聖女ですが妹を鬼畜貴族に身代わりに嫁がせました。え?実は優しいイケメン侯爵様!?ちょっと妹と入れ替わって来る!
私の名はリリス、高名な侯爵令嬢だ。
赤毛の美しいロングヘアが魅力で言い寄る貴族も多い。
特に私の家系は聖女の家系でその力を目当てに近付く貴族もいる。
打って変わって私にはイースという出来損ないの妹がいる。
あの女には聖女の力が無く一族の面汚しなのだ。
しかし私に舞い込んできた婚約の話は鬼畜な厳しい性格で有名のディーン侯爵。
そんな男に嫁いでたまるかと思った私は名案を思い付いた。
あの出来損ないの妹を身代わりにするのだ。
そうと決まったら作戦開始だ。
「ちょっと動かないで。化粧が上手く決まらないじゃないの」
「も、申し訳ありません、お姉様……」
「まったくあの子はのろまでグズなんだから」
イースは普段から碌に化粧をしない。
聖女の力が無いから男に見向きもされないからだ。
そんな女に私の様な評判な女と誤認させるのは苦労も苦労。
私は持てる化粧技術を持って妹を私に近い美しい聖女に仕立て上げた。
まあ私持ち前の赤毛はどうにも真似できず地味な銀髪になったけど仕方ない。
さあ、私の身代わりに行っておいで!
「あ、あの有難うございます、お姉様。嫁ぎ先の無い私に婚約者を譲って下さるなんて」
「その代わり私の代わりとして嫁ぐのよ。後逃げ帰ったらただじゃおかないからね」
「はい!私頑張ります!」
この女は何を勘違いしているのだろう。
私は鬼畜貴族に憎き妹を生贄にしてるだけだ。
感謝される筋合いはない。
私は呆れた顔をし妹を見送った。
「君がリリスだね。私はディーンだ」
黒髪の厳しい目付きの侯爵は狼の様な顔つきをしている。
あんな男の妻になれば酷い仕打ちが待っているだろう。
出来損ないの妹にはお似合いの末路である。
―数ヶ月後
私は好奇心からイースの様子を見に行った。
そこにはディーンと談笑している美しいアクセサリーを身にまとって笑顔でいる妹がいた。
私はディーンがいなくなると我慢ならなくなって妹の前に飛び出した。
「ちょっとあなた、これはどういうことなの!?」
「あ、お姉様。ディーン様は私を溺愛して下さって、毎日色々な贈り物をくれるんです」
「貸しなさい!」
私は一番目立っていた真珠のイヤリングをぶんどった。
これは本当は私の物になるはずだったのである。
私はいそいそとそのイヤリングを身につけるとディーンの元へと急いだ。
「ディーン侯爵、ご機嫌麗しゅう。私”本物の”聖女のリリスでございます」
「ほう君が」
ディーンは私に近付いて頬に触れた。
さあ私の魅力にメロメロになりなさい!
すると彼は真珠のイヤリングに触れてそれを引きちぎった。
「痛いじゃない!何するの!?」
「これは”イース”に送った品だ。コソ泥め」
「待ってください、ディーン侯爵!」
そこにやってきたのは妹のイースであった。
さっさとこの場をなんとかしなさい。
しかしそこで私が聞いたのはとんでもない言葉であった。
「私が彼の真の婚約者です!お姉様は帰って下さい!」
事もあろうにこの女は私の婚約者を寝取ったのだ。
出来損ないの妹の分際でありながら許せない!
私は最後の強硬手段に出た。
「リリス・カスケードが命じる。服従させる魔法にて僕となれ」
ディーンもイースも虚ろな瞳をしている。
あの二人は自我も無いただの操り人形だ。
聖女の力のちょっとした応用である。
「いい男だし妹には優しかったから期待してたのだけど、相手によってコロコロ態度を変えるのはダメね」
「イース、あなたには一生庭の草むしりを命じるわ。ディーンは私の夫として忠誠を誓いなさい」
二人は服従の証として私の足にキスをした。
これからこの優しいイケメン侯爵は私の物、まあ飽きたら捨てるけどね。
みんな私だけを愛せばいいのよ。