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チー牛転生 〜イケメンになってもガチ陰キャ〜  作者: チー牛皆伝
第3章 学園2年編
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第103話 チー牛はチートに恐怖する

 


「誰だ貴様は」


「え、いや、その……」


「……」


 貫禄のある声と、話し方が怖くてビビってしまう俺。そんな俺を呆れているかのような冷たい目で見てくるおっさん。やめちくり。


「師匠、気を付けてください、奴はブルーの父親で水流型を極めてるっす。この教室の空間のすべてが視えてるっす。でも、師匠ならやってくれるっすよね……?」


 ネクラは俺にアドバイスをくれる。そして過度な期待。やめちくり。


 てか、ブルーの父ってマジかよ。つまり、ブルーよりも強い……は?無理ゲーじゃね?おっさんは俺に完全に向き直り、敵意を向ける。


「ほう、で、貴様が次の相手か。ん?貴様、さっきあの姫を追った奴じゃないのか?戻って来たということは……。青龍を?いや、この、ひょろ長い小僧が……?あり得ん……まあいい。……で、名乗らないのはなぜだ」


 え、怖いから。信教徒は名乗るのがルールってのは本当のようだ。


「名乗らないと即刻斬る――」


「チー・オンターマです」


「ほう、チーオンターマ、オンターマ……?貴様の父は剣聖か。覚えているぞ。わしの身体に消えない傷を作った、憎きあの剣聖……」


「いや知らねえよ」


「んだと?」


「ひ!?」


 しまった。つい本音が声に出てしまった。かなり小声でつぶやいたはずなのに、聞こえたのか。水流型の剣士ってほんと恐ろしい。


「決めた。貴様から体を切り刻んでミンチにしてやろう。お前を殺した後は、貴様の父親だ」


 おっさんは完全に敵意むき出しの目で剣の構えを取り始めた。水流型、この空間の動きがすべて視える。ほう、ちょうどいいじゃん。未来予知じゃないだけマシじゃん。


 俺は、少し剣を前に出す。実際は、無詠唱で気づかれずに奴の足を氷漬けにする魔法を放っていた。


 いくら空間全体を視られる奴でも、身体に直接作用する無詠唱魔法は避けようがない。


 そして奴はまだ足が氷漬けになっていることに気づいていない。俺は速攻攻める。


 空間すべてが視えるやつには意味ないかもしれんが、できるだけステップでフェイントをかけながら。奴の間合いで俺は剣を振る。


 そして奴は剣で受け流そうとしたが、重心をずらすため足を動かそうとして……氷漬けになっていて動かないことに気づく。


「なに!?」


 それでも奴は身体をひねってギリギリでかわすも、肩に深い切り傷を受け、鮮血が飛び散った。


 体をひねってバランスを崩したところに、腹に追撃の蹴りを入れる。奴はごほっと吐きそうになるも、すぐに剣を振って、俺を遠ざける。


 ブルーの父親とは言っても、大したことは無いのか?こいつが歳のせいかな。




「貴様、貴様あ!親子そろって、わしに、傷を……くそっ!わしに本気を出させたことを後悔して逝くがいい!」


 おっさんはそう言って完全に雰囲気が変わる。先ほどよりも、精神を研ぎ澄ませ、全神経を戦いに集中させているような。本気か。怖いな。剣士との闘いは一発一発が一撃必殺みたいなもの。


 斬られたら、ほぼおしまいだ。特に、豆腐メンタルの俺には、多少斬られたくらいで、壮絶な痛みで一瞬にして戦意を喪失する。


 だから、絶対に、回避を優先しろ。一発でも食らえば負けだ。魔法師よりもかなりの緊張感を感じてしまう。


 そして、奴は剣聖。剣聖の本気だ。いくらおっさんでも、油断できない。俺はできるだけ、予備動作なく、奴に近づこうとした時だった。肩をポンと叩かれる。まずい!気づかなかった!殺される!……と思ったのだが、杞憂だった。


 後ろにいたのは、おっさんではなく……ブルーだった。おっさんもいつのまにか立ち尽くしていて、なぜそこにいるという驚いた顔をしていた。ブルーは俺の肩に手を置きながら話す。


「あとは僕に任せろ」


「え?」


 その時、俺は……ラッキーって思った。


「おなしゃす」


 俺はすぐに頼んで、ブルーの後ろに避難する。俺よりも強いブルーさんが代わりに戦ってくれるんだぜ?それに、ブルーの父親だからなんとなく戦いずらかったんだよな、本人が戦ってくれるなら、それで万事解決じゃん!


 ブルーはすぐにおっさんを睨む。


「お久しぶりですね、父さん、いや……ルー・ディザスタ」


「我が息子よ。父親に向かって名前呼びとは、舐めているのか?」


 さっそく親子喧嘩が始まりそうだった。


「そりゃあ、当たり前じゃないですか。僕を息子とも、人とも思ってもいなかったくせに。誰があなたを父と思うと?」


「言うようになったな。これはしつけが必要だな。貴様は黙ってわしの言うことを聞いて強さだけを求めればいい」


「お断りします。僕も吹っ切れました。あなたなんて家族じゃない。あなたを倒して、いや、殺して、あなたという呪縛から解放される」


 ルーの目がピクリと動く。


「わしを……殺すと?」


「はい。いまなら、余裕でしょうね」


「貴様……わしの言うことしか聞けないように、叩き直してやる」


「ああ、それと、僕の友人たちに手を出したんだ。ただじゃ済まさない」


「友人……だと?あれほど友人など作るな、邪魔な存在でしかないと忠告したのに、貴様は友人を作ったのか!痛い目に合わないと分からないようだな」


 どうやら、話は終わったようだ。なんだか複雑そうだなあ。普通に父親殺す宣言までしちゃってるし。ブルーさん目が怖いっすよ。


 ただ、ルーという父親もクズだ。自分の理想?を子供に押し付け、ずっと束縛してきたようだ。


 父を殺して自由を得る。……もしかして、これがブルーが前に言っていた“新しい目的”だったのかもしれない。この戦いでブルーの人生が大きく変わるだろう。


 てか、ブルーの友人ってだれのこと?(すっとぼけ)


「さあ。我が息子よ。かかってくるがいい。最初から本気で行くぞ」


「僕は本気を出すまでも無いですが」


「……き、貴様ぁ!」


 ブルーは手をひょいひょいと動かし、挑発するように招く。自分の息子にここまで馬鹿にされ、怒り狂ったルーは予備動作も無く一瞬でブルーに近づき、剣を振りかけた。


 え、水流型が攻めたらそれは……。剣を振る前から、ブルーはわかっていたかのように、剣を流れるように振っていた。


 ルーの剣を持っていた手が宙に舞っていた。ルーはそのまま地面を引きずって倒れ込み、手首を切り飛ばされ発狂している。ブルーは薄くにやりと笑い、ルーに近づいて、言い放つ。


「あれ?あなたが言いましたよね?戦場に感情は必要ないと。僕の感情まで奪って。なのに、今、バカなあなたは僕の単純な挑発に乗ってまんまと来てしまった。傑作だな」


「貴様ぁ!」


 ルーはすぐに残った左手で剣を拾いに行くが、ブルーは躊躇なくその足に剣を突き刺す。再びルーは痛みで発狂する。


 ブルーはルーをあお向けに蹴り倒し、その胸に剣を突き立てて見下ろした。


「終わりですね。どうです?強くさせた自分の理想の息子に殺される気分は」


 ルーは苦悶の表情で歯を食いしばりながらも、静かに、苦しそうに話す。


「……見事だ。そ、それだけ強ければ、我々信教徒の、神の復活にも、はあ、貢献できる。お前も、信教徒に……なれ。……そして……神をあがめ――」


「断る」


 そして、ブルーは突き立てた剣を振り下ろし、ルーの心臓に突き刺した。ルーは一瞬目を見開き、ゴボッと血を吐き、そのまま息絶えた。勝負は一瞬だった。


 俺の前世の親も、俺に理想を押し付けたり、褒めることもなく、口答えだと俺の意見も聞かず、子供を縛りつけるような育て方だった。


 でも、なんだかんだ、それは心配から来るものなのは、最近になって多少わかってきた。だから、親を完全に嫌いにはなりきれない、複雑な気持ちだ。


 ブルーの親も似たようなものだが、完全にブルーを物として扱い、子供として見ていなかった。その末路が、これだ。


 ブルーのやったことは、正しいのかはわからない。でも、クズ親のルーは完全に自業自得だとは思う。


 それと同時に、少しブルーが怖く感じた、単純に、強すぎる、ネクラやレッドが苦戦したルーを、一瞬で葬り去った。絶対に怒らせてはいけないやつだと思った。


 こうして、学園(俺のクラス)を狙った信教徒のルーと青龍は、俺とブルーによって討伐されたのだった。



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