表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/83

クーロと貴族…

 俺とクーロさんは自宅へと帰ってきていた。お姉様呼びはどうしたかって?そんなの止めたよ。なんかこの人、そんなに敬う必要がない人だし、絶対っ!


 「で、なんで離れ離れになったんだ?」


 俺がそう尋ねると、クーロさんは眉にしわをよせて地面を睨みだした。


「まずは、私とその貴族の話をするよ?まず私は代々召使の家系に生まれたの。次女として。さっきあったのが長女の姉なの。そしてね、そんな家に生まれた私は小さい頃から、聞いた話では5歳になる前から見習いとして働いていたらしいんだよ。」


 へー、召使の家系か。珍しい。さすが異世界。日本では聞いたことも見たこともないな。いや、もしかしたらあったのかもしれないな。俺が知らないだけで。


 「すごいな。5歳くらいから働くって。」


 「そんなこともあるよー。えっへん。」


 クーロが鼻を高くして、無い胸が少しだけ大きく見えた。


 ほんとないよなー。


 ッ!!!


 クーロが睨んできた。


 「つ、続けて…。」


 「はぁ。でね、私が働いていた貴族、その名前をカーイソウ男爵。そいつこそが私と家族をバラバラにした張本人なんだよ。」


 「なるほど…。」


 「許せない、本当に許せない…。」


 クーロさんは鋭い目つきをよりするどく、そして眉間をゆがめていた。


 「何があったの?」


 「何が?アイツが私を追い出したんだよ。屋敷からっ。だから私は家族とバラバラに、そして行く当ても頼る当てもなかったから、もう冒険者になるしかなかったんだよ。アイツのせいでっ!」


 クーロの言葉一つ一つが重い。


 「ひどいやつだな。」


 「だよねっ!?見た目はデブでハゲで、加齢臭でくさいんだよっ?しかもそこに香水かけまくるから、もう臭くて臭くて。自分の臭さをちゃんと把握しといてよって感じなんだよっ!」


 お姉さんはなかなかにヒートアップしてる。


 う、うん…


 「そうなんだ…。」


 「そうなんだよ。それにすごく細かいんだよ。人が少し手を止めてたくらいで、後からネチネチネチネチ。鬱陶しいんだよ。いいじゃん、少しくらい手を止めても。いいじゃん、少し休んだって。いいじゃん、少しくらい目の保養したってっ!!!」


 ん?


 保養…?


 「あ~、本当に可愛かったなぁ。カルネ君。目はぱっちり、きれいな金髪で、少しだけ長い髪、そして、それでちょっとだけ隠れる目元…。あっ、カルネ君ていうのはね、あのゴミの次男なんだよ。今年で7歳になるんだけどね、ほんと、すっごく可愛いんだよ。あのゴミから生まれたなんてありえないくらい。少し前までは、私のことお姉ちゃんって可愛い声で呼んでトトトって走ってきてたの。もうすっごく可愛い。下から見上げられたときのね、いつもちょっとだけ髪で隠れてる目元がすっごくたまらないの。近くで見ると、細くて優しい髪の毛が透き通るように透けて目元がばっちりと見えるの。ぱっちりとした赤い目がね。なんでなのかな、奥まで"ずぎゅーん"と果てしなく見通せるくらいに目が澄んでるんだよ。もう宝石。きっと、ルビーの光にも負けないよ。というか、勝ってるに違いないよ。でもね、私が辞めさせられるくらいには、私を少し避けてたみたいなの。可愛いよね?あれきっと照れ隠しだよ。きっと私のことが大好き過ぎて恥ずかしかったんだよ。そうに違いないよ。そのときは7歳なのにもう好き避けかって、成長の嬉しさもあったけど、やっぱり寂しさの方が強かったな。でも目が合うとすぐに、目を逸らして逃げるんだよ?あ~~っ、もうどんだけ私のこと好きなんだよって感じだよ。ほんとに。それにね、私が目の前に立つと、顔が赤いを通り越して真っ白になるんだよ。あれだよね。火って、熱すぎると白くなるからそれだよね。もうどんだけ私のこと好きなんだよっていう。あ~~~っ、思い出しただけで、なんかこうね、体の奥がこう疼くんだよ。こう、身体の奥のほうがね、きゅんきゅんと。ほんとやばいよ。ほんとに。うぅ…、あ〜〜〜〜〜っ!!!あ〜〜〜〜〜〜っ!!!ハァハァ。」


 なんかクーロが、頬を真っ赤に赤らめて、自分の股のあたりを手で抑え始めたんだけど。しかも手だけじゃなくて、身体全体がぷるぷると震えてるし…。


 しかも、なんか天井のあたりをを切なそうに見つめてるし。


 切ない目で顔は真っ赤、息は絶え絶え。かなり、扇情的だ。


 なのに、なのに、こんなエッツなシチュなのに、俺の体がすっごく震えてるんだけど。


 もうほんと、目の前の人が怖いよ。


 ほんとに…

 

 「でね、分かっちゃたよ。私もきっとカルネ君のことが大好きなんだって。でもさ、なのにさ、あのゴミは私とカルネ君とを突き放したんだよ。ありえなくない?普通は、しょうがないから同じ部屋にするとかだよね。好きあってるんだから。あっでも、それだと間違いが起きた時に困るのか。でも、それでも問題ないか。だって、私たちは愛し合ってるんだから。子供ができてもいいよね?きっと私たちに似て可愛いよ。絶対にそう。だからやっぱり、あのゴミは許せないよ。私とカルネ君の大事な絆を、未来を断ち切ったんだから。許せない、絶対に許せない。だから私は決めたんだ。私が絶対に、この世界を変えるって。」


 さっきまで気持ち悪い表情をしてたクーロは、今は人を射殺すような目をしてる。


 うん。拾ってもらう人間違えたね、俺。なんでこんなに、会う人会う人外れなんだろうね。ほんとに…


 あははは…


 「どう?ちゃんとわかってくれた?」


 何をかな?


「あははは…」


「もー、ちゃんと聞いてよね。」


 う…


 もー、嫌。


 でもさ、俺の選択肢って…


 一つ目、諦めてこの人と住む。


 二つ目、飢え死に。


 三つ目、新しい人を探す。


 はは…、終わってるわ


 嫌だよ。誰か助けてよ。てか、助けろよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ