買い物
「紗理奈ちゃん何でも似合いそう!」
私は、お姉さんによって着せ替え人形と化した。
普段は入るのに少し躊躇うお洒落な店舗。いつもなら入らないけれど、お姉さんに連れられて試着までしてしまっている。
着たことのないオフショルダー。肩が出ているし、露出も多い。
「あの……似合ってますか?」
「似合ってるわ! めちゃくちゃ可愛い~」
お姉さんはとっても楽しそうだけど……樹くんは、さっきのアクセサリー店と同じように、場違いだと感じてるみたい。
「樹くんは、どう思う?」
「えぇ……似合ってるけど、いつもの紗理奈さんじゃないから、見慣れないかな……」
自分から着ないような服だから、そうよね。
「紗理奈ちゃん、次これ着てみて~!」
また、自分で選んだことのないような服。でも、これも新鮮で楽しい。
「……俺、別のとこ行ってるから!」
もう我慢できなくなったのか、樹くんは逃げるように出て行ってしまった。
樹くんが居なくなった時、お姉さんはぐいっと私に顔を寄せた。
「紗理奈ちゃん、樹と夏祭り行くんだよね?」
「あ、はいっ……」
「2人って、付き合ってるの?」
躊躇ない、直球の質問。お姉さん、遠慮がない人だなぁ……ちょっと憧れる部分もあるけれど。
「いえいえっ! 付き合ってるなんて、そんな……」
「そーなんだぁ……樹、結構良い奴でしょ。不器用だけど!」
「……はい。私は、彼の優しさに救われました。不器用なのも、良いところだと思ってます」
そう言うと、お姉さんは嬉しそうにしていた。
「ちょっと休もうか~、あ。樹の昔の写真とか見ちゃう?」
ちょっと悪いことを考えた子供のような顔をしたお姉さん。樹くんには悪いけど……正直見たい。
「お付き合いしますっ……!」
「あ、いたいた……って、なんか仲良くなってない……?」
「これじゃあ、樹より私のほうが仲良いわねー!」
「凪さん、苦しいですっ……」
約束は、5時から。
ここから夏祭りの会場までは、バスで30分くらい。今から行けば丁度くらいだけど……
「じゃあ、私は用事済ませたから帰るわ~! 2人とも、楽しんでね~」
凪さんは、最後まで明るく、笑顔で去って行った。
「紗理奈さん、姉貴に何かされてない?」
「ふふっ、良いお姉さんね!」
「……なら良かったけど。そろそろ行く?」
偶然だけれど、樹くんと……好きな人といつもより長く居られて、知らなかった話も姿も知れた。
「行きましょう」
今日で、気持ちを伝えられたらいいな。




