新作
「ふ~! 終わったぁ」
「お疲れ様。疲れたでしょう?」
営業時間が終わって、亜澄と私は更衣室で着替えている。
「紗理奈、誘ってくれてありがとうね! 楽しかったし、自分の将来の選択肢も広がったよ!」
「お礼を言うのは私よ。手伝ってくれてありがとう。助かったわ」
夏はジェラートなどの季節限定の商品が多くて、それを目当てに涼みに来るお客さんも多い。
「良かったらまたやらせて!」
「本当? それなら、またお願いしようかしら」
やる気満々の亜澄は、とても頼もしい。
「帰る前に、お父さんに挨拶させて」
「えぇ、ちょっと待っていて。呼んでくるわね」
厨房に居るお父さんを呼ぼうと、ドアを開けた。
「お父さん、亜澄が呼んで……」
凄く真剣にスケッチブックに何かを描き込んでいて、私の声に気付いていないみたい。
「お父さん……?」
「紗理奈? あぁ、亜澄さんか」
「それ、何を描いていたの?」
お父さんが見せてくれたスケッチブックには、ケーキの絵がたくさん。
今まで出してきたケーキが全部載っている。どこになんのフルーツがのっているかとか、作る時のコツ、制作時間、お客さんからもらった感想。
たくさんあるページをめくって、さっき描いていたページを探す。
「これ……」
私が出したチョコレートケーキの案。樹くんが出してくれた案や、他のスタッフさんから聞いたもの、それが全部メモしてある。
「中々形にはなってないけど……お前の最初の商品だから、最高の状態で出したいんだ」
「お父さん……ありがとう。私、お父さんみたいなパティシエになりたいわ」
そう言うと、お父さんは目を見開いて、少し泣きそうになっていた。
「ありがとうな。紗理奈ならなれるよ。……亜澄さんを待たせているんだろう?」
「えぇ」
「亜澄さん、今日は本当にありがとう」
「いえいえっ! 楽しかったです」
お父さんが、亜澄にケーキの箱を渡した。ご家族で食べるために、さっき用意していたらしい。
「良いんですか?」
「とても助かったから、せめてものお礼だよ。給料は受け取ってくれないんだろう?」
「はい……学校に申請している場所と違うので、受け取れないんです」
「じゃあ、それは受け取ってくれ。良ければ、感想もお願いしたい。それは、まだ出していない新作だからね」
新作……?
「お父さん、それどんなの?」
さっき見たスケッチブックのページに載っているケーキは、もう全て出したもの。私のケーキ以外は……
「紗理奈が作った、初めての商品だよ。」
「紗理奈の!?」
亜澄は驚いて、箱を開けた。
「わぁ……凄い!」
中を見た紗理奈は、顔がぱぁっと明るくなり、目がキラキラしている。
「亜澄、ぜひ貴方の感想が欲しいわ。」
「……じゃあ、遠慮なく……!」
ケーキをしっかり受け取り、またお礼を言って、紗理奈は帰って行った。
「紗理奈、良い友達がたくさんできたんだな」
「えぇ、みんな……とっても良い人達よ!」




