お返し
「相馬くん、おはよう」
「湊さん、おはよう」
教室に居るのは、俺と湊さんの2人だけ。
今日は、少し早く目が覚めてしまったから、登校の時間も早めた。
今日も、昨日の続きから本を読んでいたら、湊さんが挨拶をしてくれた。
「クッキー、美味しかったよ。特にアーモンドが入ってるやつが好きだったなぁ」
「本当? 良かったわ」
食感も楽しくて、ほろほろ溶けるみたいになくなる。アーモンドの香ばしさも、口に残る。
あまりに美味しいから、大事に食べようと思っていたのに……
「姉貴に何個か食べられてさ~」
しかも、アーモンドのやつを取られた。美味しいって姉貴はご機嫌で部屋に戻ったけど……
「じゃあ、また作らせてくれる?」
「えぇっ、それはもちろん嬉しいけど……大変じゃない?」
前のはお礼ってことだったけど、何もしてないのにもらうのは……湊さんも大変だし、俺もお返しで何かをあげたりとかは、センスがないからできないと思う。
「いいの。私が作りたいだけだから」
「本当……? でも、流石に何かお返しはさせてよ。こんな美味しいクッキー、パンのお返しには豪華すぎるし」
そう言うと、湊さんは照れて喜んでいた。
「お返しね……んー……」
湊さんは長考の末、こう言った。
「じゃあ、代わりに勉強を教えてくれない? 前も聞いたけれど、数学が苦手なの。相馬くんは、得意でしょう?」
「うん、まぁ得意だけど……」
湊さんも飲み込み早いし、教えるってほどでもないけど……
「湊さんがそれでいいなら……? それくらいならできるよ。」
「本当? よろしくね。」
まぁ、教えるのは最近楽しいし、良いかもしれない。
「湊さん、器用だよね。他にも何か作れたりするの?」
過去の調理実習でも、手際が良かった気がする。
「実は、家がケーキ屋なの。よく手伝いをするから、そのおかげで、簡単なケーキなら作れるわ」
湊さんは、自分が作ったというケーキの写真を何枚か見せてくれた。
ショートケーキやタルトなど、どれも綺麗で美味しそうだ。
「こんなの作れるなんて、凄いね。」
「ありがとう。でも、まだまだよ。できていないところが多いし……」
「そうなの? 十分、凄いと思うよ。自信持ってよ」
湊さんって、謙虚な人だよな。自分に厳しくできる人だ。
「将来、家を継ぎたいと思っているの。だから、作ったものを食べてくれる人が居るのは嬉しいわ。」
「へぇ……俺でよければ。」
「相馬くんがいいわ。美味しそうに食べてくれて、嬉しい」
こうして、湊さんと約束をした。




