偶然
優しく笑って、話してくれる。そして、それを誰にでもする貴方が好きだった。
人を好きになるきっかけなんて、些細なもの。でもその些細なものは、当事者からすれば大きなもの。人生を、心を大きく変えるもの。
私は、貴方に恋してたくさん変わった。
人との関わりも、表情の種類も、1日のモチベーションも、全部貴方が変えてくれたもの。
もとの自分よりも、こっちの『恋している自分』のほうが好き。
貴方に恋して良かったと、心から想う。
「……今日の、5時からよね」
何度もメッセージのやり取りを見返して、緊張して、恥ずかしくなる。
髪に付けるアクセサリーが欲しくて、集合までショッピングモールに行くことにした。
好きな人に会うときは、いつもよりも服装や髪型に気をつけて、可愛いって思ってもらえるように。
「行ってきます」
樹くん、どんなのが好みなのかしら……、あんまり派手なものは私も得意じゃないし……
商品を見て迷っていると、綺麗な女性が同じ棚でアクセサリーを選んでいた。
背が高くて、スタイルも良い。どんなものでも似合いそうな人。
「樹、これどお?」
「良いんじゃない? ていうか、俺場違いでしょ……」
聞き慣れた声と、同じ名前。樹なんて、そう珍しい名前ではないけど……
「樹、くん…………?」
「紗理奈さん!?」
この状況は……何なのかしら……?
「貴方が紗理奈ちゃん? 可愛い~!」
綺麗なお姉さんは、どうやら樹くんのお姉さんみたい。そう言われれば、どこか似ている気がする。
背が高いのも、キリッとした瞳も、雰囲気が全体的に同じだ。
「紗理奈さんごめんね、姉貴が急に……」
樹くんのお姉さん、凪さんは、なぜか私のことを知っていて、今はカフェに居る。
「兄姉、仲が良いんですね。一緒に買い物とか……」
「まあね~、自慢の弟よ!」
「恥ずかしいからやめてくれ……!」
恥ずかしそうな樹くん。やっぱり仲が良いのね。
「ねぇ、紗理奈ちゃん! 良かったら一緒に買い物しない?」
樹くんはもうキャパオーバーみたいだったけど、お姉さんと居ると楽しそうだし、樹くんの話も聞けるかもしれない。そう思って、一緒に買い物をすることになった。




