優しい味
「あ、相馬くんっ」
朝休み、楓と樹がまだ学校に来ていないから、1人で読書をしていた。
そんな時、少し声の裏返った湊さんが話しかけてくれた。
「どうしたの?」
本を閉じて、湊さんに体を向ける。
「昨日、パンくれたから……これ、お礼」
可愛くラッピングされた袋。中には、お菓子が入っていた。
「これ、クッキー……?」
「あ、苦手だったかな……?」
「ううん! クッキー好きだよ。あ、これ抹茶? これはアーモンドが入ってる……」
色とりどりの鮮やかなクッキーは、形も綺麗。
「これ、どこのお店?」
袋に何も書いていないから、湊さんに聞くと、少しモジモジしながら言った。
「それ、私の手作り……なんだ」
「手作り!? これを!?」
お店みたいだ。クッキーもだし、ラッピングも。手先が器用なんだな。
「ありがとう。今、少し食べてもいい?」
「うんっ、もちろんっ……」
青色のヒラヒラしたリボンをほどいて、プレーンのクッキーを一口食べる。
「んっ、美味しい!」
素朴で、甘ったるくない。食べやすいクッキーだ。
「良かった……昨日は本当にありがとう」
「だからもう良いって。こっちこそ、クッキーありがとう!」
湊さんは、またあの時みたいに微笑んで自分の席に戻った。
「樹おはよ~……って、何それ。クッキー?」
「どうしたの?」
「あー……湊さんがくれた」
「えぇっ!?」
2人は驚いて、俺が持ってるクッキーの袋をまじまじと見つめる。
「手作り?」
「うん、らしい」
「湊さん、器用なんだね」
「へぇー……店のやつみたいだな~」
クッキーを鞄にしまった。帰ってから、勉強の時とかに食べよう。
甘さも丁度良い、優しい味のクッキーだった。




