ランクアップを聞こう…
「ねぇ、なんでそんな不機嫌そうなの…?」
道を歩く俺とクーロ…
そんな中、クーロからそう尋ねられた。
なんで不機嫌…
そんなの…
さっきのデブ男爵のせいに決まっている。
あいつ…
まじであのデブ…
思い返すだけでも、お腹の奥から熱が上がってくる。
これが…
はらわたが煮えくり返す、ということもかもしれない。
ほんと悔しい。
まぁ、あんなクソみたいなやつなんてもうどうでもいい。
今は返答だ。
で、どう返すかな。
正直に話すか…
それか…
正直に話せばいいか…
隠すことでもないし、それに少し愚痴を聞いて欲しい気もする。
ということで、俺はデブ男爵とのやりとりをクーロに話した。
「そっか…。それは腹立つね。」
「だろ?もー、もー、もーって感じだわ。」
「フフッ…。でもなんで、いきなり商業ギルドになんて入っていったの?」
「なんで…」
それは…
クーロにあのローブを買って…
言えないな。
絶対に言えない。
これを口に出すのは、すごく恥ずかしい。
言えない。
絶対に言えないわ。
それに…
サプライズとかもでき…
「生活費、かな…」
「生活費…?でも私たち、今はそんなに困ってなくない?」
「う…」
確かに…
クーロは初めから、貯金もあってまだ余裕はあるし…
俺もブライスパーティーで稼いだ分で、今は最初に比べて少しだけ余裕がある。
だから、別に今困っているわけでもない。
「あ、あれだよ。将来のこと考えて、もう少し余裕があってもいいかなーって…」
「ふ~ん。そうなんだ…」
クーロからは、”へー”くらいの温度だった。
分かってるのか分かってないのか、あいまいなときの…
「そうなんだよ。」
でも、どうするかな…
お金…
高校生だった俺の知識で稼げることなんて思いつかないし、でもお金は稼ぎたい…
なら、俺にやれることは…
「なぁクーロ、冒険者ギルドによってもいいか?」
「ギルドに!?いいけど…」
「じゃー行こうか…」
「う、うん…」
こうして、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
「今日は、どうしたんですか?」
そー、目の前のリリスさんから…
「冒険者ランクって、どうやったらあがるんですか?」
「えっ!?」
横にいたクーロから、驚く声が上がった。
まぁ確かに、いきなり相方が何の相談もなくそんな話を始めたら驚くか…
そして告げられたリリスさんは、少し考え込む仕草を取ってから…
「ランクアップの話ですか…」
「はい…」
冒険者ギルド的には、ランク以上の魔物を相手させたくないらしい。
それはすごく当たり前の話だと思う。
だってこの世界は、すごく死に近いから…
でも今俺は、お金を稼ぎたい。
なのに、他の要素で稼げる未来が見えない。
なら、今やってることをより極めていこう…
そう思ったわけだ。
「一応、その仕組みのことは最初にお話ししたと思うんですが…」
「「えっ!?」」
「ん?」
三者三様に…
いや、きっと三者二葉に驚く声が上がった。
俺はクーロにへと視線を向けて…
「聞いたっけ?」
「いや、私も聞いてない気がする…」
「えっ!?」
「だよな…」
「うん…」
合間でリリスさんから驚く声が聞こえたけど、知らない気にしない。
俺は…
いや俺たちは、原因についてなんとなく予想がついたから…
たぶんまた、リリスさんが…
俺とクーロはじっと、リリスさんを見つめる。
「えっと…、もしかして…」
リリスさんの言葉に、俺は強くうなずいた。
「そうですか。そんなに私の麗しい美貌が…」
「何の話っ!?」
「えっ、あれですよね?私の可憐な見た目に、クーロさんが嫉妬して、たけしさんは発情してるんで…」
「「違うわ(よ)!!!」」
「え、違うんですか!?」
「違うから…」「違うよ…」
「じゃー一体…」
リリスさんは見当もつかないらしい。
というか…
なんで冒険者のランクアップの話から、リリスさんの見た目の話になったと思ったの、この人は…
いやまぁ…
見た目は可愛いし、それに胸も…
ギュッ…
「った!!!」
「リリスさんを邪な目で見ない!!」
「はい…」
クーロさん、なんでそんなの分かるの…?
エスパーですか?
「やっぱり…」
「リリスさんも、もういいから。」
「えーっ?」
「いいから…」
「はい分かりましたー…」
俺がクーロに、手の甲を捻られたのを痛がっているうちに…
クーロが、リリスさんのイタズラを諫めた。
そしてそんなリリスさんは…
いたずらっ子みたいな顔から、営業用の顔に戻って…
戻って…
「で、何の話でしたっけ…?」
ほんとこの人は…
話が、話が進まない…




