楽しい
「はー、遊んだぁ……」
疲れ果てた楓が、腹から強烈な音を出しながらレジャーシートに座った。
「俺たち、砂落としてくるけど……」
「俺はいいや」
亜澄と貴也は、2人で足の砂を落としに行った。
「いっただきまーす!」
楓は、食うのが速い。もうちょっとゆっくり食べろと、お母さんみたいな貴也が注意をする。
「あー、このパン4つしかなかったんだよなぁ」
4つしか置いてなかったらしい。
「じゃあ、俺はいいよ」
そんなにお腹が空いているわけでもないから、俺はそう言ったんだけど……
「樹、はい」
自分のパンを半分にして、亜澄が渡してきた。
「だからいらねぇって……」
「樹の好きなものいっぱい入ってるじゃん」
なんか、さっきから不機嫌だよな……優しいのに、怖い。
亜澄がくれたパンは、確かに好きなものが入ってる。俺の好きなものとか、覚えててくれたんだな。いつも、嫌いな野菜とか押し付けてくるくせに。
「……ありがと」
亜澄は、照れくさそうに残りの半分を食べた。
「ちょっと散策しようぜ!」
まだまだ体力があるという楓に引っ張られ、俺たちは浜辺を歩いている。
「あっつ……」
日差しがキツイし、歩いているから余計に暑い。
「樹くん、良かったら入る……?」
紗理奈さんが、日傘に入れてくれた。
そんなに変わらないと思っていたけど、意外と涼しい。
「どうかしら」
「結構涼しいんだね。ありがとう」
日傘は、紗理奈さんが差してくれているけど身長差で持ちにくそうだ。
「俺持つよ」
「ありがとう……」
やっぱり狭いけど、本当に入れてもらった良かったのかな。
紗理奈さん、肌白いし……
なるべく紗理奈さんに寄せて日傘を差す。
「お、貝殻あったぜ!」
「うわっ、楓足!」
「へ? ってうわぁっ!」
俺たちの前で、カニに足をよじ登られて騒ぐ3人が居た。
「……あ、ヤドカリだわ」
「本当だ」
俺たちは、後ろでゆっくり進むヤドカリを見ていた。
「ふふっ、楽しいわ」
「このタイミング?」
「今感じたんだもの。来れて良かった」
まぁ、紗理奈さんが楽しいでいるならいいけど……




