報告
ずっと、モヤモヤしていた。
私と樹は幼馴染みで、友達の紗理奈は樹のことが好き。
じゃあ……樹は?
この前聞いたときは、断るって言ってた。それを私は知った上で、今回告白すると勇気を出した紗理奈を応援した。
答えを、良くないほうの答えを知っているのに、頑張れなんて……
それに2人を見ていると、胸の奥がざわつくような感覚がする。
でも、その答えを、私は知っちゃいけない気がする。
「……紗理奈」
電話が掛かってきた。深呼吸して、通話ボタンを押す。
「亜澄……私フラれたわ」
紗理奈が、そう言った。
「…………そっか」
それだけしか言えなかった。思いついた返事は、それと、あともう何個か。気の利いたことなんて言えないし、そもそも知っていたのに、何か言うなんてもっと良くない気がした。
何か言えることがないかと私が考えていた時。
「樹くんのことは、諦めるわ。」
紗理奈がキッパリと、迷いなくそう宣言した。
「えっ」
驚いた。
だって、紗理奈なら、諦めずに、好きで居続けるのかと思ってた。
「もちろん、フラれてすぐ諦めるほど簡単な恋だったとか、そういうんじゃないわ。本当に……大好きだった。」
今まで隠していたものが込み上げるように、紗理奈は話してくれた。
「樹くんと過ごした時間は本当に楽しかった。もちろん、そうじゃない、一緒に居ない時間も。恋していた時間が、幸せだった。好きで居続けるだけなら、迷惑じゃない。友達で、私は好きな人で……でも、それじゃ駄目なの。樹くんに、ちゃんと好きになって良かったって言えるようにならなくちゃ」
「紗理奈……」
「亜澄、背中を押してくれて、ありがとう。おかげで、伝えられたわ。……貴方に相談して、本当に良かった!」
振り絞るように出した紗理奈の声は、ちゃんと私の耳に届いた。
「私、何もしてないよ…………」
紗理奈は泣いてないのに、なんで私が泣いてるんだろ。
「私こそ……相談してくれて、ありがとう。」
紗理奈の、いつもの優しい笑い声が聞こえてきた。
「あとね、樹くんに言ったの。『自分の気持ちを大事にしてね』って」
「自分の……気持ち?」
「……亜澄にも、自分の気持ち、大事にしてほしいわ」
自分の気持ち……それは、私が知りたくない、モヤモヤの正体?
それが誰に向けての、どんなものなのか。知りたくなかった。知らないほうが、良いんだろうと思った。
でも……
「……ごめん、紗理奈。」
気付いてしまった。
「いいのよ。親友が幸せなら、私も幸せよ」
もう、この想いから目を逸らすことが、できなくなっている。




