え」


 ユリアはちょっと目を逸らしつつ、手をもじもじさせながら提案してくる。……可愛い。……まるでデートの誘いみたいだ。


 でも勘違いはしない。そりゃ、俺はあくまで騎士としてしか見られていないし、誰だって誘う時は緊張するもんだ。しかも異性なわけだし、仕方ない。


 ユリアにとって、気軽に話せる人が、今は俺しかいない。レッドは俺の実家に残っているし、ネクラもクラウドもサンも帰省中だ。俺はいつだって状況を見て分析するのだ。


 まあ、誘い自体は、多少暇は潰せるしいいんだけどさ。少しくらいは。


「あ、はい。暇ですし、えっと、大丈夫です」


「……やった!そしたら行こ!?」


 ユリアは目を輝かせて自分の部屋に戻り、準備し始める。う~ん、まあ喜んでくれてるっぽいし、いいか。ほんと、俺といて何が楽しいんだか……。俺はワクワクしているユリアに黙ってついて行った。



 ------



 俺とユリアは賑やかな王都の街をゆっくりと歩いて行く。ユリアの斜め後ろあたりを、絶妙な距離感で歩いていたが、そもそもどこに向かっているのか分からない。


「あの、ユリア……」


「なあに?」


「結局今ってどこに行ってるんですか」


「う~ん、適当!」


 はあ? 暇つぶしになるかと思って出てきたのに、ただの散歩かよ。しかもユリアを歩かせたら、超絶方向音痴が発動しかねない。


「あ、チー君はどっか行きたいところあったりする?」


「あると思いますか」


「むー……確かに……とりあえず、適当にぶらぶらしよ?服屋とかもいいかも」


「え、あ、はい」


 大丈夫かなあ……。



 ------



 今は、ユリアが目につけた服屋に来ている。


「見てチー君!これ似合うと思う?」


「あ、はい」


「じゃあこれは?」


「あ、はい」


「適当に言ってない?」


「あ、はい」


「ちゃんと見てよお!」


 ユリアがいろんな服を見て、俺に似合うか聞いてくる。これ完全にデートじゃねえか。


 で、人とまともに目を合わせることもできない俺は、ユリアを直視できるわけもなく、適当に返事を繰り返していた。


 ユリアが拗ねてプンプンしてる。可愛い。


「あ、そうだ、チー君の服も見ようよ!いつも制服着てるけどさ、もっとおしゃれしよ?」


「いや、あの、めんどいんで……」


「これなんかどう?」


「聞いてねえし……」


 ユリアは楽しそうに、俺に服をいろいろと持ってくる。まあ、楽しそうだし、いっか。



 ------



 店を出て、俺はあたりを見回す。


 まあ、異世界にしてはいろんな店があるよなあ。八百屋とか、いろんな飲食店、この服屋とか。


「チー君?何見てるの?」


「え、あ、別に」


「ふ~ん?」


 ただ街中を見てるだけなのだが。へえ、カジノっぽい施設もあるんだなあ。ギャンブルはどの世界でもあるんだなあ。


 カジノ店の隣には、ほう、あれは……。


「ち、チー君見ちゃダメ!」


「うお」


 急にユリアが俺の目を両手で隠してきた。なんなんだこいつは。俺は慌てているユリアに問いかける。


「え、なんすか?何を見ちゃダメって」


「あ、ああいうお店は見ちゃダメ!」


 ……あ、なるほど。カジノ店の隣の風俗店か。“えっちなのはメ!”的なノリか?別にいいじゃん。ていうかちょっと目がいてえ。


「別に見るくらいよくないっすか? いろんな店が視界に入るだけだし。なんでダメなんすか」


「え、いや、ダメじゃないんだけど……なんで、だろう。チー君がああいうの見るの、嫌っていうか……な、なんでもない!」


 ……なんなんだ?



 ------



 その後も色々と見ていたのだが、ちょっと見たことのある道まで来ていた。ここら辺って、確かリングを買った魔道具店があったよな。


 あの怖そうな店主、俺の店を紹介してくれよ?とか言ってたし、ちょうどいいから、ユリアを連れてってみるか。


「ユリア、ちょっといいすか」


「ん?どうしたの?」


「ユリアに紹介したい店があるんすけど」


「え?なになに?気になるな~」


 しばらく俺が先頭で歩く。道は何となく覚えているからな。ということで着いた。


「ここです」


「……魔道具店?」


 ユリアは意外そうに店に入っていく。中は以前来たときと、ほとんど変わっていなかった。客もいまだに少ないままだ。店主が俺たちを見て、挨拶をする。


「いらっしゃい。おお、お前か。彼女いたんだな」


「違います」


 俺は速攻否定する。ぐ、やっぱ二人でいるから勘違いされやすいな。ユリアも、いつも通り否定してくれよ。ていうか、街中でクラスメイトとでもすれ違ってたらどうしよう!夏休み明けに俺とユリアが一緒に歩いてるなんて噂が広まったら……ひいいいいいい!目立ちたくない!


「……お、おい、どうした、お前。めっちゃ顔青白いが」


「……あ、いえ、なんでもないです。えと、約束通り、その、連れてきました」


 俺はすぐに正気を戻して店主と話す。


「切替速いな……にしても、嬉しいね。お前の事ちょっと信用無かったが、ほんとにひいきにしてくれるとはな。リングもお前に預けた甲斐があるってもんよ」


 店主は嬉しそうに笑っている。まあ、普段ちょっと怖いけど、悪い奴じゃないしな。あと、ついでだよついで。ちょうど魔法師がいるから連れて来ただけ。


 ユリアはぐるぐると魔道具を見て回っていたが、感心してつぶやく。


「す、すごいね。このお店の商品、全部質が良い。チー君すごいお店見つけたんだね」


「人通りの少ない場所へと進んでいったら、たまたま見つけた」


「あ、あはは、そうなんだあ……」


 ユリアが苦笑いしている。


「じゃあ、この杖ください」


「おうよ。10万ウェンだ……ずいぶん金持ってるんだな」


 普通にそんな大金を出すユリアにちょっと引いている店主。まあ、元王族だし、メイドからけっこうもらっているっぽいから。


 ユリアが買ったのは迷宮の中層で取れると言われる純マリョクコウ100%で作られた質の良い杖だった。マリョクコウは、ミスリルに次ぐ魔素伝導率を誇る。


 ユリアはちゃんとそういうのも判断して買ったようだ。魔法の才のあるユリアにはちょうどいいだろうな。


「じゃあ、また頼むよ」


「ありがとうございました。じゃあ行こ?チー君」


 ユリアに手を引かれたそのとき、店主が“待った”をかける。


「待った、お嬢ちゃん、ちょっとそいつ借りていいか?」


「え?はい、じゃあ先に外で待ってるね」


 そう言ってユリアは店の外に出る。……めちゃくちゃ怖いんだけど……。何言われるん?俺なんかした?俺は冷や汗をかいて、どんどん鼓動が速くなる。


「おい待て待て、なんでそんなにビビってるんだ、ちょっと話があるだけなのに」


 店主が俺の様子を見て心配そうになだめてくる。なんの話だ?


「えっと、なんでしょうか」


「ああ、あの嬢ちゃんの事、大事にするんだぞ」


「……え、あ、なんで?」


「なんでって……その顔、まさかお前、あの嬢ちゃんの好意に……はあ。まあいいや、とりあえず頑張れよ」


「あ、はい」


 何だったんだ……?



 ------



 その後、ユリアと一緒に、斜め後ろをキープしながら寮へと帰っていった。ユリアは俺に振り返る。


「楽しかったね、チー君。チー君の紹介してくれたお店で買ったこれ、大事にするね!」


「え、あ、はい」


 まあ、高い金出したんだし大事にしないともったいないだろうさ。


「この杖に、名前つけてあげようかな〜」


 なんでやねん。杖は杖やろがい。まあ、ユリアはいつも以上に楽しそうだしええわ。俺もまあ、暇も潰せたし、ちょっとは楽しかったかもな。




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