付き合ってるの?
「……亜澄、今日なんかあったのか?」
帰り道、理由は分からないけど、何だか機嫌が悪い気がする。学校で何かあったのか、体調が悪いのか……
「別に、何もないし」
女子の何もない、は何かあるやつだよな。でも、教えてくれないんじゃ、どうにもできない。
「そうだ。亜澄、これ食うか?」
今日、湊さんがくれたクッキーの袋を差し出す。今日はメレンゲクッキーをくれた。お店でも売っているらしくて、レシピを教えてもらって作ったそうだ。
「……これ、湊さんがくれたやつでしょ?」
「あぁ、そうだけど……? 上手いぞ、これ」
口の中でほろほろ溶けて、軽くて食べやすい。
「樹は、湊さんと……その、付き合ってるの?」
そっぽを向いて、顔を見せないまま亜澄が言った。声が、震えてる。
「いやいやっ、付き合ってねぇよ!」
「そーなの? まぁ、湊さん可愛いもんね~。あるわけないかぁ」
「お前っ、自分から言っておいて……!」
「じゃあね~」
亜澄は、言いたいだけ言って帰ってしまった。
湊さんを恋愛対象として見たこと自体はあまりない。美人だし良い人だから、俺とは釣り合わないと思うし、そうやって勝手に思うのは、湊さんに失礼だとも思う。
俺は彼女と約束をした。それを遂行しているだけ。家に行ったのも、そのためだ。
湊さんだって、俺をそんなふうには見ていない。
「……亜澄は、なんで怒ってんだよ……」
なんだかずっと不機嫌だったし、いつもより俺に対してトゲのある言い方だった。
「樹~、あのさ……って、うわ顔怖っ」
「は?」
「バラエティ見る顔じゃないでしょ、それ」
姉貴は俺が座ってるソファの横に腰掛けて、顔を近づける。
「で? 亜澄ちゃんと何があったの?」
「……エスパーかよ……」
毎回鋭くて、すぐに当てられるから、逃げようがない。
「なんか怒ってて、でも理由が分からないし……」
「あ~」
「分かるのかよ」
まるで、全てを理解したような反応だった。女子同士なら分かるもの、なのかと思ったのに……
「何で人が怒ってるかなんて、誰にも分からないわよ。分かんなくてモヤモヤするなら、さっさと聞いてきなさいよ! 家、隣でしょ?」
姉貴はそう言って、メレンゲクッキーを2、3個取って部屋に戻った。
「……はぁ……」
「……樹?」
インターホンを押したら、部屋着に着替えた亜澄が出てきた。
「……亜澄、何で怒ってたんだ?」
俺が考えたってしょうがない。とりあえず、聞くしかない。
「別に、怒ってはないけど……じゃあ、本当に湊さんとは付き合ってないの?」
「付き合ってないって言ってるだろ。お前も言ってたけど、湊さんは可愛いし、努力家だ。俺とじゃ釣り合わねぇよ。」
「……可愛いって……」
「ん?」
ボソっと亜澄が何か言ったような気がしたけど、聞こえなかった。
「亜澄は、もう怒ってない?」
「だから、最初から別に怒ってないってば!」
俺には、怒ってるように見えたけど……まぁ、さっきの俺みたいに、考えすぎてモヤモヤしてただけか。
「じゃあ良かった。夜にごめん、おやすみ」
「……おやすみ」
帰ったら、部屋で寝てると思ってた姉貴が玄関で待ち伏せしていて、全て吐かされた。
「良かったじゃん。たまには、ちゃんと言うのも大事だよ」
「……うん。ありがとう」
「じゃあ、私寝るね~おやすみ」
「おやすみ」
俺も、部屋に入って寝ることにした。
考えることがなくなったから、よく眠れた。
2025/03/31 21:29
お話を書き足しました。微妙なところで終わっていましたが、次のお話でその続きを書くには短かったので繋げました。




