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頑張った

「……もしもし?」

 電話を掛けてきてくれたのは、貴也くん。

 まだ涙は止まっていないけれど……貴也くんなら、大丈夫。

「もしかして、外?」

「えぇ、近くの公園に……」

「ちょっと待ってて」

 そう言って、ミュートになってしまった。

 数分経っても、そのまま。何かあったのかと不安になったとき。

「紗理奈さんっ……!」

 ラフな格好で、息切れまでしている貴也くんだった。

 その後、夜に1人で公園に居るのは危ないと怒られてしまった。

「……そっか。頑張ったね」

 伝えたことを話すと、そう言ってくれた。

 そんな私を、いつもみたいに優しく、暖かく見守ってくれた。

 そして、独り言みたいに呟いた。

「言えただけでも凄いよ。俺は……気持ちを伝えるなんてできないから」

 それは……

「貴也くんも、好きな人がいるの?」

 今のは、そういうことなのかしら。

「……そうだね、いるよ」

「聞いてもいいなら、聞きたいわ」

「秘密。まぁ、いずれ分かるよ」

 いずれ分かる……いつか言ってくれるということかしら。

「それなら、応援するわ!」

「……紗理奈さんも、樹のこと言えないくらい鈍感だよね」

「えぇっ」

 貴也くんと話していると、日常に戻れた。

 何度言い聞かせても止まらなかった涙も、抑えきれない欲も、不思議となくなる。

 受け入れられる。

「貴也くんに、話して良かったわ。ありがとう」

「それは良かった。こっちこそ、話してくれてありがとう。」

 それから少しの間、貴也くんは一緒に居てくれた。

「そろそろ帰りなよ。親御さん心配するでしょ」

「えぇ。そうするわ」

 貴也くんが送ると言ってくれて、素直に甘えることにした。

「樹は、どうするんだろうね」

「……大丈夫よ。樹くんなら」

 ちゃんと気持ちを大事にできる。私が言うまでもなく、気付いていると思う。ただ、それを受け止めて、言葉にするのに時間が掛かっているだけで。

「……うん、そうだね」

「そういえば、貴也くんは、夏祭り行ってないの?」

「うん。行ってないよ。実家に行ってて、丁度帰って来たところだから」

 忙しいのに、来てくれたのね。

「花火の写真、送っておいて」

「えぇ、ありがとう」

 最後まで見守ってくれた貴也くんに手を振って、ドアを閉じた。

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