告白
なぜか、亜澄はうつむいている。顔が赤いのは、暑いからなのか。
一度話した手を、もう一度握られた。
「亜澄……?」
「樹……あのね」
亜澄が、何か言いかけた時。何か、言おうと口を開いた時だった。
「あ、ごめん……俺のほうだ」
スマホの着信音だった。姉か両親かと思ったけど、相手は紗理奈さんだった。
「紗理奈さん……? どうかした?」
何かあったのかな。そっちには楓と貴也がいると思うけど……
「えっと、急にごめんなさい……今週の日曜日の夏祭り、良かったら一緒に行ってくれない?」
「夏祭り……そういえばあったね。それは、楓が?」
去年も3人で行ったし、今年は5人で、となったのかもしれない。
「ううん。……ふっ、2人で行きたいの!」
紗理奈さんは、声が震えてる。いつもより高いし……
「俺は大丈夫だけど……じゃあ、時間はまた話し合おう」
「えぇ……!」
最後まで高かった紗理奈さんの声。電話を切って、亜澄の顔を見る。
「ごめん亜澄。何だった?」
「……紗理奈に告白されたらさ、樹はどうする?」
反対に、少し声の低い亜澄。声が震えてるのは、一緒だけど。
握られている小さな手も、震えている気がする。
紗理奈さんに、告白されたら……? そんなことあるわけないって思うけど、亜澄が欲しい答えは違うんだろうな。
なんか、今日この手の質問を受けたのは2回目な気がする……
亜澄は、なんで知りたいんだろう。どうして聞くんだろう。
どうして……そんなに苦しそうな顔をするんだろう。
「……断る、と思う」
そもそもそんなことがあるわけない、という言葉は飲み込んだ。亜澄はそれを踏まえた上で聞いてると思ったから。
「そっか……そっか」
俺の手を離して、早歩きで進み始める。ワンピースの胸元に付いているリボンが、風で揺れる。
「亜澄、俺にも質問させてほしい」
彼氏が誰なのか、もちろん気にはなるけど、今聞きたいのはそれじゃない。
「何で教えてくれないんだ?」
「教えてくれないって……何をよ?」
「全部だよ、何か理由があって言いたくないなら、そうだと今言ってほしい」
相手が誰なのかを教えてくれないなら、なんで俺には彼氏ができた、と言ったんだ。
「……こっち」
家の近くの公園だ。昔、ここでよく遊んでいた。
公園は薄暗い。ライトはあるけれど、公園全体を明るくするほどではない。
「……私、フラれたんだ」
ベンチに座った亜澄が最初に言ったのは、それだった。




