大丈夫
楓は、途中で別れるから、俺が紗理奈さんを家まで送る。
最初は遠慮していたけど、やっぱり夜道は危ない。実際、小さな物音でビクビクしていたし。
「紗理奈さん、夏祭りってどうするの?」
ふと、気になったことを聞いてみた。何か約束しているのだろうか。
「い、樹くんを……誘ってみようかなって……」
照れて頬を真っ赤にしながら、そう答えた。
「じゃあ、今誘いなよ」
「今!?」
大声を出して驚く紗理奈さん。
「どうせ、楓がみんなのこと誘うじゃん。早めに言っておかないと。」
実際、夏休みの予定を立てる時に言っていたし。
「うぅ……分かったわ……! 不安だから、横に居てちょうだい」
「良いけど……」
聞かれていたほうが、恥ずかしくないのかな。
紗理奈さんがそれで落ち着くなら、別に良いんだけど。
緊張しながら、何回も確認して樹に電話をかけた。
「えっと……」
やっぱり、樹と話している時の紗理奈さんは楽しそうだ。
俺たちに見せる笑顔も、柔らかくはなった。けど、それは友達だから。
好きな人に見せる紗理奈さんの笑顔は、樹しか知らない。そして、その笑顔を樹は特別だと分かっていない。
紗理奈さん、結構苦労するよなぁ。でも、そういうところが好きなんだろうけど。
「さ、誘えたわっ!」
緊張がほぐれて、急に元気になったみたいだ。嬉しそうに駆け寄ってくる。
「良かったじゃん。それで、告白するの?」
「貴方、さっきから私で遊んでるでしょう……」
頬を膨らませる。本当に、感情表現が豊かになった。
「遊んでないよ。紗理奈さんなら、気持ち伝えられると思って」
「……貴也くんにそう言われると、ちょっと自信つくわね」
結局、告白をするかしないかの結論は出さなかった。けど、彼女ならできると思う。
返事がどうかとかじゃなくて、告白をするかしないか。人に、自分の気持ちを伝えるのは、凄いことだ。結ばれる覚悟と、疎遠になる覚悟ができた人しかできない。勇気のない人には、できないこと。でも、紗理奈さんならできる。あの人の、ここが好きだとハッキリ言えて。
「大丈夫だよ」
「えぇ……当たって砕けるわ!」
「なるべく砕けないようにね……」
「そ、そうねっ……!」
どこか抜けてて、でもしっかり者で……頑張り屋な彼女を、あいつは受け入れるのかな。
「貴也くん、家ここ。送ってくれてありがとう」
「ううん。じゃあね」
「えぇ、貴也くんも気をつけてね!」
紗理奈さんは、俺が角を曲がるまで外に出て、手を振ってくれていた。




