進展
「……樹、くん……貴也くん……楓くん……?」
男の子を名前で呼ぶなんて、小学校振りくらいかしら……?貴也くんが良いと言ってくれたけど、大丈夫かな。
みんなの前では、まだ呼べないかもしれない。
距離感が分からなくて、よく間違えることが多い。それで色んなことを言われたりされたりして、人と関わるのが怖くなってきた。
でも、樹くん達は違う。私を友達だと言って、優しくしてくれる。
お昼ご飯も、勉強会も、夏休みも。一緒に過ごせる友達。
「……えへへ」
嬉しくて、つい顔が緩んじゃう。
貴也くんは、私が樹くんを好きなことを分かっていたけれど……私、もしかして分かりやすいのかしら。
樹くんにも気づかれていたら、どうしよう。
1人でこうやって悩んでしまって、最後には恥ずかしくなる。
「次は、何のお菓子を作ろうかしら……?」
自分のケーキをお店に並べるために、頑張らないと。
[貴也:追加したよ。また何かあったら言ってね]
貴也くんからのメッセージ。可愛い猫の「よろしくお願いします」のスタンプも送られてきた。
[紗理奈:ありがとう]
送るのに手こずって、既読無視をしたみたいになってしまうから、どうしても返事が短くなってしまう。
[貴也:ゆっくりで大丈夫だよ。待ってるから]
次に、こう送られてきた。周りをよく見て、分かってる人なんだなぁ。
あの3人は、とても暖かい。私は、そこに混ざっても浮かないように、邪魔にならないようになりたい。
[楓:夏休みやりたいこと!]
グループも動いていて、楓くんが仕切ってくれている。
まずは、海に行こうっていう話になってるみたい。
「……楽しみね」
こんなに夏休みを楽しみにしたことはないと思う。
夏休みが続いてほしいとも、終わってほしいとも、どっちも思わずに、ただ課題をして、ただお店の手伝いをして、友達がいる夏休みを過ごすのは、初めて。
そのためにも、テストを頑張らないと。
樹くんに教えてもらってばかりじゃなくて、自分でもちゃんと解けるようになりたい。
勉強会で中途半端だった問題集を開いた。




