好きなの?
「海だー!」
浜辺に着くなり、楓がさっきからずっと言っている。
「貴也、入ろーぜ!」
「うわぁっ、ちょっと!」
手を引っ張られた貴也が、一緒に連れて行かれる。バシャバシャ水をかけられて、ちょっと怒りそうだ。
「私も行ってくる!」
亜澄が、2人の中に入っていき、貴也を一緒に攻撃し始めた。
「うわ、貴也怒るぞー。」
「楽しそうね。樹くんは行かなくていいの?」
「着替えないし……俺は浜辺でゆっくりしてるほうが好きだったりするんだよね」
「私も、小さい頃もずっとそうだったわ」
2人で、3人を見ながら少し話していた。たまに、怒ったり笑ったりするあいつらを見て微笑む紗理奈さんが居た。俺が見てることに気付くと、恥ずかしそうにして目を逸らされてしまうけど。
「樹くんって、亜澄のこと好きなの?」
「げほっ、げほっ……」
驚いて、飲んでいたお茶を吹き出してしまうところだった。むせて、咳が出る。
「大丈夫? 慌てて飲むからよ」
紗理奈さんが急に変なこと言うからでしょ……
「それで、好きなの?」
「……俺たちって、周りからどういうふうに見えてる?」
「仲の良い幼馴染み。亜澄に彼氏ができたっていう噂が広まった時、まずは樹くんじゃないかって言われてたから、そうやって思う人もいるんじゃないかしら。」
幼馴染み……まぁ、そうだよな。彼氏ができたのに、俺だと思われてるなら、亜澄からしたら良い迷惑だ。
「でも私も、そう思っていたうちの1人だったわ。貴女達は、仲が良いだけじゃないもの。お互いの良いところも悪いところも知っていて、支え合っている。そんな2人の関係に、私は憧れていたわ」
「……紗理奈さん」
そんなふうに、思ってくれていたのか。
「で、どうなの?」
話を逸らしたのに、紗理奈さんは逃がしてくれない。
「……正直、分からないよ。でも、亜澄には彼氏がいる。だから、俺はただの幼馴染みだよ」
人を好きになる感情を知らないし、あの時抱いたものが嫉妬や悲しみだとか、そういうものなのかも分からない。
「……そう」
「紗理奈さんは、なんでこんなこと聞いてきたの……?」
「……私、好きな人が居るの」




