誤魔化し
俺、相馬樹は昨日、幼馴染みである涼風亜澄から彼氏ができたという報告を受けた。
彼氏ができたんなら、あんまり俺といると良くないよな……
そう思い、いつもの登校時間とずらすことにした。いつもの時間に家を出たら、絶対に亜澄と鉢合わせる。
これからも、気を遣ってやらなくては。
亜澄とは、同じクラスではない。俺は1組、亜澄は3組だ。
「あれ、樹まだ居たの? いつもこの時間、もう家出てるじゃん」
3つ離れた大学生の姉が、1階のリビングでニュース番組を見ていた俺に言った。
「ちょっと遅らせようと思ってさ」
「ふぅん……亜澄ちゃんと喧嘩でもした?」
流石は姉だ。無駄に鋭い。いつも感づかれて、何があったかを吐かされる。ただ、今回は喧嘩じゃない。
「なんもねぇよ」
「あっそ。じゃあ、私行くねー」
今日も買ったばかりの服を着て、ルンルンで家を出て行った。
「……俺も、もうそろそろ出るか」
通学リュックを背負い、家を出ることにした。亜澄と登校する流れができてからは徒歩で登校していたが、元々は自転車通学。こっちのほうが速くて楽だ。
自転車に乗るの、久々だな。追い風が気持ちいい。
徒歩15分が、自転車だと7分くらい。
「おはよう! あれ、今日は自転車なんだな」
「おはよう、うん。自転車のほうが楽だし」
自転車を駐輪場に止めていたら、同じクラスの自転車通学の友達に言われた。
急に変えるの、やっぱり変だよな。
「じゃあな」
友達は、職員室に用があると言って去って行った。俺も、急いで教室に向かう。
「おはよ」
「あ、樹! おはよう」
教室に入ると、友達が騒いでいた。
「どうしたんだ?」
1人に聞くと、こう教えてくれた。
「3組の、涼風さん彼氏いる~って噂が広まってんの。本当かどうかは知らないけどね」
「そういえば、樹幼馴染みだったよな! なんか知ってんの?」
「……居ることは知ってた、けどそれ以上は知らねー」
噂が広まってるなら、言ったのは俺だけじゃないんだな。
同じ学年の奴かな。3組だったら、あいつとか仲良さそうだった。2組にも、亜澄のことが好きだという奴が居た。
そう思ってたら、予鈴が鳴った。1限目は数学。
「……教科書、忘れた……」
今なら、まだ他クラスに借りにいけば間に合う。
「亜澄、数学の教科書貸してくんね?」
いつも貸し借りをしているのは亜澄。2組にも友達は居るし、借りれるのは借りれるけど、落書きがされているため、1番綺麗な亜澄の教科書を借りに来ることが多い。
普段通りにすれば、快く貸してくれるだろう。
「別にいいけど……朝会わなかったね」
「あぁ……寝坊してさ」
「ふぅん」
ちょっと不機嫌な亜澄は、目を合わせないまま数学の教科書を渡してくれた。
付箋やらマークやら、熱心に勉強していることが分かる教科書。
「落書きしないでよね!」
「分かってるって。じゃ、休憩時間に返しに来るから」
授業には間に合った。よく忘れ物をするから、今日も忘れたらやばかった。
朝のこと、結構気にしてるみたいだ。寝坊したっていう嘘も、気付かれてそうだ。
「……相馬、問い2」
返しに行くとき、なんか言わないとだよな。
「相馬」
亜澄は噂が広まってるの知ってんのかな。
「相馬っ!」
「うわぁっ、は、はい!」
どうやら、先生は何度も俺の名前を呼んでたみたいだ。
「問い2だよ」
ぼーっとするな、と先生に怒られてしまった。せっかく教科書を借りたのに。
「樹、今日調子悪いか?」
授業が終わって、3組に教科書を返しに行こうとした時、そう言われた。
「あー……ちょっと寝不足?」
俺、ずっと嘘ばっか吐いてるじゃん。
「へぇ、まぁ無理すんなよー」
そう言ってくれた。周りに迷惑も心配もかけてしまった。
「亜澄、教科書ありがとうな」
「……落書きはナシね」
返すとすぐに落書きチェックをされる。してねーっつの。
「昨日、急に言っちゃったから……ごめん。」
「いやいや、いいよ全然! むしろ、俺も何も言わなくて悪かった。びっくりしたからさー」
「……そっか。なら、良かった」
亜澄は、安心した様子で教室の中に入っていった。
ただ、俺はまだ気になることがある。
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頑張って書きますので、これからもよろしくお願いします。




